レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

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第9章 勇者RENの冒険

第173話 一回戦第八試合 ドラゴン族代表 バハル VS 蛇人族代表 ニュート

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「一回戦最終第八試合! レディ…………、ゴーーーーー!!!!!」

 ニュートは自分の愛刀となったグレンを舌で舐め回した。

『頼りにしてるぜ? 相棒』

 ニュートは刀を握る力を強めた。

『任せておけ。お主の力と我が技が合わされば、この世に切れぬものなし。暴れるがいい』

 ニュートは駆け出した。手に持つ武器に信頼を寄せ、バハルとの距離を一瞬にして詰め切る。

「先に仕掛けたのはニュートだーーーッ! その刀の力、どれほどのものか?」

 バハルはニュートの薙ぎ払う一撃を伸ばした爪で受け止める。

「ぬうッ? こ、これは……」

 バハルの目が驚きに見開いた。

 割れたのはバハルの爪。ニュートの剣は本体にこそ当たりはしなかった。だが、その一撃はバハルを驚愕させるには充分だった。次々に繰り出されるニュートの連撃をバハルは受けるのがやっとだったのだ。そして、バハルの爪は全て叩き折られる。

「舐めてもらっては困る。キサマを倒すためにこの武器を用意してきたのだ。本気で来るがいい」

 尚も襲いかかろうとするニュートに対し、バハルは大きくバックステップで距離をとった。

 そして眉をヒクつかせながらニュートを睨む。

「おのれ……、下等種の分際で上位種の竜を傷つけるとは、万死に値する!」

 バハルが激昂すると白い髪が逆立ち魔力が体から溢れ出した。

「こ、これはッ! バハルの魔力が溢れ出ておりますッ!」

「いけませんッ! バハルを怒らせてしまったようです。これは危険ですよッ! いつブレスが放たれてもおかしくありませんよッ!」



 ニュートはゆっくりと口角を上げた。

『作戦通りだ。相棒の力、期待してるぜ?』

 ニュートはグレンに応じるように魔力を開放し始める。その魔力を吸い込んだグレンは黒い魔力を纏っていく。ニュートの黒い魔力は刀に蛇のようにまとわりつき、広がっていった。

『任せておくがいい。魔力を得た今ならばたとえドラゴンの鱗だろうと切り裂いてみせる』

 グレンからもニュートに魔力が流れ出し、お互いの魔力が循環するように巡っていく。

 これだ……、俺の求めていた武器はここにあった。うれしいぞ、グレン。オマエこそゴッドキラーだ。

 グレンの刃が黒く光り出すのだった。



「力の差を思い知るがいい、下等種よ!」

 バハルは右手のひらを俺に向かってかざした。手に前に巨大な魔法陣が描かれる。来るのはドラゴン最大の攻撃、ブレスだろう。

 今までの俺であったならこのブレスにどう対処しても半死はまぬがれない。生命力が強く、再生能力に関しては随一の能力を我ら蛇人族は持っている。魔力を展開し、徹底的に防御すれば命だけは助かるだろう。

 だが、今の俺は違う。グレンという相棒を得た。そのグレンも神の血を吸い、格段のパワーアップを果たしているのだ。

 この刀があれば恐れるものなど何もない。

 やがてバハルの手が光りだす。光熱が手に集まって、周囲の空気が陽炎のように揺らめく。そして、その時はきた。

 発射されたのは超高熱源のマグマのような炎。神竜と名乗るだけあり、その炎の色は青紫色に黒が交じる色をしていた。舞台の地面があっというまに蒸発し、姿を消す。

 恐ろしい地獄の炎が迫っていても俺の心は落ち着いていた。グレンを上段に構え、それをブレスに向かって振り下ろす。

『グレンよ、今こそオマエの力を見せてみろッ!』

 魔力は充実している。グレンに充分な魔力を送り込む必要もなかった。俺はただブレスに向かって剣を振り下ろす。

「あああーーーーーッッッ!!! バハルが早くもブレスを放ちましたーーーーー! 凄まじい閃光ッ! 凄まじい熱感ッ! 凄まじい暴風ッ! これが神の怒りかあああぁぁぁッッッ!!!」

「リサさんっ! ニュートが! 剣を構えてますッ! ブレスと真っ向から勝負するようですよ!」

「あああっっっ!!! ニュートが防御結界も貼らず……、一体どうするつもりなんだッッッ!!! 今、ブレスが……放たれましたッ!」

 ズゴゴゴゴゴオオオオオッッッッッ!!!!!

「圧倒的ッッッ!!! 圧倒的火力ですッ! 舞台が炎に包まれておりますッッッ!!!!」

 舞台を覆い尽くすほどの炎。だが、俺の前でその炎は断ち切られるように分かれていく。

 神の血によって蘇ったグレンはその充溢した魔力を展開し、ブレスと真っ向からぶつかりあった。

 周りの温度が高温になっている。俺の魔力の届く範囲だけは無事だが……、それ以外は瞬時に溶かされてしまっている。

 そして、息の長いブレス。

「まだか……、くっ……、これほど長いとは……」

 体中が熱くなり、大玉の汗が流れ落ちる。

 だが、不思議と絶望感などはなかった。むしろ俺は安心していたのだ。

 ブレスを切り裂いている最中にも関わらず、グレンへの信頼はより高まり、俺を高揚させた。

 バハルを打倒するのも、もう夢ではない。

 下等種などと蔑まされ、ドラゴンに媚びへつらう時代は今日、終わるのだ。

 これからは数多のドラゴン達を蛇人族が統治する時代が来たのだ。

 気づけばブレスは終わっていた。そして目の前には驚愕の表情を浮かべてこちらを見るバハルの姿があるのだった。


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