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第9章 勇者RENの冒険

第198話 ジークの過去

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 幾度もの打ち合いを経て、私はついに魔王を追い詰めた。

「む……、もはやこれまでか……」

 俺は肩で息をしながらも剣を魔王へ向けた。

「魔王よ……、言い残すことはあるか?」

「フッフッフ……、これから貴様には神の呪いが降りかかるであろう。貴様を待っているのは地獄。先に待っているぞ? 勇者よ!」

 聖剣ヴォルグスネーガは魔王の胸を貫き、永きに渡った魔物族との戦争に終止符が打たれた。

 だが、城に凱旋し、国の王となった俺を待っていたのは……。



「イーリアよ……」

 俺の目の前に横たわっているのは最愛の妻。苦しそうに咳き込んだ後、今はゆっくりと休んでいる所だった。

「陛下……、あまり無理なさらないで下さい」

 後ろから声をかけてきたのは、俺の幼い頃からの付き人である、レインだ。

 俺はレインの顔色をチラリと見た。血の色が引いており、真っ青になっているのを見て視線をつい伏せてしまう。

「レインもどうか休んでくれ。顔色が悪くなっている」

「そういう訳には参りません。今は謎の病いが蔓延する国難の時。私がのうのうと休んでいる訳には……」

 困ったものだ……、レインはなかなか休もうとしない。

 だが、今は緊急時だ。この城で働く者たちは次々と謎の病に侵され、倒れてしまつているのだ。

 その病は日に日に人々をやつれさせ、やがて、枯れ果てるように細くなり死んでいく。

 俺は原因を探るべく手を尽くしているが、未だに解決策はない。

「ウウッ……!」

「イーリアツ! 大丈夫か?」

「あ、あなた……。とうやら……私はここまでのようです。私は……、私は幸せでこざいます。あなたに愛してもらえたのですから……」

「イーリア。もうしゃべるな。大丈夫だ。今に俺の部下が特効薬を持ってくるはずだ! それまで頑張るんだッ!」

 イーリアは微笑んだ。そして、すっかり細くなった手を伸ばし、俺の手を掴んだ。

 もう……これ程に力が弱くなっていたのか……。

「あなた……、ありがとう」

 イーリアはそう言い残すと、目を閉じるのだった。

「イーリア……、イーーーリアーーーツツツ!!!」

 もう、最愛の妻が目を開けることはなかった。



 それから三ヶ月。

 城に関わっていた者達は全て死に絶えた。

 そして、城下町を襲った病は留まる所を知らず、ジークの住む町を全て飲み込んで行った。



 半年後。

 床に伏せていたジークはベッドから起き上がった。

「こ……、これは……」

 身体の肉が全て腐り落ち、俺の骨が見えていたのだ。

 だが、その骨は何の違和感もなく動き出したのだ。それだけではない。俺は今までにない膨大な魔力が自らに宿っていることに気がついた。

 俺は……、アンデッドになってしまったというのか?

 ベッドから起き上がると、部屋の中央にあの聖剣ヴォルグスネーガが、宙に浮いていた。だが、何かがおかしい。ヴォルグスネーガの刀身の周りに異様なまでのオーラが集まっていたのだ。

 俺は注意深くそれを見ていった。

 これは魔力……か?

 濃密なまでの魔力が刀身に纏わり付いていたのだ。

 恐らくだが、私の体がアンデッドになったために、目の見え方が変わってしまったんだろう。

 そして、俺は視た。ヴォルグスネーガが……魔力を広い範囲から吸い集めている所を。

 窓から外を見ると、城下町全体から魔力の流れがこのヴォルグスネーガに集められていたのだ。

「そ、そんな……馬鹿なっ!!!」

 信じられない。この剣が……、人から魔力を吸い続けていたなんて……。

「ウオオオオオォォォォォォ!!!」

 俺は泣いた。心で泣いた。だが、既に人ならぬ身になっていたのだ。涙など出るはずもない。

 俺はありったけの力で剣を殴りつけるのだった。



 そして、俺がリッチとして生まれ変わり、三ヶ月が過ぎた。

 日に日に高まっていく魔力のおかげで、いまやあり得ないほどの膨大な魔力を身につけることになった。

 ヴォルグスネーガは私の力では壊すどころか、ヒビ一つすら入れることは出来なかった。

 そして、私の行くところには、何処にでも現れ、ピッタリと俺の後についてくるこの剣から逃れることは出来なかった。

 俺は有り余る魔力を用い、魔術を習得していくと、そこらじゅうにウヨウヨと徘徊している魂たちに仮の体を与える事に成功した。もちろんアンデッドの体だが……。

 そうして、俺の周りにはアンデッドの軍団が出来上がった。あのレインの魂はレベルが高かったおかげか、デュラハンという上級のアンデッドになった。

 私は神への復讐を誓い、神の国へ行くチャンスを待った。何せ、体がアンデッドなのだ。神聖な神の国アースガルドに張ってある結界を破ることが出来なかったのだ。

 そうして待つこと数百年。自身も配下も相当に強まった。もう神共を十分倒すだけの力は備わったはず。

 そう思っていた所、ワシの元に神の使いが現れた。それこそが、このトーナメントなのであった。
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