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暁の決闘
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次の日の朝早く。まだ暁が朝焼けの空に輝く頃。後座の上で後ろ手に縛られた犬吉。
その前で、太郎と木島が相対している。
その決闘の様子を、多くの見物人が朝早くから集まって見ている。
「勝負は10分。その間に相手の髷襷(まげ)か襷(たすき)を奪うか、降伏させること。武器は手持ちの木刀か、この場所にあるもののみとする。」
立会人が説明する。
「それでは、始め!!」
明石万十郎の号令で、遂に決闘が始まった。
お互いの出方を窺っている2人。しかし、一瞬だが太郎の跳ぶのが早かった。
しかし、木島は太郎の殺陣をいとも容易く受け止めて押し返す。
太郎は片手でバク転をして体勢を立て直して、すぐに構えに入る。
次に木島が仕掛ける。木島の突きが太郎の頬を掠めるが、太郎は寸出のところで避ける。
固唾を飲んで衆目が見守るなか、河原には太郎と木島の打ち合う乾いた音だけが響く。
一進一退の攻防が続くなか、木島が大きく後退して太郎と距離を取った。
「そろそろ決着をつけよう。」
木島はそう言うと、これまでに見せなかった構えをする。
体勢を低くし木刀を下向きに構え、目にも見えぬ速さで一気に上へ振り上げる。
その瞬間、空気の刃が砂煙を上げて地面を走り、太郎目掛けて迫る。
太郎は間一髪、それを避けたが、舞い上がった砂煙で視界を奪われてしまう。
「どこだ!」
太郎は周囲を見回すも、木島の姿は見えない。
その時、太郎の頭上から木島が襲いかかる。太郎は木島の奇襲を避けようとしたが、木島の一撃が太郎の手の甲を捉えた。
太郎は木島の次の攻撃を避けるために、地面を転がり距離を取り、素早く立ち上がり構えた。
「よく私の砂塵刀を避けたな、褒めてやる。しかし、その右手はもう使えまい。手加減してやったとは言え、刀を持つのもやっとと言ったところか。もう存分に戦っただろう?諦めて投降しろ。」
「そうはいかない。俺は、どんなに状況が悪くても、可能性があるなら諦めない。必ずお前の髷をもらう。」
太郎はそう言うと、木刀を左手に持ち替え引き、構えをとる。
「愚かな…今のお前を例えるなら、ただ打たれるために立ち上がる、起き上がり小法師のようなものだ。」
木島も構える。
そして2人はほぼ同時に跳ぶ。
瞬間、2人の影が交差する。
太郎が勢い余って、激しく地面を転がり、そのまま起き上がれない。
木島は、倒れている太郎のもとへ歩み寄る。
「哀れな…言わぬことじゃない。だから投降しろと忠告したのに…」
木島は太郎の喉元に木刀をあてがう。
「そこまで!勝者、太郎殿!」
「何!どうしてだ!?」
木島の髷が静かに地面に落ちる。
「そんなバカな…いつの間に。」
立ち尽くす木島に、起き上がった太郎が言う。
「だから言ったのに。必ずお前の髷をもらうと。」
2人の戦いの行方を見守っていた観衆から、大きな歓声と拍手が巻き起こる。
犬吉も大粒の涙を流して太郎の勝利を喜んだ。
こうして太郎の活躍により、犬吉は晴れて自由の身となった。
「太郎、これからどうする?」
「これから仲間を探しに行く。猿山と猿空、姫雉はどこへ行った?」
「3人なら、東の城下の方へ向かったが。」
「ならば、俺たちも東へ向かおう。」
太郎は踵を返して、進路を東にとる。
「おい、待ってくれよ。とりあえず飯にしないか?おーい。」
犬吉も太郎の後を追う。こうして2人は、一路、城下へと向かうこととなる。
その前で、太郎と木島が相対している。
その決闘の様子を、多くの見物人が朝早くから集まって見ている。
「勝負は10分。その間に相手の髷襷(まげ)か襷(たすき)を奪うか、降伏させること。武器は手持ちの木刀か、この場所にあるもののみとする。」
立会人が説明する。
「それでは、始め!!」
明石万十郎の号令で、遂に決闘が始まった。
お互いの出方を窺っている2人。しかし、一瞬だが太郎の跳ぶのが早かった。
しかし、木島は太郎の殺陣をいとも容易く受け止めて押し返す。
太郎は片手でバク転をして体勢を立て直して、すぐに構えに入る。
次に木島が仕掛ける。木島の突きが太郎の頬を掠めるが、太郎は寸出のところで避ける。
固唾を飲んで衆目が見守るなか、河原には太郎と木島の打ち合う乾いた音だけが響く。
一進一退の攻防が続くなか、木島が大きく後退して太郎と距離を取った。
「そろそろ決着をつけよう。」
木島はそう言うと、これまでに見せなかった構えをする。
体勢を低くし木刀を下向きに構え、目にも見えぬ速さで一気に上へ振り上げる。
その瞬間、空気の刃が砂煙を上げて地面を走り、太郎目掛けて迫る。
太郎は間一髪、それを避けたが、舞い上がった砂煙で視界を奪われてしまう。
「どこだ!」
太郎は周囲を見回すも、木島の姿は見えない。
その時、太郎の頭上から木島が襲いかかる。太郎は木島の奇襲を避けようとしたが、木島の一撃が太郎の手の甲を捉えた。
太郎は木島の次の攻撃を避けるために、地面を転がり距離を取り、素早く立ち上がり構えた。
「よく私の砂塵刀を避けたな、褒めてやる。しかし、その右手はもう使えまい。手加減してやったとは言え、刀を持つのもやっとと言ったところか。もう存分に戦っただろう?諦めて投降しろ。」
「そうはいかない。俺は、どんなに状況が悪くても、可能性があるなら諦めない。必ずお前の髷をもらう。」
太郎はそう言うと、木刀を左手に持ち替え引き、構えをとる。
「愚かな…今のお前を例えるなら、ただ打たれるために立ち上がる、起き上がり小法師のようなものだ。」
木島も構える。
そして2人はほぼ同時に跳ぶ。
瞬間、2人の影が交差する。
太郎が勢い余って、激しく地面を転がり、そのまま起き上がれない。
木島は、倒れている太郎のもとへ歩み寄る。
「哀れな…言わぬことじゃない。だから投降しろと忠告したのに…」
木島は太郎の喉元に木刀をあてがう。
「そこまで!勝者、太郎殿!」
「何!どうしてだ!?」
木島の髷が静かに地面に落ちる。
「そんなバカな…いつの間に。」
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こうして太郎の活躍により、犬吉は晴れて自由の身となった。
「太郎、これからどうする?」
「これから仲間を探しに行く。猿山と猿空、姫雉はどこへ行った?」
「3人なら、東の城下の方へ向かったが。」
「ならば、俺たちも東へ向かおう。」
太郎は踵を返して、進路を東にとる。
「おい、待ってくれよ。とりあえず飯にしないか?おーい。」
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