上 下
171 / 219
第9章 勇者RENの冒険

第169話 一回戦第七試合 巨人族代表 ギガース VS アヤカシ代表 グレン

しおりを挟む


「一回戦第七試合が始まりますッッッ!!! 東の方角! 巨人族代表ッ! ギガース!!!」

 まず現れたのは巨大な足だった。観客である天使たちの何十倍もある大きな足。そして、太い巨木のような脚部。そして見上げると初めて見える上半身。腰に皮を巻き付け、右手には棍棒、その先端から鎖が伸びており、左手にもつ鉄球に繋がっている。頭部も長大にして巨大。大きな下顎からは牙が二本、上唇の上に生えている。

「さぁ花道に巨人が入ってきましたッ! 今大会で最も身長が大きい戦士となっておりますっ! 一歩あるくごとに会場に重低音が響き、揺れが発生していますッ!」

「ギガースですが、身長は10メル以上、体重も1トン以上と破格の大きさとなっています! 今大会の舞台は彼が戦いやすいよう、80メル四方の大きさに設定されました。が、彼が舞台に立つと狭い印象を受けますね!」

「おっと、ギガースの身長に合わせて舞台の大きさが決まっていたのですね? しかし、彼も大きいですが、その手に持ったモーニングスターもまた破格の大きさですねぇ!」

「あの武器も伝説の武器でして、なんでも巨人族の神がその昔授けたものだそうです。そして、代々の巨人族長に受け継がれ、そして今代の族長、ギガースに手渡された由緒ある武器ということです。しかも凄いのがこれまでドラゴン族と戦い続けてきているのにあのモーニングスターは一度も壊れたことがないそうですよ!」

「そ、そんなにすごい武器だったんですね! ただの鉄球ではないということでした。さて、ギガースの入場の次は……」



「西の方角ッ! アヤカシの国代表! グレンっ!!!」

 西の方角から入ってきたモノは全身黒ずくめ。その姿は陽炎のように揺らめき、実態がわからない。ただ、手に持っている長大かつ黒身の刀だけがはっきりと見ることが出来る。

「さぁ、対するはアヤカシの国代表、グレン! こちらの戦士ですが何か新しい情報は入ってきてますでしょうか? ローファンさん?」

「えぇ、東国の神に直接伺って参りました! 何でも東国において、このトーナメントに出場するために壮絶な戦いが繰り広げられたそうです。そこで並み居る強豪たちを全て切り捨て、勝ち上がったアヤカシこそグレンだったとのことですね。あの刀と呼ばれる東国独自の武器でどこまで戦えるのか、楽しみですよ!」

「そうですね、相手は優勝候補にも名を連ねるギガース。激闘になることは間違いありません! さぁ、両者、入場しましたッ!」

「それにしても両者の大きさの違いは凄いことになってますね。方や、2メル弱、方や10メル以上ですからね。しかもギガースの武器は遠距離、近距離を問わず攻撃できるモーニングスターですから……、グレンがいかに東国一の剣豪であってもキツイ勝負になるのではないでしょうか」



「では、一回戦第七試合、巨人族代表! ギガース! VS アヤカシ代表! グレン! レディ…………、ゴーーーーーッッッ!!!」

 舞台内の結界が消えた直後、グレンの姿がフッと消えた。

 ギガースが素早く棍棒を操り、鎖をムチのように自分の右へ振ると、そこで大きな衝撃が走る。

 ギイイイィィィィィンッッッ!!!

