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第4章 突撃! 魔界統一編 前編
第43話 鬼神 エルガ
しおりを挟む闘いの場に辿り着いてみると、そこには村長がいた。
「どうだ? 闘っているのは……ドウムか」
「これは……、ソウ様に隠し事は出来ませぬな。えぇ、ドウムが闘っているのですが、形勢が良くありませんでな。ワシも心配で見に来たのですじゃ」
「フム、敵にそれほどの実力者がいたのか」
「それですじゃ。彼奴は魔王軍六大将の一人、鬼神のエルガと申しまして……、かつてこの魔界では格闘戦において随一と言われておりました」
「かつて?」
「今はソウ様がいらっしゃいますからな。それに、ドウムがあれだけ闘えているのですじゃ。ワシだって抵抗くらいは出来ますし、二人がかりなら倒すこともできましょう」
「フム、そうか」
ドウムは渾身のパンチを放ち、それをエルガが肘と膝で挟むように防ぐが、ドウムのパンチの威力にエルガも傷ついている。
そして、エルガの蹴りを寸での所で防御したドウムだが、蹴りの勢いに負け、十メル以上も吹き飛んだ。
「惜しいな。それほどの実力があるとは……、どうだ? 俺に仕えぬか?」
エルガはドウムの顔を見据え、本気の顔で勧誘をする。
「へっ、言っただろ? 俺は大魔神、ソウ様の一番弟子だ! 二君に仕える気はねぇよ!」
「惜しい、それほどの才。ここで朽ちるにはあまりにも……。だがこれは尋常な勝負だ。恨むなよ」
「へっ、誰が恨むもんかよ!」
ドウムは口の中に溜まった血を吐き捨て、エルガに渾身の突きを放っていく。
「うぅむ、エルガとやらがこれほどの武人だとは……。誤算じゃったですの」
「あぁ、エルガがこれほどの武人でなければ、二対一ですぐに片づいたのだろうがな」
「そこなんですじゃ。実の所、ドウムもワシが来ていることには気付いておりましての。じゃが、あのエルガとは一対一で勝負したいと目で訴えておりました。無論、ワシも思いっきりやらせてやりたいと思いましての。死ぬ前に割って入ろうと思っておりましたが……」
「あぁ、ドウムはここで死ぬには惜しい男だ。最後は俺が仲裁に入ろう」
「助かりますじゃ」
ドウムの渾身のパンチは受け流される、と同時に体を掴まれ、一本背負いの体勢で投げられた。
二、三十メルほども投げられ、地面に背中から叩きつけられるが、ドウムは苦悶の表情を浮かべながらもまだ立ち上がった。
「ま、まだだっ! 俺はまだ闘えるっ!」
「その意気や良し! 来い! 決着をつけてやる!」
俺の目から見ても二人の実力差ははっきりとしていた。勝負らしくなっているのはレベルにそこまで差がないからだろう。だが、肝心の武術に差があった。
「戦場で生きてきたエルガの武術、本物だな」
「はいですじゃ、さすがは魔界一の武術家。あの者を倒すには理外の攻撃が必要でしょうな」
ドウムが打って出た。全ての魔力、体力、気力を拳に乗せた、最後の一撃だ。
それに呼応するようにエルガも拳に己の全てを注ぎ、打ち放つ。
ドガァァァァァッッッ!!!
空気は震え、大地は抉れ、周りの兵たちは伏せてその衝撃に耐えている。
爆風が過ぎ、様子を見ると、二人はお互いを相打つ状態で立っていた。
が、先に倒れ込んでいくのはドウムだった。
「ぐぅぅ……」
地面に倒れ込んだドウムはピクピクと体を痙攣させ、動けなくなってしまう。
「見事だった。ドウムよ、しかし、これも戦場の定め。死んでもらおう」
エルガが倒れたドウムに拳を振り上げる。
「待てっ!」
倒れているドウムにヒールとキュアーをかけ、俺はエルガの前に割って入った。
「お主は……、ドウムの師か?」
「あぁ、そうだ。ウチのドウムが世話になったな。すまんが、こいつに死なれちゃ困るんでね。これでも仕事熱心な門番なんだ」
「そうか、次は貴様が我の相手か?」
「あぁ、そうしてやりたいんだが、まずは……、長老、ドウムを安全な所へ頼む」
「はっ!」
長老はドウムを担ぎ、すぐにこの場を去って行った。
「それから……、ほら、これを飲みな!」
懐から瓶を取り出し、エルガに投げて渡す。
「中はポーションだ。安心して飲みな」
「ほぅ、あの潔い男の師だ。まさか毒は盛るまい」
エルガは一息で飲み干した。ドウムと闘った傷完全に回復し、闘気が溢れ出す。
「むぅ? これほどの薬とは……」
「オーギュストやワーケインは俺が倒した。だから手は抜いてくれるなよ?」
「なんだと? 六大将のあの二人を討ったのは貴様だというのか?」
エルガの目が驚きに見開く。
「あぁ、そうだ」
「そうか……、今日はついてる。強者と二度も闘えるとはな」
エルガの闘気が爆発するように立ちのぼる。
「ほぅ、大したものだ。それほどの闘気、そして戦場で鍛え抜かれた技。是非、我らがアルティメットハンターズに欲しい人材だ」
「ガッハッハッハ! 我に寝返れと言うのか! そんな戯れ言は拳を交えてから言え!」
エルガは足で地面を強烈に踏んだ。地面が割れ、地響きが鳴る。腰を落とし、左腕を前に、右腕を後ろに引き、構えをとった。
「行くぞっ!」
エルガは先ほどよりも明らかに速いスピードで俺に迫ってくるのであった。
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