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【105】

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 その日の夜。
 ナーナルとエレンは、プレオープンに何を提供するのか、メニューを改めて確認していた。
 季節の果実水と西の国の茶葉を用いたお茶、半分に切ったトーストに味付け、パンはどこから調達するのか。飲み物の種類を増やすために王都産の茶葉を仕入れるのも悪くない。

「ロニカが言っていたが、目玉焼きはいいのか?」

 言われて、食べ物のメニューに目を通す。あまり多くはないので、ナーナルの目玉焼きも候補の一つに入ってくる。

「ロニカ限定メニューにするなら有りかもしれないわね」
「それは大喜びだな」
「ええ、きっと毎日食べに来てくれるわ」

 というのは冗談として、朝の時間帯限定のメニューとして出すのであれば、それもおかしくはないだろう。だとすれば、トーストと一緒に提供するか、それともいっそのことトーストの上に乗せてしまうのも面白い。

「茶菓子とデザートの用意もしないとな」
「そうよね、みんなに喜んでもらえるようなものをメニューにしたいわ」

 エレンに同調し、ナーナルが頷く。

「うーん、考え出すと止まらなくなりそう」

 楽しくてたまらない。
 時間さえあれば幾らでも頭を悩ませてしまいそうだ。

「エレン。明日はお茶屋さんとパン屋さんを巡るのはどうかしら」
「いいんじゃないか? それと、時間が余れば食器類の調達もしたいところだな」
「ああっ、それもあったわね! ……もう、やることが多すぎて困ってしまうわ」

 そう言いつつも、ナーナルの表情は明るい。これは嬉しい悲鳴と言えるだろう。

「まあそうだな、根を詰めても良い案が出るとは限らない。今日はもう休んだらどうだ」

 エレンがお茶を淹れてくれる。
 ありがとうと言い、ナーナルは一息つく。

「それじゃあ、あとちょっとだけ考えたら寝るわ」

 ちょっとと言ったが、止めなければナーナルはいつまでもメニューと睨めっこするはずだ。

「見張っておくからな」
「あら。わたしのこと、信用していないの?」
「信用しているさ。好きなことに対して周りが見えなくなるところとか、な」

 そう言って、エレンが隣に座る。どうやら一緒に考えてくれるらしい。
 だがそれは同時に、エレンの睡眠時間を減らすことに繋がる。

「ズルい手ね」
「ナーナルが相手だからな。これぐらいはしないとな」

 仕方あるまい、とナーナルは肩を竦める。

「なるべく早く寝るようにするから、協力してちょうだいね」

 だからナーナルは頭を下げ、そして二人で頭を悩ませるのだった。
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