3 / 13
並木道 帰り道
しおりを挟む
付き合うことになった自分達は、一緒に店を出た。
自分は、誰かに自慢したくて、以前、何度か行ったことのあるゲイバーに彼を連れて行った。
軽くお酒を飲みながら、お互いの事を話した。
彼が今日は、久しぶりに残業が無くて、たまたま来たこととか、仕事が休日出勤したり仕事を持ち帰るほど忙しいとかを話してくれた。
でも、自分がいちばん嬉しかったのは、彼が名前を教えてくれたことだった。
彼の下の名前は、某人気アイドルグループのメンバーと同じだから、Jと呼んでくれと教えてくれた。
店のママにお披露目したら、もう用事は済んだので自分達は帰路についた。
「今夜はずっと一緒にいたいな」
と、彼は言い、俺の部屋に来なよと誘ってくれた。
自分は少々躊躇ったものの、彼と同じ気持ちだったので、お持ち帰りされることにした。
電車から、彼の昔の職場が見えた時、彼は「あそこが俺の職場だった所。今はS市に移転してしまったけどね」
と、自分の勤務先や仕事のことまで教えてくれた。
自分は、まだ会ったばかりなのに、そんなパーソナルな情報まで教えて大丈夫なのかな?と思ったけど、少しずつ彼のことを知ることが嬉しかった。
加えてS市は自分の住んでいる街だったこともあって、自分は勝手に、より一層彼との縁を感じてしまった。
電車を2回乗り換えて、T駅で降りた。
「少し歩くよ」
彼は言った。
その街は、古い団地が立ち並ぶ街で、整然と整備されていた。
駅前から伸びる並木道は、緩いスロープを描いていて、空を見上げると、木々の葉の隙間から、月が優しく街並みを照らしていた。
通りには、自分達2人以外、誰もいない。
まるで、世界に2人ぼっちになったみたいだった。
駅から15分近く歩いただろうか。彼の部屋は、彼の勤務先の社宅だった。
彼の部屋は、ごく一般的な1K。部屋の広さは6畳くらいだったと記憶している。
彼の部屋で最も印象的だったのは、熱帯魚の水槽だった。
自分は、熱帯魚といえばグッピーしか知らないので、また一つ、彼について知ることが嬉しかったし、熱帯魚を飼っている彼が眩しく見えた。
彼は、2人でしたいことを話してくれた。カラオケ行こう、ボーリング行こう、友だちにも紹介するよ。
でも、いちばん嬉しかったのは、旅行に行こうという話しだった。
「どこに行きたい?」と彼に聞かれた自分は、以前テレビで観た紅葉の袋田の滝を思い出して、袋田の滝を見に行きたいと返事をした。
すると彼は「袋田の滝は自分の故郷の近くで、年に4回見頃があるから4回とも案内するよ」と、言ってくれた。
ひとしきりイチャイチャしたところで、2人してシャワーを浴びて、寝ることにした。
自分は、彼氏という存在にずっと抱きしめられて寝るということが、こんなに幸せなことなんだ、と初めて知った。
これまで、人生に絶望して死にたいと思ってばかりの人生だった。
それを彼は、たった一晩で変えてくれた。
自分は、この日、生まれて初めて、生まれてきて良かった、死なずに生きてて良かった、と心底思って眠りについた。
自分は、誰かに自慢したくて、以前、何度か行ったことのあるゲイバーに彼を連れて行った。
軽くお酒を飲みながら、お互いの事を話した。
彼が今日は、久しぶりに残業が無くて、たまたま来たこととか、仕事が休日出勤したり仕事を持ち帰るほど忙しいとかを話してくれた。
でも、自分がいちばん嬉しかったのは、彼が名前を教えてくれたことだった。
彼の下の名前は、某人気アイドルグループのメンバーと同じだから、Jと呼んでくれと教えてくれた。
店のママにお披露目したら、もう用事は済んだので自分達は帰路についた。
「今夜はずっと一緒にいたいな」
と、彼は言い、俺の部屋に来なよと誘ってくれた。
自分は少々躊躇ったものの、彼と同じ気持ちだったので、お持ち帰りされることにした。
電車から、彼の昔の職場が見えた時、彼は「あそこが俺の職場だった所。今はS市に移転してしまったけどね」
と、自分の勤務先や仕事のことまで教えてくれた。
自分は、まだ会ったばかりなのに、そんなパーソナルな情報まで教えて大丈夫なのかな?と思ったけど、少しずつ彼のことを知ることが嬉しかった。
加えてS市は自分の住んでいる街だったこともあって、自分は勝手に、より一層彼との縁を感じてしまった。
電車を2回乗り換えて、T駅で降りた。
「少し歩くよ」
彼は言った。
その街は、古い団地が立ち並ぶ街で、整然と整備されていた。
駅前から伸びる並木道は、緩いスロープを描いていて、空を見上げると、木々の葉の隙間から、月が優しく街並みを照らしていた。
通りには、自分達2人以外、誰もいない。
まるで、世界に2人ぼっちになったみたいだった。
駅から15分近く歩いただろうか。彼の部屋は、彼の勤務先の社宅だった。
彼の部屋は、ごく一般的な1K。部屋の広さは6畳くらいだったと記憶している。
彼の部屋で最も印象的だったのは、熱帯魚の水槽だった。
自分は、熱帯魚といえばグッピーしか知らないので、また一つ、彼について知ることが嬉しかったし、熱帯魚を飼っている彼が眩しく見えた。
彼は、2人でしたいことを話してくれた。カラオケ行こう、ボーリング行こう、友だちにも紹介するよ。
でも、いちばん嬉しかったのは、旅行に行こうという話しだった。
「どこに行きたい?」と彼に聞かれた自分は、以前テレビで観た紅葉の袋田の滝を思い出して、袋田の滝を見に行きたいと返事をした。
すると彼は「袋田の滝は自分の故郷の近くで、年に4回見頃があるから4回とも案内するよ」と、言ってくれた。
ひとしきりイチャイチャしたところで、2人してシャワーを浴びて、寝ることにした。
自分は、彼氏という存在にずっと抱きしめられて寝るということが、こんなに幸せなことなんだ、と初めて知った。
これまで、人生に絶望して死にたいと思ってばかりの人生だった。
それを彼は、たった一晩で変えてくれた。
自分は、この日、生まれて初めて、生まれてきて良かった、死なずに生きてて良かった、と心底思って眠りについた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる