トップアイドルα様は平凡βを運命にする

新羽梅衣

文字の大きさ
上 下
29 / 72
夢現

しおりを挟む
 「……あァッ、そ、こ……」
 「うん、ここだね」
 「ア、だめ……、ッ、また、……ふぁっ、」
 「陽、気持ちいいって言ってごらん」
 「ッん……、きもち、いいッ」


 的確に感じる場所を探し当てた翠は、ぐっぐっと優しい力を込めてそこばかりを苛めてくる。気づかないうちに指は二本に増やされていた。バラバラに動くのも、的確に一点を狙われるのも、どちらも気持ちよくておかしくなりそう。

 行き過ぎた快楽は涙に変わるらしい。目元に唇を落とされながら、涙に濡れた声で言われたことをそのまま口にすれば、「これが気持ちいいということだ」と初心な身体は教えられた通りにインプットしていく。

 一際強く押されて、びくりと淫らに大きく跳ねた身体は、上手に快感を逃す方法を知らなくて、僕の雄芯はいとも簡単にとろとろと白濁を吐き出した。ずっと絶頂が続いているような感覚。身体はもう力が入らない。

 ……指じゃ、足りない。
 もっと、もっと欲しい。翠が、欲しい。
 いっぱい中を突いて、僕で気持ちよくなってほしい。
 翠の子種を僕だけに注いでほしい。
 
 そして、僕の項を噛んでほしい。
 その行為に意味がなくても、番になれないなんて分かりきっていても、翠の所有の証を刻んでほしかった。


 「すい、」
 「ん?」
 「……もう、いいから」


 これ以上慣らさなくたって大丈夫なことぐらい、自分でよく分かっている。指を抜かれたせいで、物足りない。そこを埋めてくれる、大きくて熱いものを求めてひくついている。

 快楽だけを求める淫乱と化した僕の頭は、正常に機能していない。力の入らない手で臀部を掴み、恥部を開く。女性器でもない穴から、どろどろと蜜が溢れているのが丸見えだ。けれど、翠に挿れてもらうことしか頭にない僕にとって、そんなのはほんの些細なことだった。


 「……いれて」
 「……ッ」


 蚊の鳴くような声で懇願する。翠と早くひとつになりたい。中が疼いて、腰を揺らす僕を、翠は燃えるような瞳で見下ろしている。翠だって興奮していることは、その瞳を見ればすぐに分かる。だけど、待ちきれない僕に与えられたのは、期待していたものとは違っていた。


 「っん、……な、んで、ッあぁ……」


 少し柔らかくて、ぬるりとした感触が蟻の門渡を襲う。肉厚な舌は余すことなくゆっくりと、僕の恥ずかしいところを這っていく。やだやだと頭を振りながら半ば責めるように疑問を投げかければ、口元を淫靡に光らせた翠が笑った。


 「陽の初めてをちゃんと全部味わわないと」
 「っ、なに……、それ」
 「もったいないでしょ」
 「ッんん……」


 喋っている余裕があると思われたのか、ぢゅと音を立てて蜜を吸われる。指よりも柔らかい舌先がぐにぐにと僕の中に入ってこようとしている。

 ぐちゅぐちゅと、絶え間なく聞こえてくる音。抑えていた指先から徐々に力が抜けていく。

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

もう遅いなんて言わせない

木葉茶々
BL
受けのことを蔑ろにしすぎて受けに出ていかれてから存在の大きさに気づき攻めが奮闘する話

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

高嶺の花宮君

しづ未
BL
幼馴染のイケメンが昔から自分に構ってくる話。

処理中です...