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第2章 敏腕プロデューサーと売れっ子アイドル
17 お出かけ
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どうやら最近の僕も〝思い立ったらすぐ行動〟をモットーとする彼女の生き方には随分と慣れてしまったらしい。
中央線、埼京線、りんかい線と乗り継ぎ、お台場までやって来た僕たちは、まずは動画のネタ探しという名目の下、巨大なショッピングモールを訪れた。
かと思いきや、そのエントランスに掲載されていた最新映画の広告を見たエリカさんが「これ観たい!」と声を弾ませるので、いきなり行き先変更で映画館に入ることになった。いかなる計画性もなく120分もの時間をその場で支払ってしまう気まぐれ振りには相変わらず呆れるが、僕もそれなりに映画を嗜む趣味はあったので、ここは彼女のお転婆に付き合ってやることにした。
鑑賞したのは近日公開されたばかりの恋愛物の作品だった。悲劇的なラストに、シアターを出たばかりの彼女は年甲斐もなく声をあげて泣いていたが、その数分後には「あたし、女優になろっかなー」とへらへら笑っていた。
「女優を目指すなら、アイドルはどうするんですか?」
「そんなのどっちもやればいいじゃん! いるでしょ、そういう人」
「たしかに、その通りですね」
実際にそんな甘い話ではないだろうが、エリカさんがそう言うのであれば適当に相槌を打っておく。どのみち女優というのも一時の気の迷いだろうから。
「ところで、エリカさんはまだアイドルのオーディションを受けるつもりはあるんですか?」
昨今アイドルの定義というのは曖昧だが、今でも王道はやはりどこかの芸能事務所に所属し、ユニットを組んだりCDデビューを果たしたりすることだろう。当初エリカさんが憧れていたアイドルというのも、おそらくそういった存在だ。
それに対し、現在の彼女はどこの事務所にも所属してないただの一般人である。《アイドルウィーチューバー》というのも自称に過ぎない。今でこそウィーチューブ内でそれなりに人気を得た存在になりつつあるが、それは本来彼女が目指していたものとは違うのではないだろうか。
まだ芸能人としてのアイドルを目指すつもりがあるのなら、早いうちに行動したほうがいい。
そう警告するつもりで問いかけたのだが、
「うーん、どうだろうね」
彼女はぼやけた返事をしながら、花に誘われる蝶のようにスルスルと近くの化粧品店に入っていった。彼女の場合はバナナに釣られたサルと喩えたほうが適切か。僕も一応同伴者として後をついていく。
「もちろんアイドルに憧れる気持ちはあるけど、今のままウィーチューバーとしてやっていくのもアリって気もするのよね。あ、このリップかわいい!」
「両方続けていくという選択肢はないのですか? 必ずしもどちらか一方に絞らなくてはならないと決まっているわけではないでしょう」
「そうだけどさー。でも、アイドルになると自由な時間は減っちゃうでしょ?」
たしかにアイドルとして芸能事務所などと契約すれば、何でも自由気ままにというわけにはいかなくなるだろう。事務所によってはウィーチューブのように個人的な芸能活動を制約している場合もある。
「あたしは今みたいにコーダイと二人で気ままにやってるのが楽しいんだ」
エリカさんは店内の陳列棚に並んでいる化粧品を物色しながら言った。
そうですか、と僕は相槌だけ返した。エリカさんがどのような生き方を選ぼうが、それは彼女の自由だ。僕が考慮すべき事柄ではない。
それに、自分とコンビでやっていて楽しいと言われれば悪い気はしなかった。
それからしばらく店内を見て回ったが、結局エリカさんは何も買わずに店を出た。
「よかったのですか? 何も買わなくて」
店の物を見てあれもカワイイこれもカワイイと絶賛ばかりしていたわりには一つも手に取らなかったエリカさんに疑問を呈すると、
「いいのよ! 買い物ってのはほしいほしいって言ってるうちが一番楽しいんだから!」
横を歩く彼女はとても満足そうな笑みを浮かべて答えた。僕には存在しない感性だが、1年間の付き合いでそれなりにエリカさんという人間を理解した僕は「なるほど」と紳士的に納得の意を示した。
「コーダイも何かほしい物ないの? せっかくだし、付き合うわよ」
尋ねられたので考えてはみるが、案の定、何も思い浮かばなかった。
「いいえ、僕は特に」
「やっぱり……ほんと君ってお金持ちのくせに物を欲しがらないわよね」
この1年で彼女のほうも僕という人間を理解するようになったらしい。もっとも、僕の物欲の無さは自宅のあのフリールームを一目見れば誰でも分かるだろう。
今時の文化を知らずに育ってきたせいか、自分が物に執着がないという自覚はある。そもそも世の男子高校生がどんなものに興味を持つものなのかもよく分かってない。スニーカーとか? ヘッドホンとか?
