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【62】貴族の依頼は金になる
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さすがは、貴族直々の依頼だった。報酬の桁が二つも違う。
これだけで暫く遊んで暮らすことができるだろう、とロックが口の端を上げる。
「次も狙うぞ」
「絶対にしないからね」
しっかりと釘を刺す。
どんなに大金を稼ぐことができたとしても、根鼠駆除は懲り懲りだ。
地下通路に巣食っていた根鼠を全部駆除したとき、わたしが持っていたフライパンは壁と根鼠を叩きすぎたせいで見るも無残な形になっていた。オマケに、何か色々とくっ付いているし……。
「仕事のあとは飯が上手い」
「根鼠駆除のあとで、よく食べられるわね……」
そんなわたしの主張を適当にあしらい、ついでに回収した魔石も大量だったので、ロックは機嫌がいい。
今はギルド内の併設食堂で昼食をとっている。
ただ、根鼠駆除の直後なので、正直言って食欲がない。
全く影響なく腹を満たすロックの姿を見て、これが冒険者として慣れることなのかと思った。
「ところで、午後はどうするの?」
食事が片付いた頃、わたしはロックに訊ねてみた。
今日の仕事は根鼠駆除だけで終わりだと思っていたけど、予想よりも早く終わった。
だからこうしてのんびりとご飯を食べることができていた。
「そうだな、時間はまだあるから、もう一つ依頼を受けてみるか」
食器を片付け、ロックとわたしは再び依頼掲示板の前へと移動する。朝一番のときは依頼書を見るのもままならなかったけど、この時間は人の数も疎らだ。楽な依頼は残っていないだろうけど、その代わりにじっくりと確認することができそうだ。
「メル、今度はお前が選んでいいぞ」
「え、本当に?」
「ああ。但し、自分の実力で達成できると思うものを探すんだ」
わたしの実力で、達成できそうな依頼を……。
「ええ、分かったわ」
依頼の数は、それこそ数え切れないほどある。
依頼掲示板には次から次へと新しい依頼書が貼られる。
この依頼書の数だけ、依頼主がいる。困っている人がいるということだ。
その中でも、今のわたしが挑戦できそうな依頼といえば……。
「……これにしようかしら」
一枚の依頼書を手に取った。
それをロックに渡して確認してもらう。すると、
「理由を聞こう」
まずはわたしの考えを聞くつもりだ。
だからわたしは、悩んだ末にこれを選んだわけを話すことにした。
「その、……名前がほら、植物でしょう? だから動かなそうというか、根鼠のようなタイプなのかと思って、倒すのも難しくないのかなって……ダメ?」
わたしが手にした依頼書は『ホワイト・トレント』の討伐と書かれてあった。
ロックはわたしの考えを耳にして、口元を緩める。
「良い案だ。メルの想像通り、こいつはその場から動くことはない。反撃はしてくるが、俺も居るから問題ない」
「それじゃあ……」
「ああ、次はこの依頼を受けよう」
ロックの同意を得て、わたしは嬉しくなる。
根鼠駆除でげんなりしたのが嘘のように、今は元気いっぱいだった。
これだけで暫く遊んで暮らすことができるだろう、とロックが口の端を上げる。
「次も狙うぞ」
「絶対にしないからね」
しっかりと釘を刺す。
どんなに大金を稼ぐことができたとしても、根鼠駆除は懲り懲りだ。
地下通路に巣食っていた根鼠を全部駆除したとき、わたしが持っていたフライパンは壁と根鼠を叩きすぎたせいで見るも無残な形になっていた。オマケに、何か色々とくっ付いているし……。
「仕事のあとは飯が上手い」
「根鼠駆除のあとで、よく食べられるわね……」
そんなわたしの主張を適当にあしらい、ついでに回収した魔石も大量だったので、ロックは機嫌がいい。
今はギルド内の併設食堂で昼食をとっている。
ただ、根鼠駆除の直後なので、正直言って食欲がない。
全く影響なく腹を満たすロックの姿を見て、これが冒険者として慣れることなのかと思った。
「ところで、午後はどうするの?」
食事が片付いた頃、わたしはロックに訊ねてみた。
今日の仕事は根鼠駆除だけで終わりだと思っていたけど、予想よりも早く終わった。
だからこうしてのんびりとご飯を食べることができていた。
「そうだな、時間はまだあるから、もう一つ依頼を受けてみるか」
食器を片付け、ロックとわたしは再び依頼掲示板の前へと移動する。朝一番のときは依頼書を見るのもままならなかったけど、この時間は人の数も疎らだ。楽な依頼は残っていないだろうけど、その代わりにじっくりと確認することができそうだ。
「メル、今度はお前が選んでいいぞ」
「え、本当に?」
「ああ。但し、自分の実力で達成できると思うものを探すんだ」
わたしの実力で、達成できそうな依頼を……。
「ええ、分かったわ」
依頼の数は、それこそ数え切れないほどある。
依頼掲示板には次から次へと新しい依頼書が貼られる。
この依頼書の数だけ、依頼主がいる。困っている人がいるということだ。
その中でも、今のわたしが挑戦できそうな依頼といえば……。
「……これにしようかしら」
一枚の依頼書を手に取った。
それをロックに渡して確認してもらう。すると、
「理由を聞こう」
まずはわたしの考えを聞くつもりだ。
だからわたしは、悩んだ末にこれを選んだわけを話すことにした。
「その、……名前がほら、植物でしょう? だから動かなそうというか、根鼠のようなタイプなのかと思って、倒すのも難しくないのかなって……ダメ?」
わたしが手にした依頼書は『ホワイト・トレント』の討伐と書かれてあった。
ロックはわたしの考えを耳にして、口元を緩める。
「良い案だ。メルの想像通り、こいつはその場から動くことはない。反撃はしてくるが、俺も居るから問題ない」
「それじゃあ……」
「ああ、次はこの依頼を受けよう」
ロックの同意を得て、わたしは嬉しくなる。
根鼠駆除でげんなりしたのが嘘のように、今は元気いっぱいだった。
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