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第9章 勇者RENの冒険

第178話 イヴリスの忠誠

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「さぁ、ついに一回戦が全て終了し、八名の戦士が残りました……。昨日の休養日を経て、本日は二回戦の二試合を予定しております。」

「一回戦から激闘の連続でしたね。私の予想をはるかに上回る能力を見せる戦士が多く、非常に見応えのある試合ばかりでした」

「さぁ、本日、この舞台で勝ち残るのは誰なのか? 本日の第一試合は獣人族代表 REN VS 阿修羅の国代表 ズール。そして、第二試合は死の国代表 ジーク VS メタルドールの国代表 ミリィ となっております。解説は引き続き、私、リサと天使族一の格闘評論家でもありますローファンさんに来ていただいております。ローファンさん、どうご覧になりますか?」

「紹介に預かりました、ローファンです。本日もどうぞ、よろしくお願いします。さて、一回戦ですが、圧倒的な強さを見せたRENとこれまた圧倒的な武力で勝ち上がったズールの激突ですね。私の見立てではスピードに勝るRENとパワーのズールと言っても良いのではないでしょうか?」

「つまり、REN対ズールはスピード対パワーということですね?」

「はい、一回戦で見せたRENのスピードは恐らく、今大会一のものがあると思います。私もじっくりと昨日の休養日に試合を見直したのですが、RENのスピードは正直、スロー再生でも見えない箇所がありました。これほどのスピードを誇ったのは彼一人ですから……、次点でグレンも相当なスピードで動いていましたが、RENのほうが一枚上手のように思います。

 それに対し、ズールですが、あの太い腕が六本もあるわけでして、巨体かつ強大な力を持っていたブッピーの攻撃をまともに受け止めていましたからね。手数でRENが勝っていたとしても、一発が入ればわからない展開になるのではないか? と考えております」

「なるほど……、スピードで勝るRENにズールの一撃が当たるのか? ここが見どころと言えそうですね」

「はい、期待して試合を見ましょう!」

「さて……、そろそろ舞台の準備が整いそうです。二回戦第一試合、間もなく始まります!」



   ***



(イヴリス視点)

 今、目の前で何が起こっていたのか。

 私は全てを知っているわけではない。だが、確実に言えるのは大神に匹敵する存在が生まれたということ。

 圧倒的なパワー、圧倒的な魔力、圧倒的なスピード。そのどれをとっても超一流の戦士が目の前に誕生したのだ。

 私は彼の前に自然とひざまずいた。

「いったいどうした? イヴリス」

 彼は私の動きに驚いた様子で口を開いた。

「アナタにお仕えしたく思います。つきましては……」

 彼の手を取り、契約の術式を発動する。

「こ……、これは?」

 彼の手に浮かぶのは赤い線。それが幾何学的な模様を描き、悪魔との契約の証を形造った。

「……? お前を始末しようとした神は消滅したんだぞ? お前を縛る者はもう誰もいない。好きに生きればいいんじゃないのか?」

 彼は眉を寄せてそんなことを言ってきた。

「はい、ですから好きにさせていただきました。その手に浮かんだ”印”こそ、私とご主人さまの繋がりの証。いつでもお呼びいただければすぐに駆けつけます。何でもおっしゃってください。私がッ! 誠心誠意ッ! お仕えさせていただきます!」

「そ、そうか……」

 彼は一歩下がりながらそう答えた。

 私は気持ちが高揚するのを抑えきれない。今も溢れ出す彼の膨大な魔力。それはかつて見てきた誰よりも濃密なのだ。私の目に狂いはない。彼は、彼こそは私がお仕えするべき存在なのだ。

「私はご主人さまにお仕えするためにこのトーナメントに参加したのでしょう。運命を感じているのです。どうか、お側に控える事をお許しください」

 また改めて深く礼をした。

「うーむ、ま、好きにするがいい。ただ……、俺はこのトーナメントが終わるまでは忙しいだろう。構ってる暇などないぞ?」

「ご主人さまはお好きな事をされれば良いのです。ただ私にも出来ることがありましたら……、是非ともッ! ご用命お待ちしておりますッ!」

 いけない、また自分が抑えきれない。ご主人さまがまた一歩足を引いてしまった。

「少し落ち着こうか……、俺は試合が始まるころだ。取り敢えず待っててくれないか?」

「ふふっ、それでしたら提案がございます。今の私はご主人さまにお仕えする第一の眷属となりました。それゆえ、ご主人さまの影に侵入することが出来ます。いつでもお側に控えさせていただきますねッ!」

「いや、しかし、試合となると危険では?」

「まさか! ご主人さまのお側ほど安全な場所はないかと思いますので大丈夫です!」

「そ、そうか……。わかった。そうしてくれ」

 あぁ! 私のご主人さま! 何たる寛大な御心。その優しさで私の心は幸せに満ち足りていくのを感じます。

 私はご主人さまの影に飛び込んだ。これで何時でもご主人さまと一緒。誰にも邪魔されない、私とご主人さまだけの秘密の場所。何時でもご主人さまと会話できるなんて……。

 私は幸せいっぱいに感傷に浸っていると、いつの間にか、試合が始まろうとしているのだった。

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