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怒涛の入学編 

第9話 僕らの平穏

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 モニーが剣で魔獣を斬りつけると切口から爆音が鳴り始める。
「グキャャャャ!!」
倒れた魔獣の内臓に音の振動が広がり、そのまま死んだ。

 モニーは笛を吹き始める。死んだ魔獣を追悼するかの様に優しい音で河川敷を包む。
「なぁジャン、あの音聴いてたら力が沸いてきたぞ」
笛から広がる癒しの音色がパンプ達を癒していたのだ。
「もしかしたら」
ジャンは何か思いついた。

 笛の音が止まった瞬間、モニーは魔獣の死骸を捌きだした。
「何をしてるんですか会長?」
「魔獣でも命は命だ。無駄にする訳にはいかない。だからこうして、食料にする。そして、避難所へ配りに行く」
モニーは魔獣の肉を無駄なく鱗も綺麗に丁寧に整えていた。

「会長は強くて優しい人なんですね、俺尊敬しますです!」
「ラート、はいらないよ」
モニーにラートは尊敬の眼差しを向ける。

「僕はそんな尊敬されるほどでもないよ、今みたいに暴れる魔獣を殺すことしか出来なかったし」
モニーは照れながらも少し悲しい目をしていた。

「それにしても、無害な魔獣にあんな傷を負わせるなんて酷い奴もいるのですね」
「仕方ないさ、魔獣は一般的に危険な生き物として認知されているからね、それにしてもあの傷どう見ても魔法でできた傷に見えなかったな。学園長に聞いてみようかな」
モニーは妙な傷の部分だけは綺麗に残していた。

「はっ!いけない、腐る前に魔獣の肉を避難所へ届けなくてわ。それじゃまたの機会に、メル行くよー!」
大量の魔獣の肉を背負い、モニーはパンプ達と遊んでいたメルを呼び戻す。

「あの会長待って下さい」
「なんだい?ジャン・バーン君」
「ジャンでいいですよ。あの、会長に町を元に戻すのを手伝って欲しいんです」

「お前そんなことできんのか?」
ザルの問いにジャンはパンプを両手で掲げ上げた。
「戻すのはのは僕じゃなくてパンプだけどね」
「えっへん!」

「でも僕はコレを避難所まで運ばなきゃ...」
「それなら、俺らに任せてください!です」
いらないって」
ラートがレートとザルの肩を組みながら前に出た。
「えっ!?俺もやるのか」
「当然!尊敬する会長のため、俺の協力をしてくれ!頼むぜ」
「会長の為じゃないのかよ...」

「君達がやってくれるのかい、それじゃあ任せるよ」
モニーはザル達の背中をポンと叩いて、ジャンの前に立つ。

「それでジャン君、僕は何をすればいいのかな?」
「会長には笛を吹いてもらいたいです。さっきの曲を」
「笛を吹くことが町を戻すのにどう繋がるんだい?」
モニーは興味深そうにジャンに訊ねる。

「パンプは力を使って物を直すことが出来ます。ですがその力は使う度に結構体力を使っちゃうみたいで...」
「なるほど、それで僕の笛の音でパンプ君の疲れを取ればいいんだね」
「そういうことです」
「いいね!協力するよ」
「わたくしも出来ることは少ないですが手伝います」
「よし、じゃあみんなで町直しといこうじゃないか」
「「「「オー!」」」」
4人は拳を握り腕を挙げる

「私達も行きましょ」
%$&#”=あいあいさー
皆で被災地に戻り、準備を始めた。


「始めるよ」
モニーが笛を吹き始める
「それじゃパンプ頼むよ」
「おう」
パンプは無数の緑の宝石を作り出して町中に飛ばす。
町は優しい音に包まれ、壊れた建物がどんどん修繕されていく。白夜とローズは念力を使い、大量に転がっている魔獣の死骸を一箇所にまとめる。

「お~どんどん町が戻っていくね~」
モニーは感心している。
「もう...本当に...限界」
「お疲れ様、パンプ」
ジャンはぐったりと倒れたパンプを抱える。
「たった1日で町が完全に元に戻るなんて、凄いよ今年の1年生は優秀だな」
僕自身、パンプの力に驚いている。まさか昨日使えるようになったばかりの技で町を直しちゃうなんて。

 町が元に戻っていることに気づいた人々は避難所から町へ戻り始めた。
「さぁ僕らも家に帰ろうか」
「ありがとうございました!」
ジャン達は会長と別れ、家に帰ることにした。


