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終章ではあるけれど 後編
灰の中から見つけたもの
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私の知るかぎり、「銀の峰の物語」の攻略対象にパワー系も、束縛系も、ドSも居なかったはず。
と、蹴り開けられ吹っ飛んだドアを呆然と見ていた。ちなみによつん這いなのは今さっきまでマントルピースに頭を突っ込んでいたからだ。
「何だかしらんが、いい格好だなジークフリード」
ウィリアムが少し離れたところで立て膝したまま言う。たしかに、ドアを蹴りあけて入ってきたジークフリードはいつもの王子様然とした様子ではなく、帯刀しているし、手には鞭をもっていた。格好いい、でも、なんていうか、ちょっと怖い感じ。
「その鞭で打つのか?彼女を?随分な趣味だな」
ウィリアムに言われて、なぜかぼんやりと私たちを見下ろしていたジークフリードは、はっとしたように手にしていた鞭を放り投げた。
「侍従長から兄上がイライザをここへ監禁したと報告をうけました…王宮にどれだけ敵をつくったんですか」
ふぅ、と前髪をかきあげ、首もとを緩める。どうやら疑いは晴れたようだ。
「イライザ、その手で顔をさわってはダメだ」
と、ジークフリードが私の頬を指でふいてくれる。みれば、その指には煤がしっかりついていた。
まあ、二人別々の場所で床に這いつくばって、しかもひとりはマントルピースに頭を半分突っ込んでるんだから、想像に難くないとは思うけど。
「なぜ私を呼ばなかった?迂闊なことをすればウィリアムがまた捕まってしまうよ」
私に言われても、とは思うけど、ウィリアムが無理に連れてきたと話すのは少々問題が有りそうだわ、と口をつぐむ。
「それで、なにか見つかったかい」
尋ねられて私はウィリアムを見た。ウィリアムが頷き、私たちは先程見つけたものを、ジークフリードにさしだした。
「これは、また…」
言葉を選んでいるジークフリードに、
「これで犯人を捕まえられます。『天球の翼』が隣国へ渡るまえにいそがなくてはなりませんね?」
と微笑みかけた。
「けど、取り返すといってもどこにあるのかもわからないのに、どうするというんだ?」
ウィリアムの質問にジークフリードもこちらを振り返った。
「…犯人の目処はついています。本の場所も確認していますが、取り返すとなると少し…策が必要です」
私は少しの間手を上げ下げして考えを纏めた。
「今回の相手はまがりなりにも有力な貴族の一員ですので、前回のように我々だけで逮捕というわけにはまいりません。証拠となるものを必ず呈示しなければこちらが不利になります。問題は、それだけの方々をどうしたら集められるのか…いまは社交のシーズンでもありませんし、新年まで待ってはいられませんし」
わたしが言い終わるかおわらないかのうちに、ジークフリードが口を開いた。
「社交シーズンと同じように貴族とその同伴者を集めることは、できる。君さえよければだが…イライザ」
と、蹴り開けられ吹っ飛んだドアを呆然と見ていた。ちなみによつん這いなのは今さっきまでマントルピースに頭を突っ込んでいたからだ。
「何だかしらんが、いい格好だなジークフリード」
ウィリアムが少し離れたところで立て膝したまま言う。たしかに、ドアを蹴りあけて入ってきたジークフリードはいつもの王子様然とした様子ではなく、帯刀しているし、手には鞭をもっていた。格好いい、でも、なんていうか、ちょっと怖い感じ。
「その鞭で打つのか?彼女を?随分な趣味だな」
ウィリアムに言われて、なぜかぼんやりと私たちを見下ろしていたジークフリードは、はっとしたように手にしていた鞭を放り投げた。
「侍従長から兄上がイライザをここへ監禁したと報告をうけました…王宮にどれだけ敵をつくったんですか」
ふぅ、と前髪をかきあげ、首もとを緩める。どうやら疑いは晴れたようだ。
「イライザ、その手で顔をさわってはダメだ」
と、ジークフリードが私の頬を指でふいてくれる。みれば、その指には煤がしっかりついていた。
まあ、二人別々の場所で床に這いつくばって、しかもひとりはマントルピースに頭を半分突っ込んでるんだから、想像に難くないとは思うけど。
「なぜ私を呼ばなかった?迂闊なことをすればウィリアムがまた捕まってしまうよ」
私に言われても、とは思うけど、ウィリアムが無理に連れてきたと話すのは少々問題が有りそうだわ、と口をつぐむ。
「それで、なにか見つかったかい」
尋ねられて私はウィリアムを見た。ウィリアムが頷き、私たちは先程見つけたものを、ジークフリードにさしだした。
「これは、また…」
言葉を選んでいるジークフリードに、
「これで犯人を捕まえられます。『天球の翼』が隣国へ渡るまえにいそがなくてはなりませんね?」
と微笑みかけた。
「けど、取り返すといってもどこにあるのかもわからないのに、どうするというんだ?」
ウィリアムの質問にジークフリードもこちらを振り返った。
「…犯人の目処はついています。本の場所も確認していますが、取り返すとなると少し…策が必要です」
私は少しの間手を上げ下げして考えを纏めた。
「今回の相手はまがりなりにも有力な貴族の一員ですので、前回のように我々だけで逮捕というわけにはまいりません。証拠となるものを必ず呈示しなければこちらが不利になります。問題は、それだけの方々をどうしたら集められるのか…いまは社交のシーズンでもありませんし、新年まで待ってはいられませんし」
わたしが言い終わるかおわらないかのうちに、ジークフリードが口を開いた。
「社交シーズンと同じように貴族とその同伴者を集めることは、できる。君さえよければだが…イライザ」
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