上 下
208 / 219
第9章 勇者RENの冒険

第205話 互角

しおりを挟む

 「何度やっても無駄ですよ! 私にそんなものは効きませんからねぇ!」

 ルシフェルはオレの毒を何度もキュアーで治し、勢いづくように攻めてきた。

『おいっ! いいのかグレン? 奴め、調子くれやがって!』

 オレの中に焦りの気持ちが生じてくる。

 これはまずいんじゃないのか? 奴が調子づいたせいで、少しづつ押されてきやがる!

『今だ! 毒を吐いてくれ!』

 迫りくるルシフェルを遠ざける為にも毒を吐くが、奴はすぐに回復するため、全く効いているようには見えない。

『ヌンッ!!!』

 次の剣戟では奴の左腕をまた叩き切った。

 だが、当然の様にすぐに回復してくる。

『えぇい! きりがないグレン! 本当にこれでいいのかッ!』

 激昂するオレと違ってグレンは冷静だった。

『安心しろ、俺の攻撃とお前の毒は必ず効いてくる。それまでの辛抱だ! 今は耐えろッ!』

「さぁ、またしても仕切り直しのよぅな状態になっています! 果たして、勝負はどう動いていくのでさしょうか?」

「これはもう読めないですねぇ。どちらかの集中力が先に切れればそこで試合は決まるのでしょうが……、両者共に集中力は十分ありそうですからね」

 そして、ひたすらに格闘が続き、三十分が経過する頃、ようやく試合に変化が訪れた。

 お互いに切りあったのは胴の皮一枚。だが、ルシフェルはそれを回復せずにまた襲いかかってきたのだ。

『今だ! 毒を吐けッ!』

 グレン言うとおりにルシフェルに毒を浴びせる。奴は当然の様にキュアーで治すのだが……、

『む? ヒールは使わないのか? どうしたと言うのだ?』

 戸惑うオレに対し、グレンはさらに気合を入れて体を動かしていく。

『ここだッ! ニュート! ここで一気に我々が勝つぞ!』

『なんだと?』

 まるで勝利など見えてこないが、グレンはもう勝ったつもりなのか?

 グレンの指示通り、毒を再度吐き出す。すると、ルシフェルは明らかに眉を寄せて、嫌な顔をしたのだ。

『効いている……のか?』

『あぁ、ニュートの再生に比べ、奴の回復は魔力を大量に消費する。何度も繰り返し回復していれば、我らより早く魔力切れを起こしても不思議ではなかろう?』

 グレンはあくまでも冷静だった。

『なるほと、だが……まだ終わりそうにはないようだぞ?』

『むっ?』

 ルシフェルは手に持っていた剣をその場に落としたのだ。

 カラン……、と音をたて、ルシフェルの剣は今、舞台に転がっている。

 奴は空手になった。だが、オレの肌が泡立ち、無意識の警戒心が呼び起こされたのだ。

『この殺気……、さらにヤバい攻撃が来るぞっ!』

『前の試合で見せた、あの魔法の剣か?!』

 ルシフェルは空手のまま、突っ込んできた。そして手を上方から振り下ろした時、その手には光り輝く剣が握られていた。

『ぬぅん!』

 グレンは、冷静にその剣を受け止めた。だが、ルシフェルの左手にはさらにもう一本の輝く剣が現れたのだ。

 下からの振り上げに対応が間に合わず、胸が切り裂かれる。

「ぐわあああああっっっ!!!」

「な、なんとっ! ここでニュートが大出血だ~~~!」

「ルシフェル先輩は両手にあの光の剣を出したんですね! さすがのニュートもいきなりのスタイルの変化についていけませんてしたね!」



 くっ……思ったより傷が深いな……。まぁ、傷はなんとかなる。問題はあの剣だ……。

『……ニュートよ……』

『あぁ、あの剣……、どうする?』

『俺は自らの体を分離し、ニ刀に分かれる事ができる。ただ、今よりも魔力が別れてしまうため、体のコントロールが出来なくなる。それでもいけそうか?』

『クックック……。誰に物を言っている。俺は元々、二刀流だぜ? 造作もないことよ』

『よし、今の冷静なお前ならば俺を使いこなすことも出来よう! 受け取れぃ! 我が分身を!』

 グレンの刀身く光に包まれた。

 舞台の誰もが目を開けられないほどの強烈な光が発せられ、そして、気がつけばオレの左手には少し短い長さの刀が握られていた。

『ほぅ! これが分身。こちらも相当な業物ではないか!』

『当然よ! すまんが体のコントロールを任せる。オレは、力を使いすぎたのでな……』

『あぁ、少しばかり待っていてくれ。すぐに特上の血を吸わせてやるからよぉ!』

「ニ、ニュートの剣が……二つに割れました~~~ッ! 一体どうなっているんでしょう?!」

「大きい剣の魔力が大幅に減っています! 恐らくは魔力を分けて分裂させたのでしょうが……、この試合も予想外のことが起こり過ぎて解説するのが難しいですね!」

「魔力を分けたんですか! そんな事聞いたこともありませんッ! ただ、舞台ではそんなあり得ないことが現実に起きていますッ!!!」



「そうですか……、かなりやるとは思っていましたが……、まさかここまでやるとは思いませんでしたよ! 正直、嫌になりました」

 ルシフェルは肩を震わせながら呟いた。

「はんッ! お前なんかに認められたって嬉しくねぇんだよ! いい加減にトドメを刺してやるぜ……」

 オレはニ刀に別れたグレンを構え、ルシフェルと対峙するのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

人類最強は農家だ。異世界へ行って嫁さんを見つけよう。

久遠 れんり
ファンタジー
気がつけば10万ポイント。ありがとうございます。 ゴブリン?そんなもの草と一緒に刈っちまえ。 世の中では、ダンジョンができたと騒いでいる。 見つけたら警察に通報? やってもいいなら、草刈りついでだ。 狩っておくよ。 そして、ダンジョンの奥へと潜り異世界へ。 強力無比な力をもつ、俺たちを見て村人は望む。 魔王を倒してください? そんな事、知らん。 俺は、いや俺達は嫁さんを見つける。それが至上の目的だ。 そう。この物語は、何の因果か繋がった異世界で、嫁さんをゲットする物語。

4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~

TOYA
ファンタジー
~完結済み~ 「この世界のルールはとても残酷だ。10歳の洗礼の試練は避ける事が出来ないんだ」 この世界で大人になるには、10歳で必ず発生する洗礼の試練で生き残らなければならない。 その試練はこの世界の最下層、魔物の巣窟にたった一人で放り出される残酷な内容だった。 生存率は1%未満。大勢の子供たちは成す術も無く魔物に食い殺されて行く中、 生き延び、帰還する為の魔法を覚えなければならない。 だが……魔法には帰還する為の魔法の更に先が存在した。 それに気がついた主人公、ロフルはその先の魔法を習得すべく 帰還せず魔物の巣窟に残り、奮闘する。 いずれ同じこの地獄へと落ちてくる、妹弟を救うために。 ※あらすじは第一章の内容です。 ――― 本作品は小説家になろう様 カクヨム様でも連載しております。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

処理中です...