上 下
70 / 131
青春忘却編 

第32話 可憐なる怨念vs純たる狂気

しおりを挟む
 ケンザキはカメラを通してジャン達を監視していた。
「う~ん、宝石の壁が邪魔で見えないね~そうだ~!お前ら~行け~!」
研究室の魔獣達はケンザキの命令に従い、ジャン達を襲撃しに向かう。


【研究所付近】

 白夜の復活とジャンの気絶から10分程、宝石の壁の中で作戦会議が繰り広げられていた。
「ジャン..いつになったら起きるんだよ」
パンプはジャンの顔をペチペチ叩く
「少しは落ち着きなさいよ、ちゃんと生きてるんだからそのうち起きるわよ」
ローズはパンプの背中を叩く。

「分かって...何か来るぞ!多分魔獣だ!」
パンプは魔獣の気配を感じ取り、全身の毛を逆立てる。
「おい!ジャン!早く起きろ!」
パンプはジャンの腹の上で跳ねるがジャンは目を覚さない。

「ここはわたくし達で何とかします!あなたはここでジャンさんを見守っていてください!」
白夜は立ち上がり、黒スーツを破り捨てワイシャツ姿で髪飾りを棍に変化させる。

「オレも戦うぞ!」
「あなたがダメージを受ければジャンさんにもダメージが通ってしまいます、そうすれば本当にジャンさんは死んでしまいますよ」
「そ、そっか...」
パンプはしょんぼりと耳を垂れ下げてジャンの横に座り込む。

「お願いします」
「頼むわよ」
「じゃあ一瞬だけ開けるぞ」
パンプは宝石の壁の一部を一瞬だけ開け、白夜達はそこから外へ飛び出す。

「ローズ、私達はここでジャンさん達に恩を返さなくてはいけないわ。死んでもここは守るわよ!」
「ええ!」
2人の精霊石が激しく輝き出す。

「これは!?共鳴現象?」
「私達にもこの時がきたようね、行くわよ白夜!」
精霊石の輝きと共に2人に変化が起きる。

 白夜の髪は紫色になり、服装がドレスに変化する。ローズは背丈と髪が伸び、より人間に近いフォルムになる。

「げぎゃ!」「ガルル!」「フシュー!」「ヴィー!」 
数えきれぬ程の魔獣が一斉に攻め込んで来る。おそらくこの魔獣達もケンザキによって変貌されられた研究員達なのだろう。

「なんだか重い物が取れたみたいに体が軽いわ」
白夜は棍に呪力を込め、大鎌に変化させて振り回す。

 そして、勢い良く大鎌の刃を地面に突き刺す。
「大怨念...!」
莫大な呪力が鎌を通して地面に流れ込み、地震が起きる。

「がしゃ髑髏どくろ!!」
白夜の背後から恐ろしく巨大な骸骨が地面を割りながら姿を現す。

「ガッシャーン!!」
がしゃ髑髏は雄叫びを上げ、次々と魔獣を食い散らかし、薙ぎ払う。


【研究所】

「う~ん、これも予想外ですね~仕方ありませんあなたにも~行ってもらいま~す」
ケンザキは隊長だった魔獣に更に注射器を打ち込む。
「グルァァ!」
魔獣の目が真っ赤に染まり、筋肉が破裂寸前まで膨張すると壁を破壊して研究所を飛び出してしまった。

「さぁ~これがこの薬品の最終テストですよ~」
ケンザキは不快な笑みを浮かべて白夜達の奮闘を眺める


【研究所付近】

「凄い技ね。私の出番がないわ」
ローズはやれやれとがしゃ髑髏を見上げる。

「ふふっ、ごめんなさい」
「ガシャシャシ...ガシャーーーーン!!」
がしゃ髑髏が満悦そうに笑っていると何者かによって粉々にされた

「何!?」
白夜は鎌を地面から離して構え直し、周囲を警戒する。
「ウボ、ごご...ケンザ...キ...」
砂煙の中から元隊長の姿が現れる。

「白夜!気をつけて!この魔獣、他の奴らとレベルが違う!」
「ええ、そのようね」

「ケンザキ!コロシテヤルー!」
魔獣は雄叫びを上げる。しかし、雄叫びというより悲痛な嘆き声に近かった。

「なっ!?」
「あの魔獣!今喋ったわよ」
「これは一筋縄じゃいかなそうね」
「私に任せて!」
ローズが前に出る。


「白夜、サポートは頼んだわよ」
「ええ!」
白夜はローズに向かって手をかざし、呪力を送りこむ。

呪装力じゅそうりき!」
ローズから景色が歪むほどの不気味な力が溢れ出す。
「コロス、ケンザキ!」
「...遅いわね」
ローズは魔獣の巨大な腕をひらりと躱し、ハイヒールで強烈な蹴りをお見舞いする

