26 / 88
【24】森の中の湖
しおりを挟む
森狼の魔石を回収したあと、わたしたちは森の中を比較的ゆっくりとした速度で進んで行った。
すると開けた場所に出た。
「……これ、湖?」
思わず感嘆する。
まさかこの森の奥にこんなにも大きな湖があるとは思わなかった。
「一度休息をとる。歩き通しだと効率が悪くなるからな」
「そう? それじゃあお言葉に甘えようかしらね」
助かった……。
生まれてこの方、今日ほどひたすらに歩き続けたことはなかったので、足が棒になりかけている。一休みできるとしって内心ホッとした。
「それにしても、綺麗な湖ね……」
魔物が巣食う森の中とは思えない。
水も澄んでいる。底が見えそうなぐらいに……。
「引け」
「ひゃっ」
水面に顔を近づけると、ロックに肩を掴まれて後ろに引っ張られた。
何をするのかと抗議しようと思ったら、次の瞬間、湖の中から何かが勢いよく飛び出した。
ロックは、その何かを剣で一突きする。
「なにっ? それなに!?」
「気を付けろ。水の中にも魔物は潜んでいる」
剣に刺さった魔物は、魚の形をしている。既に息絶えているのか、ピクリとも動かない。
「き、肝に銘じておくわ……」
もし、ロックが引っ張ってくれなかったら、今頃わたしの顔がなくなっていたかもしれない。そう思うとゾッとする。
「丁度いい。昼飯はこいつにするか」
「……え? 今なんて言ったの?」
「飯を食うって言ったんだ」
「そうじゃなくて、その魔物を食べるって言わなかった……?」
まさか、冗談だよね、とわたしは目を向ける。
しかしロックは意地悪そうに口角を上げて言葉を返す。
「冒険者になりたいんだろ?」
だから食べろ、と。
わたしは確信した。
この男、絶対いじめっ子タイプだよ……。
すると開けた場所に出た。
「……これ、湖?」
思わず感嘆する。
まさかこの森の奥にこんなにも大きな湖があるとは思わなかった。
「一度休息をとる。歩き通しだと効率が悪くなるからな」
「そう? それじゃあお言葉に甘えようかしらね」
助かった……。
生まれてこの方、今日ほどひたすらに歩き続けたことはなかったので、足が棒になりかけている。一休みできるとしって内心ホッとした。
「それにしても、綺麗な湖ね……」
魔物が巣食う森の中とは思えない。
水も澄んでいる。底が見えそうなぐらいに……。
「引け」
「ひゃっ」
水面に顔を近づけると、ロックに肩を掴まれて後ろに引っ張られた。
何をするのかと抗議しようと思ったら、次の瞬間、湖の中から何かが勢いよく飛び出した。
ロックは、その何かを剣で一突きする。
「なにっ? それなに!?」
「気を付けろ。水の中にも魔物は潜んでいる」
剣に刺さった魔物は、魚の形をしている。既に息絶えているのか、ピクリとも動かない。
「き、肝に銘じておくわ……」
もし、ロックが引っ張ってくれなかったら、今頃わたしの顔がなくなっていたかもしれない。そう思うとゾッとする。
「丁度いい。昼飯はこいつにするか」
「……え? 今なんて言ったの?」
「飯を食うって言ったんだ」
「そうじゃなくて、その魔物を食べるって言わなかった……?」
まさか、冗談だよね、とわたしは目を向ける。
しかしロックは意地悪そうに口角を上げて言葉を返す。
「冒険者になりたいんだろ?」
だから食べろ、と。
わたしは確信した。
この男、絶対いじめっ子タイプだよ……。
1
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
姫金魚乙女の溺愛生活 〜「君を愛することはない」と言ったイケメン腹黒冷酷公爵様がなぜか私を溺愛してきます。〜
水垣するめ
恋愛
「あなたを愛することはありません」
──私の婚約者であるノエル・ネイジュ公爵は婚約を結んだ途端そう言った。
リナリア・マリヤックは伯爵家に生まれた。
しかしリナリアが10歳の頃母が亡くなり、父のドニールが愛人のカトリーヌとその子供のローラを屋敷に迎えてからリナリアは冷遇されるようになった。
リナリアは屋敷でまるで奴隷のように働かされることとなった。
屋敷からは追い出され、屋敷の外に建っているボロボロの小屋で生活をさせられ、食事は1日に1度だけだった。
しかしリナリアはそれに耐え続け、7年が経った。
ある日マリヤック家に対して婚約の打診が来た。
それはネイジュ公爵家からのものだった。
しかしネイジュ公爵家には一番最初に婚約した女性を必ず婚約破棄する、という習慣があり一番最初の婚約者は『生贄』と呼ばれていた。
当然ローラは嫌がり、リナリアを代わりに婚約させる。
そしてリナリアは見た目だけは美しい公爵の元へと行くことになる。
名前はノエル・ネイジュ。金髪碧眼の美しい青年だった。
公爵は「あなたのことを愛することはありません」と宣言するのだが、リナリアと接しているうちに徐々に溺愛されるようになり……?
※「小説家になろう」でも掲載しています。
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?
なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」
顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される
大きな傷跡は残るだろう
キズモノのとなった私はもう要らないようだ
そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ
そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった
このキズの謎を知ったとき
アルベルト王子は永遠に後悔する事となる
永遠の後悔と
永遠の愛が生まれた日の物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる