上 下
30 / 55
夢現

しおりを挟む
 
 僕はただ、息つく暇もないぐらいに次から次へと与えられる快楽を享受するだけの生きものに成り下がってしまったみたい。

 僕の入口を翠の舌が埋め尽くしてる。奥へ奥へと誘おうとする中の動きに逆らわず、翠はじっくりと進んでいく。舌先で柔壁を押されると、指とは違った感覚に頭がおかしくなりそう。


 「ああっ、……も、やだッ、」
 「陽?」


 何度目の絶頂を迎えたか、分からない。自分ばかり気持ちよくなっているのが翠に申し訳ない。すっかりキャパオーバーしている僕の涙ながらの必死の訴えにようやく翠は唇を離した。


 「ごめん、やりすぎたね」
 「ッ、……ばか」
 「そうだね、陽のことになるとバカになっちゃうみたい」


 ぽそりと呟いた言葉に怒るわけでもなく、翠は蕩けた笑顔でそれを認める。宥めるように頭を撫でられたら、どんなことをされても許す以外の選択肢はなさそうだ。

 息を整えていれば、カチャカチャとベルトを外す音がして、いよいよだと期待に震える。もう、ずっと欲しかったんだ。早く、一思いに……。


 「んッ、」


 ぴとと翠の熱い雄芯が当てられて、馴染ませるように入口を擦られる。ひくつく後孔の中からはどろりと蜜が溢れ出した。


 「……挿入れるよ」
 「んぁッ、」


 あんなにたくさん慣らされたというのに、それを上回るほど翠のモノは大きくて、少しの痛みを伴ってゆっくりと中を進んでいく。


 「……やば」
 「もう、……挿入った?」


 やがて、動きを止めた翠にそう問いかければ、奥歯を噛み締めて必死に耐えていた翠が無理に口角を上げる。


 「……まだ、半分」
 「……ッ、うそ」
 「見てごらん」


 促されるがまま、視線を落とす。ずっぽりと僕の中に収まっているのは、確かにまだ半分だけ。長大な雄芯が自分にちゃんと挿入っているのを目で確認したら、実感が更に湧いてきて、きゅと中を締め付けた。その瞬間、翠が息を飲む。
 

 「ッ、ごめん」
 「ンン、……あぁッ」


 余裕のない表情をした翠が謝罪の言葉を残して、僕の足を掴んでベッドに押し付ける。次の瞬間、翠が一気に僕の身体を貫いた。

 ぶわりと広がる、翠の香り。
 目の前に火花が散ったかのような、止まらない絶頂にびくびくと震えが止まらない。

 奥の奥まで翠で満たされている。ずっとずっと、待ち望んでいた。ぎゅうと締め付けるそこは、喜んで歓迎している。再び視線を送れば、どくどくと脈打つ熱いものが自分の中に収まっているのを改めて確認できた。
 
 ――翠がここにいるんだ。
 ひとつになれたことが嬉しくて、腹を撫でる。初めてが翠でよかった。そう、心から思う。


 「んッ、あっ、」
 「ッ、」
 「……すいッ」


 最奥を突かれる度、今までに感じたことのないほどの快感に襲われる。広い背中に爪を立てながら必死に名前を呼べば、僕の頬を翠が撫でた。

 大きくて、優しくて、少し骨張った男らしい手。この手に触れられるのが好きだ。思わず擦り寄れば、慈愛に満ちた表情の翠が口付けを落とす。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版)

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

好きで好きで苦しいので、出ていこうと思います

ooo
BL
君に愛されたくて苦しかった。目が合うと、そっぽを向かれて辛かった。 結婚した2人がすれ違う話。

嘘の日の言葉を信じてはいけない

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
嘘の日--それは一年に一度だけユイさんに会える日。ユイさんは毎年僕を選んでくれるけど、毎回首筋を噛んでもらえずに施設に返される。それでも去り際に彼が「来年も選ぶから」と言ってくれるからその言葉を信じてまた一年待ち続ける。待ったところで選ばれる保証はどこにもない。オメガは相手を選べない。アルファに選んでもらうしかない。今年もモニター越しにユイさんの姿を見つけ、選んで欲しい気持ちでアピールをするけれど……。

王と正妃~アルファの夫に恋がしてみたいと言われたので、初恋をやり直してみることにした~

仁茂田もに
BL
「恋がしてみたいんだが」 アルファの夫から突然そう告げられたオメガのアレクシスはただひたすら困惑していた。 政略結婚して三十年近く――夫夫として関係を持って二十年以上が経つ。 その間、自分たちは国王と正妃として正しく義務を果たしてきた。 しかし、そこに必要以上の感情は含まれなかったはずだ。 何も期待せず、ただ妃としての役割を全うしようと思っていたアレクシスだったが、国王エドワードはその発言以来急激に距離を詰めてきて――。 一度、決定的にすれ違ってしまったふたりが二十年以上経って初恋をやり直そうとする話です。 昔若気の至りでやらかした王様×王様の昔のやらかしを別に怒ってない正妃(男)

【BL】声にできない恋

のらねことすていぬ
BL
<年上アルファ×オメガ> オメガの浅葱(あさぎ)は、アルファである樋沼(ひぬま)の番で共に暮らしている。だけどそれは決して彼に愛されているからではなくて、彼の前の恋人を忘れるために番ったのだ。だけど浅葱は樋沼を好きになってしまっていて……。不器用な両片想いのお話。

処理中です...