そんなことを考えていると、ひとつだけ、今の自分に必要なものがあることを思い出した。
「そういえば、近々ちょうど衣類を新調するつもりでした。今持っている服がだいぶ小さくなってきたので」
もちろん実際には衣服が縮んでいるのではなく、僕が大きくなっているのだ。
遅れてやって来た成長期のために、高2の僕は今まさに伸び盛りだった。おかげで去年の秋頃に買った服もすでにサイズが合わなくなっている。
横を歩くエリカさんが、自分より少し高い位置にある僕の顔を見た。
「たしかに……てゆーか君、そんなに背高かったっけ」
「毎週会っていたでしょう」
「そうだけど。ねえ、この1年でいくら伸びたのよ?」
「10センチくらいだと思います」
「ひゃあー、すごいわね! 出会ったばかりの頃はあたしとそんなに変わらなかったのに」
エリカさんは僕の1年間の急成長ぶりに驚いたようだが、僕はそんなことよりも、彼女といつの間にかこうしてプライベートで出かける関係性にまで発展していたことのほうが驚きだ。
1年前、突如難癖を付けて家まで押し掛けてきた彼女が、動物園のサルみたいだと思っていた彼女が、ウィーチューブ活動をしているうちにまさかこれほど身近な人間になっているとは、世の中何が起こるか分からないものだ。
「よし、それなら今日はあたしが見繕ってあげる! さあ行こ!」
ノリノリなエリカさんに腕を引っ張られ、僕は最寄りのアパレルショップへと連れ込まれた。
品選びはもっぱらエリカさんに任せて良いとのことだったので、僕はしばし店内をぶらぶらと散策していることにした。
思えば、こうしてデパートの店を散策するのも僕には新鮮な体験だ。昔から僕は外に出かける機会が滅多になかったせいで、衣服を含め、大抵の買い物はネット通販で済ませていた。
ネットで品物を探している時は主に自分の興味関心のある物しか目に映らないが、しかしながら実際にこうして自分の足で店内を巡っていると実に様々な商品が視界に入ってくる。この衣服は一体どんな効用があるのだろうか、どんなことに活かせるだろうか、そんな商業者視点で物を眺めるのはおもしろい。何事もマシンに検索させたほうが時間の節約にはなるだろうが、自分の頭や体を使って調べるのも意外な発見があったりして興味深いものだ。
ディスプレイされている紺色の中折ハットを眺めながら、こういうのは自分にも似合うのだろうか——そんなことを考えていると、しばらくしてエリカさんが僕を見つけて声をかけてきた。
「はい、ちょっとこれ着てみて。カバン預かってあげるから」
要望どおり僕は肩から提げていたカバンを彼女に渡し、代わりに受け取った白地のシャツと紺色のジャケットを、いま着ている黒シャツの上から重ねて着た。
「うん、イイ感じ! コーダイはやっぱりこういうインテリ系なのが似合うわね!」
エリカさんは僕の全身を見渡し、満足そうな笑みを浮かべながら頷いた。はなからオシャレに無関心な僕としては何も不満はなかったし、サイズもこれでピッタリだった。
「では、このセットを5点ほど買いましょう」
「だからなんでそうなるのよっ!」
「……なにか問題でも?」
「いや、問題っていうか! 前もそうだったけど、同じ服を何枚もまとめ買いするなんて絶対におかしいから! 普通はむしろ色とか柄とか今あるやつと被らないように気をつけるもんでしょ!」
「そうでしょうか。 同じ服を揃えておいたほうが、いちいち悩まずに済むので便利だと思いますが」
人間は何か物事を決断するたびに脳のエネルギーを消費している。脳のエネルギーとは有限であり、そんな貴重なリソースを服選びなどに費やすのは勿体ないことだ。ゆえに僕もかの有名な実業家スティーブ・ジョブズ氏のように、外に出る時にはいつも同じ格好をするようにしていた。
