上 下
22 / 42

【22話】ご飯です。そのあとは勿論、同じ部屋で一緒に……寝るんですか!?

しおりを挟む
 もぐもぐもぐ。
 運ばれてきた料理を、ロイルは美味しそうに平らげていく。
 その幸せそうな顔を見ながら、ノアももそもそと食べる。

「美味しいね、ノア」
「そ、そうですね……」

 味など、全く分からない。分かるはずがない。
 それよりも何よりも、ノアはこの後のことが気になって仕方ないからだ。

「ふう、ごちそうさま」

 お腹いっぱい食べて満足したのか、ロイルは幸せそうな顔をしている。
 ロイルは元王族と言っていたが、異性と同じ部屋に寝泊まりしたことはあるのだろうか。
 そんなことを考えてみるが、勿論本人に聞いてみなければ分かるはずがない。そして当然のことながら、聞けるはずもない。

「じゃあ、ギルドに戻ろうか」
「はぅ、はい……」

 お店から出た二人は、ギルドへの道を戻っていく。
 今晩泊まるであろう宿部屋に入ってしまえば、二人きりになる。それから朝になるまで、他の誰かが邪魔をすることもないだろう。

 緊張しすぎて眠れないかもしれないが、その時はどうすればいいのだろうか、と頭を悩ませるノアだが、残念ながら答えが出る前にギルドへと着いてしまった。

「お仕事お疲れ様」
「おう、ありがとさん」

 受付に立つ小太りの職員に挨拶をした後、ノアとロイルの二人はギルドの奥に併設された宿部屋へと足を延ばし、用意された部屋の扉を開く。

「おおー、結構きれいな部屋だね」

 しっかりと掃除しているのだろう。ギルドの宿部屋は、二人の目には綺麗に映っている。

「ここで、ロイルと一緒に……」

 今日を無事乗り越えることが出来たとしても、ロイルとパーティーを組んでいる限り、明日も明後日も同じように緊張を強いられることになる。
 これは予想外の事態が続きそうだ、とノアは眉をひそめた。

「ベッドが二つに、机と椅子もあるね」
「はい……うっ」

 言われて室内に目を向けるノアは、二つのベッドがくっつけられていることに気付いてしまった。これではベッドが二つある意味がないではないか、と心の中で叫んだ。
 例えロイルが意識していなくても、真横で寝られては、ノアは快眠出来そうにない。

「あわわわ……どうすれば……ッ」

 緊張の糸が切れることなく、ずっと表情がこわばっている。
 そんなノアの様子を見やり、ロイルは察したのだろう。くすりと笑った後、ノアの肩に手を置く。

「緊張しないでいい。僕たちは仲間なんだから、安心して眠っていいよ」
「ッ、ご、ごめんなさい!」

 何に謝ったのか、ノアは自分でもよく分かっていない。だが、それでもその言葉をロイルにぶつけて、そしてまたロイルがゆっくりと頷いたことで、ほんの少しだけ緊張がほぐれたようだった。

 二人は着替えを持ち、一旦部屋の外に出る。ギルドの浴場で湯浴みする為だ。

「じゃあ、また部屋で」
「はい……!」

 部屋に戻るまでに、心を落ち着かせよう。
 そう思うノアだったが、まずはのぼせないように気を付ける必要がありそうだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

生まれたときから今日まで無かったことにしてください。

はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。 物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。 週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。 当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。 家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。 でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。 家族の中心は姉だから。 決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。 ………… 処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。 本編完結。 番外編数話続きます。 続編(2章) 『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。 そちらもよろしくお願いします。

全てを諦めた令嬢の幸福

セン
恋愛
公爵令嬢シルヴィア・クロヴァンスはその奇異な外見のせいで、家族からも幼い頃からの婚約者からも嫌われていた。そして学園卒業間近、彼女は突然婚約破棄を言い渡された。 諦めてばかりいたシルヴィアが周りに支えられ成長していく物語。 ※途中シリアスな話もあります。

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。

婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。

鈴木べにこ
恋愛
 幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。  突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。  ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。 カクヨム、小説家になろうでも連載中。 ※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。 初投稿です。 勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و 気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。 【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】 という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。

魔力無しの私に何の御用ですか?〜戦場から命懸けで帰ってきたけど妹に婚約者を取られたのでサポートはもう辞めます〜

まつおいおり
恋愛
妹が嫌がったので代わりに戦場へと駆り出された私、コヨミ・ヴァーミリオン………何年も家族や婚約者に仕送りを続けて、やっと戦争が終わって家に帰ったら、妹と婚約者が男女の営みをしていた、開き直った婚約者と妹は主人公を散々煽り散らした後に婚約破棄をする…………ああ、そうか、ならこっちも貴女のサポートなんかやめてやる、彼女は呟く……今まで義妹が順風満帆に来れたのは主人公のおかげだった、義父母に頼まれ、彼女のサポートをして、学院での授業や実技の評価を底上げしていたが、ここまで鬼畜な義妹のために動くなんてなんて冗談じゃない……後々そのことに気づく義妹と婚約者だが、時すでに遅い、彼女達を許すことはない………徐々に落ちぶれていく義妹と元婚約者………主人公は 主人公で王子様、獣人、様々な男はおろか女も惚れていく………ひょんな事から一度は魔力がない事で落されたグランフィリア学院に入学し、自分と同じような境遇の人達と出会い、助けていき、ざまぁしていく、やられっぱなしはされるのもみるのも嫌だ、最強女軍人の無自覚逆ハーレムドタバタラブコメディここに開幕。

パーティー中に婚約破棄された私ですが、実は国王陛下の娘だったようです〜理不尽に婚約破棄した伯爵令息に陛下の雷が落ちました〜

雪島 由
恋愛
生まれた時から家族も帰る場所もお金も何もかもがない環境で生まれたセラは幸運なことにメイドを務めていた伯爵家の息子と婚約を交わしていた。 だが、貴族が集まるパーティーで高らかに宣言されたのは婚約破棄。 平民ごときでは釣り合わないらしい。 笑い者にされ、生まれた環境を馬鹿にされたセラが言い返そうとした時。パーティー会場に聞こえた声は国王陛下のもの。 何故かその声からは怒りが溢れて出ていた。

私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜
恋愛
私の婚約も勉強も、常に邪魔をしてくるおバカさんたちにはもうウンザリですの! 私は私で好き勝手やらせてもらうので、そちらもどうぞ自滅してくださいませ。

処理中です...