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せんせい
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「せんせーい!」
会場の入り口の方から、女子の黄色い声が聞こえて浩介がその方向を見ると、そこには元担任の道端先生がやってきたところだった。
「皆んな、元気だったか?」
何人かの女子が先生を囲んでキャーキャー騒いでいる。
僕が中学卒業の時、先生はたしか25才くらいだったはず。卒業から5年経つから、もう先生も立派なアラサーなんだなぁ。まぁ、25才でもアラサーって言われちゃうんだけど。なぜ、年齢を四捨五入するのか、僕には分からないよカヲル君!
でも、先生は全然30才には見えない。今でもあの時のまま、まるで時が止まってるみたいだ。
思えば先生にはとてもお世話になった。
故郷を離れて東京に行く決断をしたのも、先生のアドバイスが大きかった。
もし、先生のアドバイスが無かったら、今でも僕は故郷で燻っていたかもしれない。そうしたら、帝王大学に通うなんてこともなかっただろうし、あんなアホでも堀田にも出会わなかったかもしれないと思うと、先生との出会いも運命だったのだと思える。
と、その時、先生と僕は目が合った。先生は、群がる女子たちを宥めると、まっすぐ僕の方へ歩み寄ってきた。そして僕を力いっぱいハグしてきた。初めて堀田にハグされた時ぐらいの強さだった。
離れた所から女子たちが羨ましがっているのが聞こえる。
やーい、いいだろー、羨ましいだろー。
「久しぶりだね、森田君。どうだい、東京の生活は?大学も帝王大学なんだってね。やはり、君ならできると思っていたよ」
先生は嬉しそうに語りかけてきた。
「先生のおかげで頑張った甲斐がありました、本当にありがとうございます」
「とんでもない、全て森田君の頑張りの賜物だよ」
先生の笑顔が弾ける。こんなに本気で喜んでくれる人格者の先生なんて、そうそういないのではないだろうか?クラスメイトには恵まれなかった僕だけど、先生との出会いは、暗黒時代だった中学時代の唯一の光のようだった。
「それはそうと、森田君はいつまで帰省しているのかな?」
「学校とかバイトがあるので、明日の朝には帰ろうと思ってます」
「そうか・・・森田君とは積もる話もいっぱいあったんだけど、先生もこれから部活に行かないといけないし、ゆっくり話している時間が無いのが残念だよ」
先生は、本当に名残惜しそうな表情をして微笑んだ。
僕も、卒業してからのことや、中学の頃の御礼もしたいし、時間が許せば一対一で話せたら良かったのになぁ、と残念に思った。
「次に帰省する時には、必ず連絡します。その時はご馳走してください」
「ははっ、森田君もそんな冗談が言えるようになったんだね。それじゃあ、先生の連絡先を教えておくよ」
こうして僕と先生は連絡先を交換した。
「それじゃあ、先生はそろそろ行かないと」
「お忙しいんですね」
「まぁね、大会も近いから。そうだ、最後に一つだけ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「はい、何でしょうか?」
ドキドキ、何を聞かれるんだろうか?
「森田君は今、彼女いるの?」
え?はぁ?先生までそんなこと聞くの?それも今ですか?他に聞くこと無いの~?
「いえ・・・彼女はいないですけど」
「そうか、それならいいんだ。それじゃあ、あとで連絡するから。大学生活、頑張ってね」
そう言い残すと、先生は会場をあとにした。
まさか、あの先生までが皆んなと同じ質問をしてくるとは意外だった。
何で皆んな、僕の色恋沙汰なんかにそんなに興味あるんだろう?
それとも、僕らくらいの年代は、そう言う話題が最も関心があって、聞くこと自体が当たり前で自然なことなのだろうか?
会場の入り口の方から、女子の黄色い声が聞こえて浩介がその方向を見ると、そこには元担任の道端先生がやってきたところだった。
「皆んな、元気だったか?」
何人かの女子が先生を囲んでキャーキャー騒いでいる。
僕が中学卒業の時、先生はたしか25才くらいだったはず。卒業から5年経つから、もう先生も立派なアラサーなんだなぁ。まぁ、25才でもアラサーって言われちゃうんだけど。なぜ、年齢を四捨五入するのか、僕には分からないよカヲル君!
でも、先生は全然30才には見えない。今でもあの時のまま、まるで時が止まってるみたいだ。
思えば先生にはとてもお世話になった。
故郷を離れて東京に行く決断をしたのも、先生のアドバイスが大きかった。
もし、先生のアドバイスが無かったら、今でも僕は故郷で燻っていたかもしれない。そうしたら、帝王大学に通うなんてこともなかっただろうし、あんなアホでも堀田にも出会わなかったかもしれないと思うと、先生との出会いも運命だったのだと思える。
と、その時、先生と僕は目が合った。先生は、群がる女子たちを宥めると、まっすぐ僕の方へ歩み寄ってきた。そして僕を力いっぱいハグしてきた。初めて堀田にハグされた時ぐらいの強さだった。
離れた所から女子たちが羨ましがっているのが聞こえる。
やーい、いいだろー、羨ましいだろー。
「久しぶりだね、森田君。どうだい、東京の生活は?大学も帝王大学なんだってね。やはり、君ならできると思っていたよ」
先生は嬉しそうに語りかけてきた。
「先生のおかげで頑張った甲斐がありました、本当にありがとうございます」
「とんでもない、全て森田君の頑張りの賜物だよ」
先生の笑顔が弾ける。こんなに本気で喜んでくれる人格者の先生なんて、そうそういないのではないだろうか?クラスメイトには恵まれなかった僕だけど、先生との出会いは、暗黒時代だった中学時代の唯一の光のようだった。
「それはそうと、森田君はいつまで帰省しているのかな?」
「学校とかバイトがあるので、明日の朝には帰ろうと思ってます」
「そうか・・・森田君とは積もる話もいっぱいあったんだけど、先生もこれから部活に行かないといけないし、ゆっくり話している時間が無いのが残念だよ」
先生は、本当に名残惜しそうな表情をして微笑んだ。
僕も、卒業してからのことや、中学の頃の御礼もしたいし、時間が許せば一対一で話せたら良かったのになぁ、と残念に思った。
「次に帰省する時には、必ず連絡します。その時はご馳走してください」
「ははっ、森田君もそんな冗談が言えるようになったんだね。それじゃあ、先生の連絡先を教えておくよ」
こうして僕と先生は連絡先を交換した。
「それじゃあ、先生はそろそろ行かないと」
「お忙しいんですね」
「まぁね、大会も近いから。そうだ、最後に一つだけ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「はい、何でしょうか?」
ドキドキ、何を聞かれるんだろうか?
「森田君は今、彼女いるの?」
え?はぁ?先生までそんなこと聞くの?それも今ですか?他に聞くこと無いの~?
「いえ・・・彼女はいないですけど」
「そうか、それならいいんだ。それじゃあ、あとで連絡するから。大学生活、頑張ってね」
そう言い残すと、先生は会場をあとにした。
まさか、あの先生までが皆んなと同じ質問をしてくるとは意外だった。
何で皆んな、僕の色恋沙汰なんかにそんなに興味あるんだろう?
それとも、僕らくらいの年代は、そう言う話題が最も関心があって、聞くこと自体が当たり前で自然なことなのだろうか?
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