——という持論を去年の秋頃にもエリカさんには話した記憶がある。
「コーダイは服を買う前に、その拗れたファッションセンスを叩き直さないとダメみたいね」
その時と同じような溜め息を見せながら、エリカさんは僕に手を差し伸べた。脱いでくれ、という合図だと分かったので、僕は試着していたシャツとジャケットを脱ぎ、預かってもらっていたカバンと交換した。エリカさんは受け取った衣類を手際よく折り畳んでいく。年齢が近い異性からこのように甲斐甲斐しく世話を焼かれるというのは、なんだか照れ臭い気持ちになるものだ。
エリカさんに折り畳んでもらった品物を受け取ってレジに向かおうとすると、
「そういえば君、さっきここの帽子を見てたみたいだけど?」
先ほどまで僕がいた帽子売り場の前に立っていたエリカさんが尋ねてきた。もう見なくて良いのか? という意味だろう。僕はちらりと振り返り、さっき見ていた紺色の中折ハットを一瞥してから答えた。
「いえ、良いんです。別に買おうと思っていたわけではないので」
「ふーん……」
そう言いながらその場で帽子鑑賞を続けているエリカさんにひとまず背を向け、僕は彼女に見繕ってもらった品物を持ってレジへ向かった。
中央線、埼京線、りんかい線と乗り継ぎ、お台場までやって来た僕たちは、まずは動画のネタ探しという名目の下、巨大なショッピングモールを訪れた。
かと思いきや、そのエントランスに掲載されていた最新映画の広告を見たエリカさんが「これ観たい!」と声を弾ませるので、いきなり行き先変更で映画館に入ることになった。いかなる計画性もなく120分もの時間をその場で支払ってしまう気まぐれ振りには相変わらず呆れるが、僕もそれなりに映画を嗜む趣味はあったので、ここは彼女のお転婆に付き合ってやることにした。
鑑賞したのは近日公開されたばかりの恋愛物の作品だった。悲劇的なラストに、シアターを出たばかりの彼女は年甲斐もなく声をあげて泣いていたが、その数分後には「あたし、女優になろっかなー」とへらへら笑っていた。
「女優を目指すなら、アイドルはどうするんですか?」
「そんなのどっちもやればいいじゃん! いるでしょ、そういう人」
「たしかに、その通りですね」
実際にそんな甘い話ではないだろうが、エリカさんがそう言うのであれば適当に相槌を打っておく。どのみち女優というのも一時の気の迷いだろうから。
「ところで、エリカさんはまだアイドルのオーディションを受けるつもりはあるんですか?」
昨今アイドルの定義というのは曖昧だが、今でも王道はやはりどこかの芸能事務所に所属し、ユニットを組んだりCDデビューを果たしたりすることだろう。当初エリカさんが憧れていたアイドルというのも、おそらくそういった存在だ。
それに対し、現在の彼女はどこの事務所にも所属してないただの一般人である。《アイドルウィーチューバー》というのも自称に過ぎない。今でこそウィーチューブ内でそれなりに人気を得た存在になりつつあるが、それは本来彼女が目指していたものとは違うのではないだろうか。
まだ芸能人としてのアイドルを目指すつもりがあるのなら、早いうちに行動したほうがいい。
そう警告するつもりで問いかけたのだが、
「うーん、どうだろうね」
彼女はぼやけた返事をしながら、花に誘われる蝶のようにスルスルと近くの化粧品店に入っていった。彼女の場合はバナナに釣られたサルと喩えたほうが適切か。僕も一応同伴者として後をついていく。
「もちろんアイドルに憧れる気持ちはあるけど、今のままウィーチューバーとしてやっていくのもアリって気もするのよね。あ、このリップかわいい!」
