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【59】根鼠駆除

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 ――根鼠。
 それは魔物の中でも特に小さな部類のもので、見た目は通常の鼠とほぼ変わらない。

 特徴として挙げられるのは、そこがどこであろうとも住み着くことができることだ。体の一部から根を伸ばし、どこにでも張り付けるだけで栄養を補給可能なのだ。

 一度、根を張ってしまえば、そこから動かない。
 そしてその個体が雌であれば、そこで数を増やしていく。

 その結果、早く手を打たなければ根鼠の巣窟となってしまう。

 根鼠自体に戦闘力は無く、これも普通の鼠と同程度だ。噛み付かれないように注意すればいい。それも根を張らずに動く根鼠の話であって、既に根を張っている根鼠は無防備なので駆除も容易い。
 新米冒険者にとって根鼠とは、経験も積めるし楽に依頼を達成することのできる依頼の一つだ。まさに良いこと尽くめと言えるだろう。

 でも、わたしは顔を曇らせる。

「ネズミ……しかも、地下通路って……」

 根鼠が根を張ったとされる場所は、地下通路と書かれてあった。
 鼠が巣食う地下通路という時点で、あまり足を踏み入れたくはない。

「この依頼、いったい何匹駆除すればいいの?」

 とりあえず問いかける。
 まずは根鼠の数がどれほどのものか知りたい。
 すると、ロックは当然といった表情で答えてくれる。

「当然、目に見えるだけだ」
「目に見えるだけ……って、つまり全部よね」
「楽な仕事だ」

 思わず天を仰ぐ。
 何匹いるのか定かではない根鼠を、ロックと二人だけで全駆除しなければならない。
 これのどこが楽な仕事なのだろうか。

「何だ、鼠は苦手か?」
「……苦手と言えば、別の依頼に変えてくれる?」
「それは無理な相談だな」
「そう言うと思ったわ」

 わたしは堪忍するような表情を浮かべて呟いた。
 今日のお仕事は根鼠駆除で決まりだ。
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