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【19】帝国の流儀
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「第四王子とやらが、俺に何の用だ」
「いやぁ、普段通りギルドでのんびりしてたら英雄の顔が見えたものだからさ、ちょっと挨拶でもしようと思ってね」
「挨拶なら間に合ってる。用がないなら消えろ」
ロックがそう告げると、アレクは楽しそうに笑った。
用ならあるさ、と。
王族の一人なのに、アレクはパーティー会場にいなかった。
それは至って単純なもので、アレクが妾の子だからだ。
アレク・ヴァントレアは王族の血を引くが、王位継承権は持たない。
故に、このままでは先がないと思ったのだろう。己の人生に活路を見出すために、アレクは自ら冒険者の道を選択した。
はっきり言って、帝国王家の変わり種だ。
そんな彼がロックに声をかけたのは、何も珍しがってのことではない。
それなりの理由がある。
「……旅先案内人? お前が?」
「うん。帝王閣下直々の命令でね。現役冒険者の僕が選ばれたんだ」
ロックと三兄弟は、帝王から直々に依頼を受けている。
それは帝王領土の古城を住処とする魔人の討伐だ。
魔人の古城は、帝国領土の中でも険しい山脈の先に建てられている。
土地勘のない者には辿り着くことも難しい場所と言えるだろう。
故の、旅先案内人だ。
こちらも帝王直々の命により、アレクが古城までの案内を務めることになっていた。
本来、面通しは明日の予定らしいが、パーティー嫌いのロックの気紛れで、ほんの少し早く、二人は出会うことになった。
「用はそれだけか」
「いや、まだあるよ」
これ以上、何を話すというのか。
ロックは面倒くさそうにため息を吐くと、アレクの顔を見る。
いつの間にか、アレクは真面目な表情を作っていた。
そしてロックに願い出る。
「――ロック・クオール。この僕を、きみの仲間に加えてほしい」
「いやぁ、普段通りギルドでのんびりしてたら英雄の顔が見えたものだからさ、ちょっと挨拶でもしようと思ってね」
「挨拶なら間に合ってる。用がないなら消えろ」
ロックがそう告げると、アレクは楽しそうに笑った。
用ならあるさ、と。
王族の一人なのに、アレクはパーティー会場にいなかった。
それは至って単純なもので、アレクが妾の子だからだ。
アレク・ヴァントレアは王族の血を引くが、王位継承権は持たない。
故に、このままでは先がないと思ったのだろう。己の人生に活路を見出すために、アレクは自ら冒険者の道を選択した。
はっきり言って、帝国王家の変わり種だ。
そんな彼がロックに声をかけたのは、何も珍しがってのことではない。
それなりの理由がある。
「……旅先案内人? お前が?」
「うん。帝王閣下直々の命令でね。現役冒険者の僕が選ばれたんだ」
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それは帝王領土の古城を住処とする魔人の討伐だ。
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本来、面通しは明日の予定らしいが、パーティー嫌いのロックの気紛れで、ほんの少し早く、二人は出会うことになった。
「用はそれだけか」
「いや、まだあるよ」
これ以上、何を話すというのか。
ロックは面倒くさそうにため息を吐くと、アレクの顔を見る。
いつの間にか、アレクは真面目な表情を作っていた。
そしてロックに願い出る。
「――ロック・クオール。この僕を、きみの仲間に加えてほしい」
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