「両方続けていくという選択肢はないのですか? 必ずしもどちらか一方に絞らなくてはならないと決まっているわけではないでしょう」
「そうだけどさー。でも、アイドルになると自由な時間は減っちゃうでしょ?」
たしかにアイドルとして芸能事務所などと契約すれば、何でも自由気ままにというわけにはいかなくなるだろう。事務所によってはウィーチューブのように個人的な芸能活動を制約している場合もある。
「あたしは今みたいにコーダイと二人で気ままにやってるのが楽しいんだ」
エリカさんは店内の陳列棚に並んでいる化粧品を物色しながら言った。
そうですか、と僕は相槌だけ返した。エリカさんがどのような生き方を選ぼうが、それは彼女の自由だ。僕が考慮すべき事柄ではない。
それに、自分とコンビでやっていて楽しいと言われれば悪い気はしなかった。
それからしばらく店内を見て回ったが、結局エリカさんは何も買わずに店を出た。
「よかったのですか? 何も買わなくて」
店の物を見てあれもカワイイこれもカワイイと絶賛ばかりしていたわりには一つも手に取らなかったエリカさんに疑問を呈すると、
「いいのよ! 買い物ってのはほしいほしいって言ってるうちが一番楽しいんだから!」
横を歩く彼女はとても満足そうな笑みを浮かべて答えた。僕には存在しない感性だが、1年間の付き合いでそれなりにエリカさんという人間を理解した僕は「なるほど」と紳士的に納得の意を示した。
「コーダイも何かほしい物ないの? せっかくだし、付き合うわよ」
尋ねられたので考えてはみるが、案の定、何も思い浮かばなかった。
「いいえ、僕は特に」
「やっぱり……ほんと君ってお金持ちのくせに物を欲しがらないわよね」
この1年で彼女のほうも僕という人間を理解するようになったらしい。もっとも、僕の物欲の無さは自宅のあのフリールームを一目見れば誰でも分かるだろう。
今時の文化を知らずに育ってきたせいか、自分が物に執着がないという自覚はある。そもそも世の男子高校生がどんなものに興味を持つものなのかもよく分かってない。スニーカーとか? ヘッドホンとか?
そんなことを考えていると、ひとつだけ、今の自分に必要なものがあることを思い出した。
「そういえば、近々ちょうど衣類を新調するつもりでした。今持っている服がだいぶ小さくなってきたので」
もちろん実際には衣服が縮んでいるのではなく、僕が大きくなっているのだ。
遅れてやって来た成長期のために、高2の僕は今まさに伸び盛りだった。おかげで去年の秋頃に買った服もすでにサイズが合わなくなっている。
横を歩くエリカさんが、自分より少し高い位置にある僕の顔を見た。
「たしかに……てゆーか君、そんなに背高かったっけ」
「毎週会っていたでしょう」
「そうだけど。ねえ、この1年でいくら伸びたのよ?」
「10センチくらいだと思います」
「ひゃあー、すごいわね! 出会ったばかりの頃はあたしとそんなに変わらなかったのに」
エリカさんは僕の1年間の急成長ぶりに驚いたようだが、僕はそんなことよりも、彼女といつの間にかこうしてプライベートで出かける関係性にまで発展していたことのほうが驚きだ。
1年前、突如難癖を付けて家まで押し掛けてきた彼女が、動物園のサルみたいだと思っていた彼女が、ウィーチューブ活動をしているうちにまさかこれほど身近な人間になっているとは、世の中何が起こるか分からないものだ。
「よし、それなら今日はあたしが見繕ってあげる! さあ行こ!」
ノリノリなエリカさんに腕を引っ張られ、僕は最寄りのアパレルショップへと連れ込まれた。
