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ブルースター
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しおりを挟む「紡が俺を守りたいって思うように、俺だって紡のことを守りたい」
「…………」
「本当の自分が分からなくなって、みんなに求められる『東雲律』を演じていた俺が、忘れていた感情を取り戻せたのは、紡、君のおかげだから」
「……っ」
「たくさん幸せをもらってる。紡が隣にいてくれたら、俺が不幸になることはないよ」
律の言葉ひとつひとつが心に沁みる。
優しい涙がじんわりと滲んでくる。
それを指先で拭って、律はこつんと額を合わせてきた。
「紡を傷つけた、そんな最低な奴のことなんてゴミ箱に捨てちゃえばいい。紡は俺のことだけ考えててよ」
「……うん」
「一緒に幸せになろう」
それは告白というよりもプロポーズ。
甘いキャラメルを溶かしたような大好きな声。国宝に指定すべきほどの美貌。富・名声・力、この世の全てを手に入れたひとが僕だけをその瞳に映している。
長い間、僕を苦しめ続けた呪いは神さまのキスでとける。
何度も何度も遠ざけて、自分勝手に傷ついた。
そんなめんどくさい僕を何があっても好きだと言ってくれる最愛のひと。
腹は括った。僕はもう逃げない。
この愛から目を逸らさない。
「……律だけをずっと、愛してる」
恥ずかしくて、思ったよりも小さな声になってしまった一世一代の告白。それを聞き逃さなかった律は、くしゃりと顔を歪めた。
あ、と思ったときには律の目から宝石みたいにキラキラとした涙がひと粒こぼれ落ちていた。
そんな彼が愛おしくてたまらなくて、つられて泣いてしまう。泣きながら、今までにない幸せを感じて二人で笑った。
「律も泣くんだね」
「紡のせいでしょ」
「うん、ごめん」
「謝ったらその度にキスするから」
「え」
デリカシーのない発言さえも笑って許してくれる。そんな心の広い律に僕は甘えてばかりだ。
これまでできなかった分を補うみたいに、律は飽きることなく何度もキスを落とした。
唇だけでなく、頬や首筋、耳、指先……体中の至るところにマーキングされているみたいで恥ずかしくて堪らなかったけれど、その愛が嬉しかった。
好きな人に好きだと言える喜びを噛み締めて、僕らは狭いシングルベッドにぎゅうぎゅう詰めになって夜を過ごした。広いベッドもいいけれど、肌が触れ合うこの場所も悪くないと思う。
それは、今まで生きてきた中で一番幸福な夜だった。
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