上 下
158 / 219
第9章 勇者RENの冒険

第156話 もう一つの決着

しおりを挟む


「しょ、勝負有りッッッ!!! グリーナの体が消えていきます! この第四試合、終わってみればミリィの圧勝でした!!!」

「そうですね。グリーナも弱かったわけではありません。巨大なドラゴンやまして、神獣フェンリルですからね……、我々が闘ったのならば、相当の被害が出たことは間違いないでしょう。ここはミリィの強さが圧倒的だったということだと思います」

「さて、そのミリィですが、次の対戦相手がジークですね! どう思われますか? ローファンさん!」

「んー、これは予想しづらい! ジークも神剣を使いこなすほどの剣の腕前です。恐らくですが、激しい剣の打ち合いになるでしょうね! そこで神の創り出した剣と、文明の生み出した剣のどちらが強いのか? ここが見どころとなるのは間違いないでしょう!」

「なるほど~、神か、文明か、この対決、楽しみですね! さぁ、本日はこの第四試合を持って終了となります! また明日、第一回戦第五試合でお会いしましょう! それでは!」



   ***



「一体何が起きたと言うの?」

 私は目の前の光景にただただ驚きを隠せなかった。

 横たわっているのはあの長い剣を持っていた神だった。

 彼は何事もなかったかのように剣を鞘に収めながら、神を見下ろしていた。

 時間にしてほんの数旬のことだった。私はこの戦いに既視感を覚えた。 そう、黒騎士とRENとの戦いだ。あの時は黒騎士が弱いものだとばかり思っていた。現実は違ったのだ。黒騎士が弱かったのではない。彼が強すぎたのだ。

 そして、それは今眼の前で起こった戦いも全く同一だった。あまりにも彼は強すぎたのだ。神は袈裟斬りに切りかかった。RENは神の横へ一瞬で移動すると、神へ致命的となる一撃を振り下ろした。それで終わりだった。神ですら相手にならず、たったの一合も交えることなく神を打ち倒してしまったのだ。

 私は体の奥底から震えた。あの神は、私でも倒すのは容易ではなかっただろう。MPの切れた現在の状況であれば、もはや勝利は絶望的である。

 私は一切返り血すら浴びずにいる彼の姿に美しさすら感じた。この今の私に湧き上がる気持ちは一体何なのだろう。尊敬、恋慕、崇拝、そのどれもが混じり合ったような気持ちが私の中に強く芽生えたのだ。

 それをはっきりと認識したとき、私の足は自然に動いた。そして彼の元にひざまずき、頭を垂れた。

「ん? 一体どうした?」

「REN様。どうか今までの非礼をお許しください。そしてこの命ある限り、私のすべてをあなたに捧げます」

 私は彼の手の甲を取り、くちづけをした。手の甲が光を放ち、部屋全体を包みこんだ。

「こ、これは? イヴリス、一体何をしたんだ?」

 やがて光が落ち着くと、彼の手の甲にははっきりと、ある文様が描かれていた。

「これは悪魔族との契約の証でございます」

「契約だと? 私は契約などした覚えはないが……」

 彼は困惑に眉をひそめた。

「これは私の忠誠の証でございます。あなたを縛るものは一切何もなく、あなたが私の全てを自由にできる権利でございます。どうか私の覚悟の証だと思い、受け入れて頂ければ幸いでございます」

 彼は最初、困ったような顔をしていたが、やがてを受け入れてくれたようで、ひとつ頷いてくれた。

「そんな不利な契約、悪魔が結んでいいのか?」

「構いません。契約がなければそもそも私は現界することすらできないのです。今まではそこに倒れている神と契約があったので、現界することができていましたが、それも時間切れのようですので……」

「む? それはすまなかったな。確認もせずに倒してしまって」

「問題ありません。REN様との契約があれば、私は幸せでございますから」

「まぁ、色々と確認したいことはあるが、今しばらく時間をもらえないだろうか? なんせやることが山積みでね」

「かしこまりました」

 私は少し後ろに下がり、彼の様子を伺った。

 それと彼が唱えた魔法は……、

「リザレクション!!」

 周囲は凄まじい光に包まれた。そして時間を巻き戻すかごとく、倒れていた神の傷口がみるみるうちに塞がり、神は生き返った。

「ぬぅ……、こ、これは? 私は死んだはずでは……」

 躯であった神の体が起き上がる。

「そうだ、お前は一度死んだ。だが、私が蘇らせたのだ」

「蘇らせた、だと? 神であるこの我を……。貴様……本当に人間か?」

 神は驚愕の表情を浮かべ、彼を凝視した。

 そんな神のことなどお構いなく、彼は剣を一閃し、神を切り伏せた。

 私には理解できなかった。なぜ彼はわざわざ神を蘇らせたのか? そしてなぜまた切って捨てたのか。

 そんな私の気持ちを知ってか、彼は口角を上げ口を開いた、

「どうやら、俺が何をしているのかわからないようだな」

「えぇ、これはいったい?」

 彼は親友から教えてもらったというその方法を語りだすのであった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

人類最強は農家だ。異世界へ行って嫁さんを見つけよう。

久遠 れんり
ファンタジー
気がつけば10万ポイント。ありがとうございます。 ゴブリン?そんなもの草と一緒に刈っちまえ。 世の中では、ダンジョンができたと騒いでいる。 見つけたら警察に通報? やってもいいなら、草刈りついでだ。 狩っておくよ。 そして、ダンジョンの奥へと潜り異世界へ。 強力無比な力をもつ、俺たちを見て村人は望む。 魔王を倒してください? そんな事、知らん。 俺は、いや俺達は嫁さんを見つける。それが至上の目的だ。 そう。この物語は、何の因果か繋がった異世界で、嫁さんをゲットする物語。

4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~

TOYA
ファンタジー
~完結済み~ 「この世界のルールはとても残酷だ。10歳の洗礼の試練は避ける事が出来ないんだ」 この世界で大人になるには、10歳で必ず発生する洗礼の試練で生き残らなければならない。 その試練はこの世界の最下層、魔物の巣窟にたった一人で放り出される残酷な内容だった。 生存率は1%未満。大勢の子供たちは成す術も無く魔物に食い殺されて行く中、 生き延び、帰還する為の魔法を覚えなければならない。 だが……魔法には帰還する為の魔法の更に先が存在した。 それに気がついた主人公、ロフルはその先の魔法を習得すべく 帰還せず魔物の巣窟に残り、奮闘する。 いずれ同じこの地獄へと落ちてくる、妹弟を救うために。 ※あらすじは第一章の内容です。 ――― 本作品は小説家になろう様 カクヨム様でも連載しております。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

処理中です...