レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

文字の大きさ
上 下
157 / 219
第9章 勇者RENの冒険

第155話 フェンリルとの攻防

しおりを挟む

「あああーーーっと、またしてもフェンリルの姿が一瞬で消えたーーーッッッ!!! 気がつけばもう彼の目の前だーっ!!!」

 私は剣を慌てて前に構えた。凄まじい衝撃が私の剣に伝わってくる。そして私の体はまたしても吹き飛ばされた。

「くっ!!!」

 なんとか空中で体勢を取り直し手足を地面につけて着地すると、もう、目の前にフェンリルがいるのだ。

 私はとっさに左手にも剣を握り、二刀でフェンリルの攻撃を防御した。

「フフッ、やっと本気を出してくれたということですね」

 私は溢れる喜びを抑えきれなかった。 ようやく彼女の本気の力を見ることができるのだ。抑えるのがやっとの攻撃が繰り返され、私は防戦一方となってしまう。両手でも抑えきれないほどの連撃に次ぐ連撃。

 ようやく巡り会えた強い敵に対し、私の体は歓喜に満ち溢れた。

「これならば、 もっと強い武器を使っても大丈夫そうですね」

「いつまでも、減らず口を叩いて! 私の怒りを、森の怒りを、思い知るがいい!!」

 フェンリルの目はさらに赤く燃え上がるように色が濃く変化し、頭部の毛が逆立った。

 私は素早くアイテム空間へ手を伸ばすと、短い剣の持ち手を取り出した。



「ここでミリィが取り出したのは……、剣の持ち手の部分でしょうか? 刀身がついておりません。これはどうしたことでしょう?」

「おそらく、あれは魔道具でしょう! どんな効果があるのかこれは期待できますね! 何せ、フェンリルとも五分に渡り合うミリィの武器ですから、あれが普通の魔導具であるはずがありません!」

 私は魔道具にエネルギーを込め始めた。ボゥっという音と共に刀身が姿を現す。

「こ、これは! 金色に輝く刀身です! それがまるで炎のように放射されております!」

「あれは、雷の魔法と風の魔法でしょうか。雷が防風に煽られ、吹き出すように刀を形作っています!」

「フフッ、簡単に死んでしまわないでくださいね? 期待しておりますよ? 神獣さん」

 ミリィの持つ剣の持ち手から放たれた魔法剣は雷と風の魔法の合わせ技によるもの。それが凄まじい勢いで吹き出され、今や、フェンリルの身長以上にまで長く伸びている。

「小癪な真似を」

 フェンリルはそう呟きながら、体に身体強化の魔法を使ったようだ。体中から魔力が溢れ出したのだ。体中の毛から白く光る魔力が放出し始める。

 今まででも十分なスピードで攻撃していたというのに、これ以上のスピードで攻撃すると言うのだろうか? それを考えるだけでもワクワクしてくる。

 一体どれほどのスピードとなるのか? スピードが上がるということは、そのまま攻撃の威力が跳ね上がるということだ。 もしかしたら、私でも受けきれない攻撃となるかもしれないのだ。 今にも自分がやられるかもしれない、そう思うだけで心が満ち溢れてくる。気がつけば私は口を開いていた。

「いざ、尋常に勝負ッッッ!!!」

 その瞬間、二人の姿が舞台から消えた。 そして、舞台の中央で激しい衝突が現れた。二人の戦士がぶつかり合ったことで、衝撃音が観客席にまで轟いた。耳をつんざく、金属がぶつかり合う音だ。

 ギイイイィィィン!!! キィンッ! キンッキインッ!!

 何度も繰り返し響く金属音。観客席の天使たちが耳を手で抑えていくほどの轟音。

「嬉しいわ。 あなたがこれほど戦えるなんて! 私の剣とぶつかりあえるなんて誤算ではあったけれど」

「オマエは危険すぎるッ! その力が森に及ぶ前にこの私が引導を渡してやるっ!」

 彼女の顔は恐ろしいほどまでに引きつっていた。 牙は大きく伸び、私を飲み込めるほど口を大きく開いて襲いかかってきた。

 フェンリルの牙や爪は非常に固く、魔力の放出も手伝って、私の剣と同等の威力を持ち合わせていた。

 ここまで私と打ち合えるなんて……、もしかしてさらに上まであるのかしら?

 私の中にさらなる好奇心が芽生える。ならば、私もさらに出力を上げていくのみ。

「す、凄まじい打ち合いです! 会場も大興奮の渦に飲まれたかのような歓声に包まれています! 解説がほとんど追いつかない! これほどの打ち合い、私はかつて見たことがありませんーーーッッッ!!!」

「リサさん! どうやらミリィの剣がさらに変化したようですよ!!! 見てください、あの剣の周りを! 先程の剣で行っていた超振動による攻撃も加わっていますッ!」

 フェンリルはあいも変わらず凄まじいスピードで私に爪を立ててきた。それに合わせて彼女の横に抜けながら、剣で一閃する。

 彼女がフェンリルになってから初めての手応え。

 フェンリルが振り向くと、牙が数本なくなっていた。

 グルルルルルルッッッ!!!

 喉を鳴らす音は重低音を伴い、私の服をビリビリと揺らす。だが、そんな威嚇などこれから迎えるフィナーレを思えば、私には心地よく感じるだけだった。

「さ、さらに奥の手を出してくれないかしら? さもなければ、終わるわよ?」

 私の声など聞く耳ももたない獣はすぐに襲いかかってきた。

「ごめんなさい、もうそのスピードは分析が完了して慣れてしまったの」

 フェンリルの前足二本の爪に剣を走らせる。

 彼女の顔には初めてうろたえるような表情が浮かんだ。長い毛並みから汗もしたたり落ちていく。

「あら? どうしたのかしら? もしかして……、おしまいなの?」

 フェンリルは風の魔法、トルネードを唱えつつ、さらに牙で襲いかかってきた。

 その程度……なの?

 私の心に浮かんだのは落胆。彼女の口が私に触れる前にフェンリルの顔の横に体を逃がす。それと同時に剣で顔を薙いだ。

 二人の体が交錯し、私は剣を振り終えたまま彼女の後方へ抜けた。

 ドサッッッ!!!

 地面に落ちたのはフェンリルの頭部。

 ブシュゥーーーーー!!!

 吹き上がったのはフェンリルの血。

 やがて消えゆくフェンリルの体……。そして精霊体であったグリーナの光がチリのように消え去っていくのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

神様の願いを叶えて世界最強!! ~職業無職を極めて天下無双する~

波 七海
ファンタジー
※毎週土曜日更新です。よろしくお願い致します。  アウステリア王国の平民の子、レヴィンは、12才の誕生日を迎えたその日に前世の記憶を思い出した。  自分が本当は、藤堂貴正と言う名前で24歳だったという事に……。  天界で上司に結果を出す事を求められている、自称神様に出会った貴正は、異世界に革新を起こし、より進化・深化させてほしいとお願いされる事となる。  その対価はなんと、貴正の願いを叶えてくれる事!?  初めての異世界で、足掻きながらも自分の信じる道を進もうとする貴正。  最強の職業、無職(ニート)となり、混乱する世界を駆け抜ける!!  果たして、彼を待っているものは天国か、地獄か、はたまた……!?  目指すは、神様の願いを叶えて世界最強! 立身出世!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

処理中です...