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第8章 聖教国にて

第107話 再びの王宮

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「どうしたんだ? お前等」

 門衛と何やら揉めていた勇者パーティーのRENに話しかけてみた。

「あっ! ソウじゃないか! お前こそどこに行ってたんだよ? 俺、助けてもらったのにお礼も言えず……探してたんだぞ?」

 勇者一行の視線がこちらに向いた。

「探してた? そりゃすまなかったな。でもどうしてこんな所で揉めてたんだ? もう、王宮なんて関係ないだろうに?」

 聖王は俺が水竜さんの所へ預けてるし、特に用もなくなったはずだが……。

「ソウさん。その節はご迷惑おかけしてごめんなさい。貴方達には返しきれない恩があるわ。でもどうしても王宮の中に私の大切なものがあるの。それをとりに行きたいだけなんだけど……。私たちの事なんて知らないって言われて……。通してくれないのよ」

 そうか、ここの兵士達から、勇者一行の記憶を強引に消しちゃったからな……。って俺が原因か?

「わかった。後でなんとかしよう。ここにいると騒ぎが大きくなっちゃうからさ。まずはここを離れよう」

 勇者一行は俺の提案に素直に頷いてくれた。



「よし、じゃあ認識阻害の魔法から使うよ?」

 俺とチコ、ミウに認識阻害の魔法を使用する。そして、ここから王宮まで繋げば、楽に王宮内から私物を取ってくることが出来るだろう。

「わ! すごい。ウチの体が透けて見える!」

 ミウが喜んでいる横で渋い顔をしたのはFina1だ。

「マジかよ? こんなすげぇ魔法があるとは……。俺にも魔法のセンスがあればな……」

 Fina1は身体強化魔法に優れているけれど、他の魔法はからっきしなんだよな。

「じゃ、この黒い霧を王宮内へと繋いだから入っていって。ささ、どうぞ」

 チコとミウの二人を促して、俺も黒い霧に入っていった。

 出た所は王宮内、それも以前に勇者一行と戦った場所だった。

 今ではすっかり片づいており、穴の開いた壁なども修復されている。

「じゃあ、15分後にまたここで落ち合おう」

「えぇ!」

「はい!」

 チコとミウは走って行った。王宮内の記憶はしっかりと残っているようだな。

 さて、俺はどうしようかな……。と思っていると、

「例の計画はどうなっているのかしら?」

 女の声が耳に入ってきた。聞き覚えのある声だ。それにしても例の計画? なんのことだ? 俺は声のする部屋に近づき、耳をたてた。

「はっ、現在、戦力の立て直しをしております。1週間ほどもあれば用意は調うかと」

「遅いわ。4日で終わらせて」

「はっ、御意に」

 戦力? 用意? またどこかを攻めるつもりなのか? ……全く懲りない奴らだ。

 こっそりと中へ侵入すると、中にいたのは王女と宰相だ。なにやら書類に目を通している。

 どれどれ……。認識阻害の魔法のおかげで二人は俺がそばにいても気付かない。

『現在の総戦力と魔界の戦力予想』

 おいおい、まだ魔界を狙ってたのかよ。懲りな奴らだ。しかも、4日後に進軍なんて早すぎるだろ。……ってか俺が魔界での戦いの記憶を消してしまったからすっぽりそこだけが抜け落ちてるのか! なんてこった。解決してなかったとは……。

「私はもう休むから、しっかりやっておくように」

 王女の威圧を込めた視線が宰相に刺さる。

「はっ、お任せ下さい。必ずや魔王国を落としてみせましょう」

 王女は立ち上がった。ドアの周りには彼女のお付きであるイケメン達が出迎えている。

 くっ、王族だからってイケメン侍らせていいご身分だな。イケメン達を隠そうともしないとは。このロイヤルビッチめ!

 イケメン達の背後に素早く廻り、手刀を首筋に当てて気絶させていく。

「な? 誰かいるのか!」

 王女の叫び声が上がってしまうが、ここはすでに俺の遮音バリヤーの中だ。どんなに喚こうが、叫ぼうが声はそとに漏れることはない。

 王女の首にも手刀で気絶させる。その体を黒い霧で水竜さんの所へ送り出すのであった。

 後は、びびってた宰相の記憶をいじり、今回は完了……かな?



「お待たせ! ありがとう。これで準備オッケーよ」

「ありがとな。ソウさん。おかげで大切なモノ。回収できたわ」

 二人は戻ってきたが、認識阻害のおかげで俺からも全く見えない。

「よし、じゃあ、帰ろうか」

 俺が黒い霧をだすと、二人とも飛び込んでくれたようだ。俺も急いで後を追うのであった。



   ***



「いやー、ソウさんのおかげで助かっちゃったよ! ありがとう」

「ウチも助かっちゃった! ほんまにソウさんは頼りになるのね!」

 勇者一行は宿探しをしていた俺たちに宿を紹介してくれただけでなく、聖教国のお金まで少し分けてくれたのだ。

 そして、ここはその宿の1Fに併設されている酒場。俺の両隣にはチコとミウが座っていた。……のだが、妙に距離が近いのだ。

 チコもミウも生足を出しており、その足が俺の太ももに当たっている。

 お酒も無くなりそうになるとすぐに注文してくれた。

 そして、俺の前側にはリーダーと霞さんが座っているのだが……、その目はまるで汚物でもみるかのような冷たい目で俺を見ているのだ。

 あの目さえなければウハウハだったのだが、流石に耐えられん。なんとかしなければ。

「あのー、チコさんもミウさんも少し近くないですかね?」

 今の俺に言える最大限の言葉だ。これで少しは離れてくれる……はず……、

「やだぁ、ソウさんったら。遠慮しなくていいのに!」

「そや。ウチらが今、こうしていれるんはソウさんのおかげだもん! 感謝してるんよ。ウチら」

 チコは太ももがピッタリくっつけるだけでなく、その豊満な胸で俺の腕を挟んできた。

 あぁ~、ふっくら柔らかい! こ、こんな幸せ……。


「あっ、チコばっかり抜け駆けはダメなんだからね!」

 ミウまで俺の腕に胸を押し当ててきた。

 ぬわっ! こっちはボリュームこそ少なめだが……こんなに温かいなんて! 幸せすぎて死にそう!

「……ソウく~ん?」

「あらあら……ソウに悪い虫がついちゃったみたいね? これは駆除しないといけないかしら?」

 イカン! リーダーと霞さんがマジ切れ寸前だ!

「あ、ちょっとお手洗いに行ってくるね!」

 イカンイカン。リーダーと霞さんが爆発しちゃったら俺一人では抑えられん。俺も少し頭を冷やさないとな。

 トイレは宿の建物の裏手にあった。別に用を足したいわけじゃないが、外の空気は頭がスッキリする。

 すぅー、はぁ~。

 深呼吸するだけで不思議と落ち着いてくるな。

「すまねぇな。連れが絡んでしまって」

 声がするほうを振り向くと、Fina1が立っているのだった。

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