132 / 219
第9章 勇者RENの冒険
第130話 入場 1
しおりを挟む暗い廊下の向こう側から明るい光が差し込んでくる。
割れんばかりの歓声があがっている。俺は今、闘技場への花道へと入場した。
大きなホールには多くの天使達が観客として席に着いていた。どれほどの数いるのか、全くわからない。それほどに大きな会場が埋め尽くされているのだ。恐らくだが、日本一有名なドーム4つ分はありそうなほどに広い。
「最初の代表者は、獣人族代表っ! REN!」
花道を歩いているとリングアナが俺の紹介をした。白く光る人差し指を立て、拡声魔法で会場中に声が伝わっている。
天井を見ると、白いスクリーンが8面ついており、俺の歩く姿が様々な方向から映し出されていた。
「さぁ、獣人族からの代表は勇者REN! 何と! 獣人族ではなく、彼は人間との情報が入っております。何でも親しかった代表者が急遽出場出来なくなった代わりに出場を決めたそうです。種族としては最弱と言われる人間ですが、このトーナメントで、果たしてどこまで通用するのか! 実況は私、リサと、解説は天使界の仙人ことローファン氏が来てくれました! さぁ、この異常事態、どう見ますか?」
「紹介に預かりましたローファンです。えー、天使界から地上を見て50000年。天使界ではレジェンド等と呼ばれておりますが、まだまだ現役の天使でやってます。さ、このRENですが、獣人族の神が認めた男ということですね。急遽、代表者が交代したこともあり、実はまだ情報が少なくてですね、今、私の部下に調べさせている途中です。情報が入り次第、お伝えしますのでご期待ください!」
解説までご丁寧に用意されてるのか。全く、天使達ってのは暇なのか?
俺の行き先に白い闘技場が現れた。その中央に立つと、四方から歓声が雨のように降り注いできた。
果たして、俺を応援してくれる奴なんているのかわからんが、サービスくらいはしてやるか。
俺は手を振りながら声援に答えるように礼をする。
「さぁ、次の代表者の入場です! オーク族代表! ブッピー!」
ブッピー? なだかかわいい名前だな。
そんなことを思っていたら、見えてきたのは大柄な黒いオークだった。
「さ、オーク族代表のブッピーの入場です! えー、彼はエルダーオークキングという称号持ち、さらにネームドの個体ということですね」
「はい、オークキングという種はどこに発生しても災害級の被害をもたらす、まさに厄災です。そのエルダー個体ということで年齢はおよそ5000歳。災害としての経験も豊富でとにかく壊すことには定評がありますね」
「えーと、ローファンさん。それってかなり天使族的にはマズくないですか?」
「リサはまだ若いからね。物事を造るのは創造だけではだめなんですよ。一旦、破壊することによって、より新しく、より強くまた世界は生まれ変わるのです! 決して天使達が手を抜いて世界を助けていないわけではありません」
「んー、なんだかよくわかりませんが、彼もまた世界に必要だということでしょう」
ブッピーが入場してくる。身長は3メルを超える大柄な身体、そして、全身黒く硬そうな毛に覆われたブッピーは名前からは想像もつかないほどの存在感を放っていた。
「次の代表者は、ヴァンパイア族代表! ヴァンパイアロード、キュイジーヌ!」
次は吸血鬼か、タキシードのような黒い服をピシッと着込んだ人が入場してきたな。
「さぁ、あの月夜城からヴァンパイアロードのキュイジーヌの参戦ですね! これは期待が高まりますね! ローファンさん!」
「えぇ、何と言っても、この月夜城という所ですが、まず、天使が辿り着いたことが歴史上、一度もありません! まさに神や天使の全く知らない世界というわけですね」
「ローファンさん、このキュイジーヌが暴れてしまったらどうなるんでしょう?」
「いやー、まぁ天使の半分はいなくなるでしょうね。それで追い出せればラッキーというところでしょう!」
「……あまり聞きたくない話でした」
入場してきたのはタキシードを着てはいたが、胸が大きく張っており、女性だとわかった。顔つきも異様に整っており、長く伸ばした金髪が風に揺れ、光を浴びてキラキラと輝いている。
妖しい女だ。こいつは俺も気を引き締め直さないとな。ザッツを救うまでは俺は負けられないんだ……。
「次の代表者は、砂漠から、ダークエルフ族、代表。マリーン!」
白く長く輝く髪を揺らしながら入ってきたのはダークエルフの女だった。肩から長大な弓を提げ、歩いてくる。目尻の吊り上がった目はまさに狩人のごとく鋭い。だが、顔立ちが非常に整っており、驚くほどの美女だ。スレンダーではあるが、よく見れば、足は獣のような密度の高い筋肉である。
「さぁ、ゴンズー砂漠で生きるダークエルフ、またの名をデザートエルフと言います。このダークエルフの特徴はどういった所でしょうか? ローファンさん?」
「えぇ、まず、彼女達の住んでいる砂漠は生き物が少ないんですね。ですから遠くからあの弓で獲物を捉えるわけなんですが、異常なのはその発達した目と、正確に射る技術。そして土魔法を得意としています。目の視力はなんと30オーバー! 1キロ先の獲物を目で認識し、あの魔法弓で射るわけですね。砂漠一のハンターの実力、気になる所ですね」