「連絡したとはいえ家の人も心配してるよ」
「そうですわね、流石に帰らなくてはお父様に怒られしまいますわ」
「白夜のお父さん怒るとすごく怖いもんね」
「コラッ!ローズ、人様に言うことではありませんよ」
「あら、ごめんなさい」
ローズは笑顔で軽く謝る。

「なぁジャン、父さんって怖いのか?」
「うーん、怖いときは怖いよ。でも常に子供の事を考えているから怖くなれるだと思う」
「何で子供のために怖くなるんだ?」
「僕もよく分からない、父さんに聞けるんなら聞きたいもんだよ」
白夜はジャンの家庭の事情を察して黙る。

 少しの沈黙人耐えられなくなったのか、ジャンとパンプのお腹が鳴る。
「そういえば何も食べてなかったな」
「オレは食ったけど腹減った」
「パンプは育ち盛りだからな」
「ソダチザカリ?」
「とりあえずいっぱい食べて育てってことだよ」
「アミィの卵焼きをいっぱい食べれるってことだな!」
パンプは嬉しそうに言う

「それではわたくし達はここで」
「バイバイ、ジャンそれとパンプ」
「うん、また今度」
「じゃあなー!バイバーイ」
手を振りながら白夜達を見送るジャンとパンプ。

 僕達は無事に帰宅できた。家には明かりが点いている。既に母さん達が帰ってきていた。
「「ただいまー」」
「おかえりなさいませ、ジャン様、パンプさん」
セバスがジャン達を迎える。

「あれ、母さんは?」
「アミィ様は今料理をしているため、手が離せないようです」
「そっか」
台所の方からアミィがジャン達に声をかける。

「おかえりなさい。今日はお疲れ様、お風呂準備できてるから入っててちょうだい」
2人は風呂に入る。

パンプは体を洗うと勢いよく浴槽に飛び込む。
「なぁジャン、あのセイトカイチョーってやつ凄かったな」
「うん、僕も会長の始めてに見たけどカッコよかったなぁー。見た目も良いし、強くて優しい完璧な人だよ」
「完璧か、オレらもいつかなれるかな?」
「なれるさきっと」

「えへっへ!楽しみだな~...なぁジャンも早く入れよ」
「前も言っただろ、僕は浴槽にあんまり浸かりたくないの」
「ふーん気持ちいいのに」

 ジャンとパンプは風呂を上がり、夕飯を食べる。

「「いたっだきまーす」」
ジャンは肉をパンプは卵焼きをガツガツと食べ始める。

「ところでジャン、あの子とどこまでデートに行ってたの?」
「うぐっ、げっげ、んご...」
母のいきなりの発言にジャンは喉を詰まらせる。
「ジャン様!水でございます」
セバスがすかさずジャンに水を飲ませる。
「うぐっ...ふぅ、ありがとうセバス」
セバスは軽くお辞儀をして自分の席に戻る。

「もう母さん、白夜さんとはまだそういう関係じゃないよ」
「ヘー、まだね」
アミィはニヤッとジャンを見る
「あっ、違うよ、あの今のはホントに違う」
ジャンは必死に弁解をするがどんどん顔が赤くなっていく。
「本当かしら?」
アミィは更にジャンを冷やかす。

「なぁジャン、オレなんか忘れてる気がするんだよ」
パンプはフォークを止め、ジャンに聞く。
「何だよ忘れてることって」
「それが思い出せないんだよ」


【第3避難所】

「ハァハァ、やっと避難所に着いたぞ」
ザル達が避難所へ魔獣の肉を運び終えた。
「ザル様、避難所に人の気配を感じません」
「何!?どういうこった!?」
「おかしいなぁ、朝は避難所に沢山人がいたのに」
レートは避難所の周りを見るが人はいない。それもそうだ、町は完全に直っているのだから。

「おーい、君達ー」
モニーが大急ぎでザル達のもとに走って来た
「ハァハァ、すまない連絡が遅れた」
「会長どうしたんですか?」
「町はもう完全に元に戻っている」
「「「へ?」」」
ザル達はキョトンとしている
「避難していた人達は皆町へ戻った」
「「「エェェーーーーー!!」」」




「まぁいっか」
パンプは再びフォークを動かす。




【同時刻 某国 研究所】
「うーむ、新開発の兵器は威力は期待できんが魔獣を凶暴化させるデータが取れました」
「よし、これをうまく使えばもっと良いデータが取れるぞ」
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