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第3章 エルフの国にて
第27話 思わぬ出会い
しおりを挟む「立て。我らが族長がお会いになるそうだ。大人しく来てもらおう」
冷え冷えとした牢屋に隊長と呼ばれていた男の声が響く。
「お? やっと出られるのか」
「フンッ、貴様のような怪しい輩は即刻死罪だろうがな」
俺は両腕を縛られ、首にも紐付きのベルトをされている。
正直、こんなものはいつでも引きちぎることが出来るだろう。が、今はミーナもどこかで捕まっている。
うかつな行動はとれないよな。
俺はレベル上げをしたいだけだったんだ。次の敵がここに来るっわかったから来ただけなのに、全く、被害が広がっても知らんぞ?
そんなことを考えていると、巨大な世界樹の真ん中にある、宮殿のような建物へ通されていった。
大広間に通されると、前に神官らしきエルフが立っていた。
かなり歳老いた女性のエルフのようで、杖をついて曲がった腰を伸ばし、手が震えている。
「来たかや」
「はっ、長老。この者が、例の予言にあった者かと思われます」
「うむ、では下がってよいぞ」
「っ! しかしっ!」
「大丈夫じゃ。神の仰せじゃからの」
「神の! ははっ。では下がっております。万が一の際はすぐにお呼びください」
「うむ」
やれやれ、どうやらエルフの神様とやらに会うのか。まったく面倒くさいことこの上ないな。
隊長が下がると、ここからは長老が案内してくれるようだった。
長老は震える足取りで俺を奥へと案内する。
「長老、大丈夫か? 足が震えてるよ?」
「なぁに、まだまだ若いもんには負けはせんて。ひゃっひゃっひゃ」
「それは失礼。まだ元気溢れてるみたいでよかったよ」
「うむ、では、この扉の先はお主一人でいってくりゃれ。妾はここで待機を命じられておっての」
「やっと神様とご対面か。やれやれ、何を言われることやら」
長老が扉を開けると、明るい日差しが世界樹を照らし、その木漏れ日が所々に差し込んで幻想的な空間になっていた。
「これが世界樹か。一体、何年いきてるんだ?」
目の前の木は視界を埋め尽くすほどの太さとなっており、端や天辺は全く見えない。静かで、森のような濃い植物の匂いに包まれていた。
「はぁ~~~、気持ちいいな。これで腕が縛られてなきゃ最高なんだけどな」
世界樹に歩いて近づいていくと、直接俺の脳に響くような声がきこえてきた。
「あなたのお名前は?」
「俺はソウ。見ての通り、旅の者さ」
「ソウ。やっぱりソウなのね」
「やっぱり? 俺は心当たりがないけれどな」
「オークキングと戦ったあの動き。見ていたわ。あの回避の仕方。ファンタズムスターズで会った時と同じ動き」
「ファンタズムスターズ!! 知ってるのか?」
「知ってるもなにも、私よ。ソウ。まだ気付かない? 私は霞よ」
「え??」
頭が真っ白になる。
世界樹という樹と話していたと思ってたら、それが霞さんだって? そんなバカな!
「ふふっ、驚いてるわね」
「いや、えっと、その……」
「驚いたときの言葉につまる仕草も懐かしいわ。あの頃のままのソウなのね」
「ホントに霞さんなの?」
「ホントよ。ガルーダミラを取るのに何周付き合ったと思ってるの? 今でもあれが出た時の感動はよく覚えてるわ」
「ほ、ホントに霞さんなんだ!」
腕に巻かれていた縄を引きちぎり、首のベルトも強引に千切って世界樹へ向かって走った。
「ゴメンね。ソウ。私は連れてきてほしいってみんなに頼んだと思ったら、色々と勘違いしちゃってたみたいね」
「うぅん、そんなことどうでもいいよ! まさかこんな所で出会えるなんて!」
「ふふ、泣くほど嬉しかったの?」
「え……」
頬を触ると、自然に落ちてきた涙で濡れていた。
「俺、この世界でもコンプリートしようって、頑張ってここまで生きてきたんだ!」
「ふふ、ソウらしいわね」
「でも何で霞さんがエルフの神様なんて……」
「もう数百年前なんだけどね。この世界樹が枯れそうになっちゃったのよ。私はエルフとしてこの世界に転生していたのだけど、私の生命をこの樹に合体させることで立て直したのよ」
「そんなことが……」
「でさ、私の名前は霞だって言ってるのに、みんな”す”の字を取っちゃって、私のこと”かみ”さまって呼ぶようになっちゃって」
「あぁ、それで神さまか。でも霞さんの知識量なら崇められるのも仕方ないんじゃない?」
「また、そうやって変に持ち上げるのね」
「いや、だってさ。ネットの情報サイトもろくになかった頃からデータが頭に全部入ってたってすごいじゃん!」
「フフフ……、あ、ソウ。お願いがあって来てもらったんだけど、お願い出来ないかな?」
「霞さんのお願いならなんでも言ってよ! 水くさいこと言わないでよ」
「そう言ってくれると思ったわ。どうやら、森に出現したダンジョンからただならぬ妖気を感じるのよ。アナタを襲ったオークキングのような……、それ以上の存在が潜んでいるかも知れないの」
「あぁ、丁度よかった。俺もそいつに用があってさ。レベル上げの手伝いしてほしかったんだよね」
「フフフ……、見てたわよ? 最後はオークキングが可愛そうで同情しちゃった」
「でさ、次はこの辺りからヴァンパイアが来るってオークキングが言ってたんだ」
「それで来てくれたのね」
「あぁ、任せておいてよ!」
俺はこの日はずっと思い出話に花が咲くのであった。
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