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涙
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空は青く澄み渡り、日差しも暖かく僕を包む。深呼吸すれば新緑の匂いが肺を満たしてくれる。
だけど、それなのに、僕の心はゲリラ豪雨にでも見舞われたかのように、土砂降りのずぶ濡れの気分。
何しろ、今日は堀田をフラなければいけない日なのだから。
堀田、傷つくだろうなぁ。あんなに毎日嬉しそうにしてくれていたのに。どのタイミングで言えばいい?すぐ言うか。そうだよな。それがせめてもの礼儀だよな。あまり気を持たせても悪いし、よし、来たらすぐ言おう。
「おはモーニング」
堀田はいつもの調子で、爽やかな満面の笑みでやって来た。
「早いな、まだ待ち合わせ時間まで30分もあるのに。そんなに俺とのデートが楽しみだった?」
「あのさ、堀田・・・」
僕はすぐそこまで言葉が出かかったが、そのあとが続かない。
「とりあえず、まだ映画始まるまで時間あるし、お茶でもしようか。」
と、言うと、堀田は僕の手を引いて近くのカフェへと向かった。
あぁ、ダメだ、やっぱ怖くて言えない。
僕は堀田の笑顔を壊すのがやっぱり怖くて、始めに言おうと思っていたのに言えなかった。
カフェでお茶をしているときも、堀田はいつもの調子で笑顔が絶えない。(付き合ってはいないんだけど)別れ話をしたら、堀田はどんな反応をするのだろう?最悪、殴られるかもしれない。いや、それは仕方ない。今までハッキリさせてこなかった自分も悪いのだから。それも覚悟の上で来たのではないか、浩介。
映画館は、もうすぐ公開終了のタイトルということで、観客は数えるほどしかいなかった。
僕は、このあとのことを考えると、全く映画に集中することができなかった。
映画を観ていると、途中で堀田と僕の手が触れ合った。そして堀田の手が、僕の手に重ねられた。戸惑ったけど、僕はそれを受け入れて堀田と手を繋いだ。なんとなく、僕もそうしたかったような気がする。それは、最後だからという気持ちもあったかもしれない。それともこれから堀田をフルという、罪悪感からだったからかもしれない。
「あ~、面白かった。浩介も面白かった?」
「うん。」
僕は、これからのことを考えると、気もそぞろ、全く楽しめてなどいなかった。
「今日が最後だと思うと、込み上げるものがあるよなぁ。ずっと、今日が終わらなければいいのに。」
え?今日が最後?・・・まさか、堀田も薄々勘づいていたの?
「ごめんなさい」
僕は、蚊の鳴くような小さな声で謝った。
「やっぱりそうか・・・」
堀田の顔から、笑顔が消えたのがハッキリとわかった。こんな顔、初めて見たかもしれない。
「いつから、わかってたの?」
「昨日、話しがあるってRINEで言われた時。いつもなら、デートじゃない!って反応なのに、昨日はデートじゃない!って否定しなかったから。」
そうか・・・そんなところで察していたなんて。意外だった。僕の知らない堀田は、案外デリケートだったんだな。
「ごめん」
僕は、それしか言葉が出てこなかった。自分がフラれるかもしれない、という事に気づきながらも、いつものように振る舞っていた堀田の気持ちを考えると、「ごめん」としか言いようが無かった。
いったい、どんな想いと覚悟で堀田は今日来たのだろう?
「いいんだ。謝らないで。押せ押せでいったら、浩介が俺のものになるんじゃないかな、と思っていた俺が悪いんだから。」
しだいに堀田の声が震えて上擦ってきているのがわかる。堀田、泣いているの?
「やばい。最後は笑顔で終わらせるって決めてたのに、目から鼻から水が出て止まらん。」
僕に背を向けて、堀田が無理矢理笑っているのがわかる。
「もう行ってくれ。俺、もう少し散歩でもしてから帰るから。」
気がついたら、僕も声を出して泣いていた。どうして僕は泣いているのだろう?こうなることを、告白された時からずっと望んできたのに。
僕は何度も「ごめん」と繰り返すことしかできなかった。
そして僕は、その場に堀田を残して立ち去った。
堀田と別れてから、僕はどこをどう歩いたのかよく覚えていない。
たぶん、号泣しながら歩いている僕を見て、道ゆく人たちはおかしく思っていたことだろう。
人を傷つけるということは、自分の心もこんなにも痛みを感じるものなのだなぁ。自業自得とはいえ、これは辛すぎます、神様。
僕はあてもなく、涙が止まるまで街をあてもなく彷徨った。
どれくらい寝ただろうか。僕は日差しの眩しさに起こされた。激しい頭痛。体がひどく重い。まるで、何か鉛の錘でも付けているようで、思うように体が動かせない。
堀田は、あれからどうしたのだろう?ちゃんと帰ったのかな?寝られたのかな?堀田が、早く新しい恋をして、今度こそちゃんと幸せになってくれたらいいな。
そんなことを考えながら寝返りをうつと、目の前に海老原先輩の寝顔があった。
え?どして?
そういえば、自分、パン1じゃないか!
先輩も裸で寝てる。こ、これはどういうことなんだ!?
僕は、海老原先輩の腕をどけて、先輩を起こさないように、そっと服を着て荷物を持って部屋を立ち去った。
どうして?何がどうしてこういう状況に陥るの?