品選びはもっぱらエリカさんに任せて良いとのことだったので、僕はしばし店内をぶらぶらと散策していることにした。
思えば、こうしてデパートの店を散策するのも僕には新鮮な体験だ。昔から僕は外に出かける機会が滅多になかったせいで、衣服を含め、大抵の買い物はネット通販で済ませていた。
ネットで品物を探している時は主に自分の興味関心のある物しか目に映らないが、しかしながら実際にこうして自分の足で店内を巡っていると実に様々な商品が視界に入ってくる。この衣服は一体どんな効用があるのだろうか、どんなことに活かせるだろうか、そんな商業者視点で物を眺めるのはおもしろい。何事もマシンに検索させたほうが時間の節約にはなるだろうが、自分の頭や体を使って調べるのも意外な発見があったりして興味深いものだ。
ディスプレイされている紺色の中折ハットを眺めながら、こういうのは自分にも似合うのだろうか——そんなことを考えていると、しばらくしてエリカさんが僕を見つけて声をかけてきた。
「はい、ちょっとこれ着てみて。カバン預かってあげるから」
要望どおり僕は肩から提げていたカバンを彼女に渡し、代わりに受け取った白地のシャツと紺色のジャケットを、いま着ている黒シャツの上から重ねて着た。
「うん、イイ感じ! コーダイはやっぱりこういうインテリ系なのが似合うわね!」
エリカさんは僕の全身を見渡し、満足そうな笑みを浮かべながら頷いた。はなからオシャレに無関心な僕としては何も不満はなかったし、サイズもこれでピッタリだった。
「では、このセットを5点ほど買いましょう」
「だからなんでそうなるのよっ!」
「……なにか問題でも?」
「いや、問題っていうか! 前もそうだったけど、同じ服を何枚もまとめ買いするなんて絶対におかしいから! 普通はむしろ色とか柄とか今あるやつと被らないように気をつけるもんでしょ!」
「そうでしょうか。 同じ服を揃えておいたほうが、いちいち悩まずに済むので便利だと思いますが」
人間は何か物事を決断するたびに脳のエネルギーを消費している。脳のエネルギーとは有限であり、そんな貴重なリソースを服選びなどに費やすのは勿体ないことだ。ゆえに僕もかの有名な実業家スティーブ・ジョブズ氏のように、外に出る時にはいつも同じ格好をするようにしていた。
——という持論を去年の秋頃にもエリカさんには話した記憶がある。
「コーダイは服を買う前に、その拗れたファッションセンスを叩き直さないとダメみたいね」
その時と同じような溜め息を見せながら、エリカさんは僕に手を差し伸べた。脱いでくれ、という合図だと分かったので、僕は試着していたシャツとジャケットを脱ぎ、預かってもらっていたカバンと交換した。エリカさんは受け取った衣類を手際よく折り畳んでいく。年齢が近い異性からこのように甲斐甲斐しく世話を焼かれるというのは、なんだか照れ臭い気持ちになるものだ。
エリカさんに折り畳んでもらった品物を受け取ってレジに向かおうとすると、
「そういえば君、さっきここの帽子を見てたみたいだけど?」
先ほどまで僕がいた帽子売り場の前に立っていたエリカさんが尋ねてきた。もう見なくて良いのか? という意味だろう。僕はちらりと振り返り、さっき見ていた紺色の中折ハットを一瞥してから答えた。
「いえ、良いんです。別に買おうと思っていたわけではないので」
「ふーん……」
そう言いながらその場で帽子鑑賞を続けているエリカさんにひとまず背を向け、僕は彼女に見繕ってもらった品物を持ってレジへ向かった。
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