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第6章 アナザージャパン編

第80話 黄泉の国へご招待

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 あれから、三度もやり直し、最後は隊長の家族にまでご登場してもらい、やっとのことで黒幕のことを突き止めた。

 あぁ、疲れた。ぐったりだよ。もちろん、隊長とその家族も隊員も家に帰しておき、明日にはすっかり忘れてくれているだろう。後のことはもう知らん。

 そして、今。俺はとある政治家の邸宅前に降り立った。

「突撃してきた隊員たちが姿を消してまだ半日だというのに……、随分と厳重に固めてるなぁ」

 邸宅の周りは警官だらけだ。それも数十人。しかも、厳重な装備である。拳銃はもちろん、ヘルメットにガスマスク、大型の盾に電気の走る警棒はもちろんのこと、超能力者たちも多数控えている。

 極めつけは戦車だ。間違いなく自衛隊からも応援がきており、機関銃も発射の準備がしてある。

 俺の情報では、今日、ここで勾玉作戦を実行したメンツが集まり、今後についての緊急会議をするらしい。

 一箇所に集まってくれたのは俺にとって僥倖としか思えない。

 さて、警備の連中はどうしようかな?

「ワンッ!」

「お? やる気じゃないかコン」

 コンはまた睡眠の魔法を使った。広範囲に効き目があるため、警官並びに自衛隊の隊員たちもパタパタと倒れ込むように眠りについていく。

 こりゃあ、助かるな。二回やった尋問は散々な結果だったから、コンがやたらと優秀に見えるぞ。

 俺とコンは悠々と正面から邸宅へ入ることが出来るのだった。



「そこまでよ。ソウ」

 目の前に現れたのは泉だ。

「これはこれは、泉さん。お元気でしたか?」

「まったく、能天気なのはいつも通りね。でもごめんなさい。ここから先は通すわけにはいかないわ」

 泉の表情は固い。

「困ったな。俺はその先にいる人に用があってね。通してもらえないと困る。かと言って泉さんとは闘いたくない」

「私が引くとでも? あなたの事、調べたの。だけど、この日本に戸籍はもちろん、住んでいた形跡すらなかったわ。あなたは誰なの? 何が目的でこの日本に来たの?」

「ん? あぁ、そっか。俺は死んだことになってるのかな?」

「いいえ。その可能性も含めて全部調べさせてもらったわ。警察の意見としては、海外から忍び込んだスパイじゃないか? って言ってたけれど、私にはそう思えない」

「俺がスパイ? そんなわけないよ。俺は純粋な日本人だったんだけどなぁ」

「だった? ってことはやっぱり海外に亡命したってことなの?」

 泉の表情がさらに険しくなった。

「そういうわけじゃない。ま、神様に消されたって所さ」

「はぁ? 神様?」

「あ、泉さんは能力使えるんだ? 大丈夫だった?」

「やはり、アナタが原因なのね。お生憎様。殆どの人達から能力は失われたわ。だけど、私は大丈夫だったのよ」

 泉は手のひらから氷の柱を出してみせた。

「なるほど、ネイティブな能力者だったわけだ」

「私はこの能力で、稼がなくちゃ。せっかくモデルを辞めてまで転職したんだもの。だからアナタはここから先は通せないの」

 泉は俺を睨みつけてくる。

 うーん、せっかくの美人が台無しだ。

「もし、通ろうとしたら?」

「あなたを倒すわ」

 泉の後ろにズラリと能力者たちが並んだ。一斉に能力を発動し、俺に向かって発射してくる。

 ふぅ、やっぱりこうなるのか。元同族として、攻撃はしたくないしな。

 能力者達の一斉射撃だが、俺のバリヤーの前では無力。目の前に煙を立てるだけのくだらない攻撃だ。

「コン、頼めるか?」

「ワンッ!」

 コンの睡眠魔法が辺りを包みこむ。妖術の一斉射撃もピタリと止んだ。

「うーん、こいつらの能力も残ってると面倒が起こるかもしれんな。全部忘れさせておこう」

 俺は綿密な記憶操作をして、こいつらから能力関係の記憶をことごとく消していく。

 すると、途中から急に操作が楽になるのを感じがした。

 こ、これは……?

 急いでステータス画面を見る。スキルに新しく追加された文字があった。

記憶操作術 LV2

 なんてこった! こんな所で新しいスキルが手に入るなんて!

 すぐにでもレベル上げをしたいところだ。が、俺にはまだやることがある。

 奥にあるドアを蹴破った。

「誰だッ!」

 近くにいた護衛が次々に拳銃を発砲してくる。

「無駄だよ」

 銃弾は全て俺のバリヤーで弾かれた。

「くっ!」

 護衛者はナイフを懐から取り出すと、俺に向かって振り下ろしてくる。

 しかし、何て遅い攻撃なんだ。あくびが出そうだよ。

 振り下ろされるナイフを素手で掴み、刃を握り潰してやった。

 これで諦めてくれれば楽なんだけどねぇ。

 護衛達はまだ諦めず、俺を取り囲み、数人で一斉に攻撃してきた。

 俺は素早く全員のナイフをつかみ取った。そして、ナイフ六本をまとめて素手で折り、それを護衛たちに見せつけるようにゆっくりとおとしていく。

「さて、そろそろ諦めてくれるといいんだがねぇ」

 護衛たちの動きが止まった。何をすればよいのかわからず、フリーズしてしまっているのだろう。

 そんな中、

「えぇい、何をしておる? こんな時のために高い金を払っているんじゃろう! さっさとかかって行かんか!」

 激を飛ばす老人が一人。他の重要人物らしき面子は後ろに隠れている。

「ようやく、会えましたね。実に長かったですよ。あんた達の欲望のせいで、迷惑してる人が多いんだ。ちょっは反省してもらいたいんだが……」

「何を抜かしおって、若造ごときに何が解るというのじゃ! やれっ! 武器は何でも許可する!」

 やれやれ、護衛たちは諦めてくれたというのに……。俺は重火器を出そうとした護衛たちの首に軽く手刀を当て、気絶させていく。

「では、邪魔者がいなくなった所で、改めて……」

 俺は黒い霧を出し、重要人物たちを包み込む。

「な、なんじゃあ! この霧はっ!」

 老人がうろたえる。

「この度の騒動。その容疑者一行を黄泉の国へご招待~~!!」

 俺の声と共に数人の人間が、この邸宅から姿が消えてしまうのであった。

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