「ローファンさん、因みに、天使達もメイン武器は弓ですが、我々と比べてどうなんでしょう?」
「あー、それ聞いちゃいます? はっきり言ってダークエルフの足下にも及びません。我々の弓は300メルが限界ですからね。しかもそこにある的に当てるなんてのは無理ですよ。ダークエルフの魔弓は1キロ先の獲物を狩るわけですから勝負にならないんですよね」
「……そうですか……」
0
お気に入りに追加
244
あなたにおすすめの小説
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
異世界サバイバルセットでダンジョン無双。精霊樹復活に貢献します。
karashima_s
ファンタジー
地球にダンジョンが出来て10年。
その当時は、世界中が混乱したけれど、今ではすでに日常となっていたりする。
ダンジョンに巣くう魔物は、ダンジョン外にでる事はなく、浅い階層であれば、魔物を倒すと、魔石を手に入れる事が出来、その魔石は再生可能エネルギーとして利用できる事が解ると、各国は、こぞってダンジョン探索を行うようになった。
ダンジョンでは魔石だけでなく、傷や病気を癒す貴重なアイテム等をドロップしたり、また、稀に宝箱と呼ばれる箱から、後発的に付与できる様々な魔法やスキルを覚える事が出来る魔法書やスキルオーブと呼ばれる物等も手に入ったりする。
当時は、危険だとして制限されていたダンジョン探索も、今では門戸も広がり、適正があると判断された者は、ある程度の教習を受けた後、試験に合格すると認定を与えられ、探索者(シーカー)として認められるようになっていた。
運転免許のように、学校や教習所ができ、人気の職業の一つになっていたりするのだ。
新田 蓮(あらた れん)もその一人である。
高校を出て、別にやりたい事もなく、他人との関わりが嫌いだった事で会社勤めもきつそうだと判断、高校在学中からシーカー免許教習所に通い、卒業と同時にシーカーデビューをする。そして、浅い階層で、低級モンスターを狩って、安全第一で日々の糧を細々得ては、その収入で気楽に生きる生活を送っていた。
そんなある日、ダンジョン内でスキルオーブをゲットする。手に入れたオーブは『XXXサバイバルセット』。
ほんの0.00001パーセントの確実でユニークスキルがドロップする事がある。今回、それだったら、数億の価値だ。それを売り払えば、悠々自適に生きて行けるんじゃねぇー?と大喜びした蓮だったが、なんと難儀な連中に見られて絡まれてしまった。
必死で逃げる算段を考えていた時、爆音と共に、大きな揺れが襲ってきて、足元が崩れて。
落ちた。
落ちる!と思ったとたん、思わず、持っていたオーブを強く握ってしまったのだ。
落ちながら、蓮の頭の中に声が響く。
「XXXサバイバルセットが使用されました…。」
そして落ちた所が…。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話
天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。
その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。
ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。
10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。
*本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています
*配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします
*主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。
*主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!
酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。
スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ
個人差はあるが5〜8歳で開花する。
そのスキルによって今後の人生が決まる。
しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。
世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。
カイアスもスキルは開花しなかった。
しかし、それは気付いていないだけだった。
遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!!
それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる