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【33話】ロイルの冒険者としての腕前を拝見することになりました
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「さあ、これで足元も天井も、ちょっと先の暗闇まで、全部見通せるよ」
特に気にした風もなく、ロイルは灯りをもたらす魔道具をノアに渡す。
洞窟内を先行するのはロイルだが、自分よりもノアを優先させているのが分かる。
「ロイルは大丈夫なの?」
「僕にはこれがあるからね」
ノアの問いに、ロイルは自分の瞳を指さし微笑む。
その目は【魔眼】によって白に染まっていた。
「【魔眼】を使えば、全ての魔力の流れを把握することが出来る。つまり、不意打ちは絶対に喰らわないってこと」
暗闇の奥や岩陰に潜み、冒険者の様子を窺う魔物が居たとしても、その魔物たちは体内に魔石を持っており、魔力によって生きている。つまり、【魔眼】で魔力の流れを読み取り、どこにいるのか把握することが可能だ。
危険な場所に足を踏み入れることなく、安全にロックアントを倒せるのだ。
「……止まって。少し離れた場所に魔物を見つけた」
躊躇せずに洞窟内を進むロイルの背を追いかけるノアは、その言葉に立ち止まる。
どうやら獲物を見つけたらしい。
「灯りを塞いで」
「うん」
言われたとおりに、ノアは魔道具の蓋をする。
すると先ほどまで明るかった洞窟内は真っ暗闇へと姿を変える。だが、ロイルにとってこの状況は何の問題もない。
周辺にいる魔物の数は一体のみ。【魔眼】を欺くことは決して出来ない。
灯りを消し、敵が近づいていることを悟らせず、ノアをその場に待機させた後、ロイルはゆっくりと慎重に暗闇の中を進む。そして、
「――ッ!!」
何かが弾ける音が、洞窟内に響いた。
「……ノア、灯りを」
「ッ、うん!」
遠くからロイルの声を耳にして、ノアは再度魔道具の蓋を外し、洞窟内に灯りを生み出す。
それから急いでロイルの許へと駆け寄る。
「これで討伐完了だね」
ロイルは、討伐対象であるロックアントの首を手に持っていた。
足元には、ぐちゃぐちゃになった胴体部がある。
「どうやって倒したの?」
「うーん……引かない?」
「え? 引くようなことしたの?」
「普通の戦い方じゃないからなあ……」
暗闇での攻防だったので、ノアはロイルがどのように戦い、ロックアントを倒したのか見ていない。
胴体部がぐちゃぐちゃになっているが、一体どうすればこのような状態にすることが出来るのか。
ロイルが持つ得物は、短剣のみ。盾は持たず、動きやすさに重きを置いていた。
しかしその得物だけでは、短時間でロックアントの胴体部を壊すに至らないだろう。
「ロイルが大丈夫なら、教えてほしいな」
二人は背を任せ合う仲間だ。教えてくれるのであれば、その全てを受け入れるつもりだ。
だからノアは訊ねた。
「……【魔眼】で弄ったんだ」
特に気にした風もなく、ロイルは灯りをもたらす魔道具をノアに渡す。
洞窟内を先行するのはロイルだが、自分よりもノアを優先させているのが分かる。
「ロイルは大丈夫なの?」
「僕にはこれがあるからね」
ノアの問いに、ロイルは自分の瞳を指さし微笑む。
その目は【魔眼】によって白に染まっていた。
「【魔眼】を使えば、全ての魔力の流れを把握することが出来る。つまり、不意打ちは絶対に喰らわないってこと」
暗闇の奥や岩陰に潜み、冒険者の様子を窺う魔物が居たとしても、その魔物たちは体内に魔石を持っており、魔力によって生きている。つまり、【魔眼】で魔力の流れを読み取り、どこにいるのか把握することが可能だ。
危険な場所に足を踏み入れることなく、安全にロックアントを倒せるのだ。
「……止まって。少し離れた場所に魔物を見つけた」
躊躇せずに洞窟内を進むロイルの背を追いかけるノアは、その言葉に立ち止まる。
どうやら獲物を見つけたらしい。
「灯りを塞いで」
「うん」
言われたとおりに、ノアは魔道具の蓋をする。
すると先ほどまで明るかった洞窟内は真っ暗闇へと姿を変える。だが、ロイルにとってこの状況は何の問題もない。
周辺にいる魔物の数は一体のみ。【魔眼】を欺くことは決して出来ない。
灯りを消し、敵が近づいていることを悟らせず、ノアをその場に待機させた後、ロイルはゆっくりと慎重に暗闇の中を進む。そして、
「――ッ!!」
何かが弾ける音が、洞窟内に響いた。
「……ノア、灯りを」
「ッ、うん!」
遠くからロイルの声を耳にして、ノアは再度魔道具の蓋を外し、洞窟内に灯りを生み出す。
それから急いでロイルの許へと駆け寄る。
「これで討伐完了だね」
ロイルは、討伐対象であるロックアントの首を手に持っていた。
足元には、ぐちゃぐちゃになった胴体部がある。
「どうやって倒したの?」
「うーん……引かない?」
「え? 引くようなことしたの?」
「普通の戦い方じゃないからなあ……」
暗闇での攻防だったので、ノアはロイルがどのように戦い、ロックアントを倒したのか見ていない。
胴体部がぐちゃぐちゃになっているが、一体どうすればこのような状態にすることが出来るのか。
ロイルが持つ得物は、短剣のみ。盾は持たず、動きやすさに重きを置いていた。
しかしその得物だけでは、短時間でロックアントの胴体部を壊すに至らないだろう。
「ロイルが大丈夫なら、教えてほしいな」
二人は背を任せ合う仲間だ。教えてくれるのであれば、その全てを受け入れるつもりだ。
だからノアは訊ねた。
「……【魔眼】で弄ったんだ」
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