 そこにはグレンの黒い刀とギガースの鎖がぶつかり合っていた。

「おっと、仕掛けたのはグレン。姿を消すようにギガースの右方向から迫ったようですが、ギガースも見えていたようですね。鎖を操り、進行を阻止しました!」

「ギガースの鎖を見てください! まるで生きているかのように動き、グレンの刀とぶつかり合っています!」

 ギガースは腕を軽く操作している。それだけで鎖はまるで生き物のようにグレンに襲いかかっていった。グレンも応酬し、鎖と刀が何度もぶつかり合う。

 激しく火花が散りながらもグレンは素早いステップで常に移動し、鎖を躱しつつ、ギガースへ近づこうとする。

 ギガースの鎖はグレンを近づけさせまいと、時に蛇のように近づき、時にムチのようにしなり、グレンの足を止める。

「グレンの体が消えるように移動しています! 私の目では追いきれませんが、ギガースには見えているようですね」

「えぇ、私の目にもグレンの動きはまるで見えません! ですが、ギガースはグレンの移動する場所にしっかりと鎖で攻撃をしかけていますから見えているのは間違いないでしょう!」

「しかし、あの鎖は一体……、生きているように見えるのは私だけでしょうか?」

「そうですよね。あの鎖は魔力を与えられることによって動いているそうです。手で動かしているように見えますが、あれは鎖の動きに手が連動して動いているだけで、鎖自体が動いているんですよ。もちろん魔力によって制御しているのはギガースですから動かしているのはギガースで間違いありません」

「なるほど、魔力によって鎖自体が動いているんですか! それで生きているように見えるんですね。しかし、グレンは厳しいでしょうか。先程から前に進むことが出来ないようです」

 グレンは大きく後方へジャンプし、距離をとった。

 そして刀を上段に構えると、口角を上げて笑みを浮かべる。

「距離をとったグレンですが、笑ってますね! 強敵とやり合えるのを楽しんでいるかのようです!」

「先程は瞬間的な移動で攻撃していましたが、少しやり方を変えるのでしょうね。グレンほどの剣豪ともなればやり方は色々とあるでしょうから、期待しましょう!」

 グレンは頬が引きつるほど口角を上げると、また消えるように移動した。そして、現れた先に鎖が襲いかかる。

 だが……、

「ん? あーっと、鎖がグレンを攻撃しましたが、まるで残像のようにグレンの体がまた消えてしまったッ! こ、これはーーーーーッッッ!!! 一体どういうことでしょうかッッッ!!! 私の目にはグレンの体が5体あるように見えますッッッ!!!」

 突如として出現した5体のグレン。ギガースは眉毛をピクリと動かしつつも鎖へ魔力を込めていく。そして次々と攻撃を始めるのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

人類最強は農家だ。異世界へ行って嫁さんを見つけよう。

久遠 れんり
ファンタジー
気がつけば10万ポイント。ありがとうございます。 ゴブリン?そんなもの草と一緒に刈っちまえ。 世の中では、ダンジョンができたと騒いでいる。 見つけたら警察に通報? やってもいいなら、草刈りついでだ。 狩っておくよ。 そして、ダンジョンの奥へと潜り異世界へ。 強力無比な力をもつ、俺たちを見て村人は望む。 魔王を倒してください? そんな事、知らん。 俺は、いや俺達は嫁さんを見つける。それが至上の目的だ。 そう。この物語は、何の因果か繋がった異世界で、嫁さんをゲットする物語。

4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~

TOYA
ファンタジー
~完結済み~ 「この世界のルールはとても残酷だ。10歳の洗礼の試練は避ける事が出来ないんだ」 この世界で大人になるには、10歳で必ず発生する洗礼の試練で生き残らなければならない。 その試練はこの世界の最下層、魔物の巣窟にたった一人で放り出される残酷な内容だった。 生存率は1%未満。大勢の子供たちは成す術も無く魔物に食い殺されて行く中、 生き延び、帰還する為の魔法を覚えなければならない。 だが……魔法には帰還する為の魔法の更に先が存在した。 それに気がついた主人公、ロフルはその先の魔法を習得すべく 帰還せず魔物の巣窟に残り、奮闘する。 いずれ同じこの地獄へと落ちてくる、妹弟を救うために。 ※あらすじは第一章の内容です。 ――― 本作品は小説家になろう様 カクヨム様でも連載しております。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

処理中です...