だけど、それなのに、僕の心はゲリラ豪雨にでも見舞われたかのように、土砂降りのずぶ濡れの気分。
何しろ、今日は堀田をフラなければいけない日なのだから。
堀田、傷つくだろうなぁ。あんなに毎日嬉しそうにしてくれていたのに。どのタイミングで言えばいい?すぐ言うか。そうだよな。それがせめてもの礼儀だよな。あまり気を持たせても悪いし、よし、来たらすぐ言おう。
「おはモーニング」
堀田はいつもの調子で、爽やかな満面の笑みでやって来た。
「早いな、まだ待ち合わせ時間まで30分もあるのに。そんなに俺とのデートが楽しみだった?」
「あのさ、堀田・・・」
僕はすぐそこまで言葉が出かかったが、そのあとが続かない。
「とりあえず、まだ映画始まるまで時間あるし、お茶でもしようか。」
と、言うと、堀田は僕の手を引いて近くのカフェへと向かった。
あぁ、ダメだ、やっぱ怖くて言えない。
僕は堀田の笑顔を壊すのがやっぱり怖くて、始めに言おうと思っていたのに言えなかった。
カフェでお茶をしているときも、堀田はいつもの調子で笑顔が絶えない。(付き合ってはいないんだけど)別れ話をしたら、堀田はどんな反応をするのだろう?最悪、殴られるかもしれない。いや、それは仕方ない。今までハッキリさせてこなかった自分も悪いのだから。それも覚悟の上で来たのではないか、浩介。
映画館は、もうすぐ公開終了のタイトルということで、観客は数えるほどしかいなかった。
僕は、このあとのことを考えると、全く映画に集中することができなかった。
映画を観ていると、途中で堀田と僕の手が触れ合った。そして堀田の手が、僕の手に重ねられた。戸惑ったけど、僕はそれを受け入れて堀田と手を繋いだ。なんとなく、僕もそうしたかったような気がする。それは、最後だからという気持ちもあったかもしれない。それともこれから堀田をフルという、罪悪感からだったからかもしれない。
「あ~、面白かった。浩介も面白かった?」
「うん。」
僕は、これからのことを考えると、気もそぞろ、全く楽しめてなどいなかった。
「今日が最後だと思うと、込み上げるものがあるよなぁ。ずっと、今日が終わらなければいいのに。」
え?今日が最後?・・・まさか、堀田も薄々勘づいていたの?
「ごめんなさい」
僕は、蚊の鳴くような小さな声で謝った。
「やっぱりそうか・・・」
堀田の顔から、笑顔が消えたのがハッキリとわかった。こんな顔、初めて見たかもしれない。
「いつから、わかってたの?」
「昨日、話しがあるってRINEで言われた時。いつもなら、デートじゃない!って反応なのに、昨日はデートじゃない!って否定しなかったから。」
そうか・・・そんなところで察していたなんて。意外だった。僕の知らない堀田は、案外デリケートだったんだな。
「ごめん」
僕は、それしか言葉が出てこなかった。自分がフラれるかもしれない、という事に気づきながらも、いつものように振る舞っていた堀田の気持ちを考えると、「ごめん」としか言いようが無かった。
いったい、どんな想いと覚悟で堀田は今日来たのだろう?
「いいんだ。謝らないで。押せ押せでいったら、浩介が俺のものになるんじゃないかな、と思っていた俺が悪いんだから。」
しだいに堀田の声が震えて上擦ってきているのがわかる。堀田、泣いているの?
「やばい。最後は笑顔で終わらせるって決めてたのに、目から鼻から水が出て止まらん。」
僕に背を向けて、堀田が無理矢理笑っているのがわかる。
「もう行ってくれ。俺、もう少し散歩でもしてから帰るから。」
気がついたら、僕も声を出して泣いていた。どうして僕は泣いているのだろう?こうなることを、告白された時からずっと望んできたのに。
僕は何度も「ごめん」と繰り返すことしかできなかった。
そして僕は、その場に堀田を残して立ち去った。
堀田と別れてから、僕はどこをどう歩いたのかよく覚えていない。
たぶん、号泣しながら歩いている僕を見て、道ゆく人たちはおかしく思っていたことだろう。
人を傷つけるということは、自分の心もこんなにも痛みを感じるものなのだなぁ。自業自得とはいえ、これは辛すぎます、神様。
僕はあてもなく、涙が止まるまで街をあてもなく彷徨った。
どれくらい寝ただろうか。僕は日差しの眩しさに起こされた。激しい頭痛。体がひどく重い。まるで、何か鉛の錘でも付けているようで、思うように体が動かせない。
堀田は、あれからどうしたのだろう?ちゃんと帰ったのかな?寝られたのかな?堀田が、早く新しい恋をして、今度こそちゃんと幸せになってくれたらいいな。
そんなことを考えながら寝返りをうつと、目の前に海老原先輩の寝顔があった。
え?どして?
そういえば、自分、パン1じゃないか!
先輩も裸で寝てる。こ、これはどういうことなんだ!?
僕は、海老原先輩の腕をどけて、先輩を起こさないように、そっと服を着て荷物を持って部屋を立ち去った。
どうして?何がどうしてこういう状況に陥るの?
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