「グボオォ!」
魔獣の腕は吹き飛び、紫色の血が飛び散る
「いくわよ!」
ローズはポケットから両手持ちハンマーと2m程の釘を取り出す。

「グボォ!」
釘は魔獣の胸に突き刺さり、体内に呪力が流れ込む。

丑ノ刻うしのこくスマッシャー!!」
ローズの全身全霊の力で振り下ろされたハンマーが釘を打つ。
「ググクググッ!ケン....ザキィ!!」
魔獣の体は釘を中心に爆散する。

「どぉ私の実力は?」
ローズは鼻を高くしながら白夜の横に立つ。
「凄いわ。お疲れ様」
白夜とローズはハイタッチする。

「いやぁ~予想通り役立たずでしたね~」
ケンザキが白夜達に現れた。

「あなた、何者かしら?」
白夜は鎌をケンザキに向ける。

「初めまして~僕ちゃんは~ダイドウ・ケンザキ~超天才科学者で~す」
ケンザキは陽気に挨拶をする。
「ジャン・バーンを~こちらに引き渡してくださ~い」

「ふざけないで!」
白夜はケンザキに斬りかかる。
「はぁ~まぁこうなるとは思っていましたよ」
ケンザキは鎌の刃を掴み、粉々に砕く

「なっ!?」
「白夜!」
ケンザキは白夜の顔を掴もうとした瞬間、飛び出したローズの蹴りがケンザキに炸裂する。

「何ですかその蹴りは?」
力及ばすローズの足はケンザキに掴まれてしまった。
「キャーー!」
ローズの全身に強烈な電流が走る。

「あなた!科学者なのに何故、魔法を!?」
白夜は立ち上がりながら言う。

「何故って~?僕ちゃんは科学者であり魔法使いだからだよ!」
ケンザキは巨大な魔弾を白夜に放つ。

「くっ...」
魔弾は白夜に直撃し、爆発を起こす
「白夜ー!」
白夜はボロボロになり、その場に倒れる

「さぁ次はあなたですよ」
「ひっ...!」
ローズは腰を抜かし、動けなくなる。

「大人しくしていれば苦しまずにすみますよ~あっ!そうだ、呪術っていうのは少し興味がありますね~研究したい...やっぱり苦しみますよ~」
ケンザキはローズに魔弾を放つ。

「イ、イヤ...」
「フン!」
ローズは死を覚悟し流した涙と共に爆発が起こる。

「もう大丈夫だよ」
○÷\<\ふぅ..間に合った
爆風が消え、ローズは恐る恐る目を開けるとそこにはモニーとメルがいた。

「生徒会長さん!」
「どうも」
÷○〒いっくよー!」
メルはモニーの笛に憑依する

「ほぉ、あなたは確か河川敷の男ですねぇ。データはもうありますので帰っていただけると嬉しいですねぇ~大型魔獣を一撃で倒す程のパワー...しかし、僕ちゃんの前では無~力」
ケンザキは火球を放つ。

 火球はモニーに斬られると同時にチープな音が鳴る。
「これ以上、お前を生かしておくとウチの生徒達が危ないんでね、ここで始末させてもらうよ」
モニーは剣を構える。


【宝石の壁の中】

「ジャン、いつになったら起きてくれるんだよ」
パンプはジャンの横に座り、じっとしていると爆発音が聞こえてくる。

「あっちはローズ達が行った方だ!もージャン!早く起きてくれよ!」
パンプはジャンの体を揺さぶる。

「う、パンプ...」
やっとジャンは目を覚ました。

「ジャン!やっと起きた!さぁ行くぞ!」
パンプはジャンの手を引っ張る
「う、うん」
ジャンは言われるがままにパンプと一緒に宝石の壁を飛び出す。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...