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第4幕 都心戦線
21 幸せへの誓い
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俺はいつも夕食を頂いた後は女性宅に遅くまでいないよう日が暮れる前に帰るようにしている。
だが今日は、観咲家へ泊まる事にしていた。
着替えも歯ブラシも自宅から持ってきていたが二人の方でも俺の分を用意してくれていた。
多目のお泊まりセットが並んでしまったのを見て全員で笑った。
突然の提案だったが喜んでくれている様子を見て俺も嬉しい。
お風呂を借りた時は、彼女達の素肌が触れていた浴槽に少し緊張してしまった。
・・・だが今はそれ所じゃない。
寝間着に着替えた年頃の女性二人が俺の布団を敷いてくれている。
しかも二人の布団の間にだ。
「はい、遥君は真ん中だからね!今日はお泊り会みたいだね!」
「そうね、夜も賑やかになってくれるわね」
心臓が激しく胸を叩きつけてくる程に激しい鼓動が続く。
倒れてしまいそうだ。
いや、このままじゃ緊張して絶対寝れないだろうからむしろ失神してしまった方がいい!
「遥架君、ありがと。いつも二人きりだから寂しいって花凛がよく言ってたの」
「いつもそそくさと帰っちゃうからね。今日は泊まってくれてとっても嬉しいよ!」
「いえ、こちらこそ。
あの・・・・すいません、ではお邪魔しますね」
そう言って二人の間に横になった。
なんだろう、とっても幸福すぎて顔が緩みきってしまう。
「ねえ、いつもは家で何してるの?」
「えっと、本読んだりしてそのまま寝落ちしてます」
「えー、目悪くならないの?お姉ちゃんは寝ながら読んじゃダメっていつも注意してくるんだよ?」
「うん、悪くなるのはその通りだろうね。だから結奈さんの言う事は聞いた方がいいよ」
「でも遥架君はいいんだ?
ふ~ん、じゃあ次からは本も持ってくると良いね」
電気を消しておしゃべりをしていると次第に静けさが漂い、声も次第に小さくなっていった。
初夏の季節にスズムシの音が微かに聞こえてくる。
『次からは』・・・・次が訪れる事を、
この時間が繰り返される事を強く望む程に
幸せな気持ちの中に悲しさと寂しさが込み上がってくる。
「明日は早いからそろそろ寝ましょうね」
「うん、もう少しお話してから寝るね」
明日は荷物を整えてこの家を出ていく事になっている。
もう帰って来ることのないこの家の荷作りを手伝う。
俺の予測する大災害がこの新宿で起きた時、きっとこの家は無事では済まない。
モスクワの惨状を映した写真が脳裏に思い浮ぶ。
この家が・・・・この二人がその光景と重なる景色を想像しては、
それを必死に打ち消そうと繰り返した。
「遥架君、まだ起きてる?」
小声で花凛が話かけてきた。
天井を見続けていた俺はそちらに顔を向ける。
「花凛ちゃんも、眠れないの?」
「ううん、そうじゃないの。あのね、私ね・・・・なんだかとっても嬉しいの」
横向きにこちらに顔を向けている表情はとても楽し気に見えた。
これから大変になる事などを忘れてしまう程に。
「私にもわかるの、世界は終わっていく気がするって。ううん、私の世界が閉じていくような」
「・・・・怖い?」
「怖くないよ。だって遥架君がいるもん。昨日もピンチの時に助けに来てくれて、まるで映画のヒーローみたいだったよ」
クスクスと笑っていた。
「こんな世界になっても、私の事をこうして想ってくれる人がいる事、そんな風にだれかの事を思いやってあげられる人がまだいる事、それが嬉しいの」
とても穏やかな口調で、彼女は彼女の見るこの世界を語った。
「こんな時だからこそ人って繋がっていくんだなって。
平和かどうかよりも、それは私にとってとても大事な事。
みんなこの街を愛して、たとえ離れる事になっても皆と心が繋がっていて・・・」
彼女からはこれから起きる事への恐怖は何も感じられなかった。
平時であればとても当たり前な平穏、10代であったならばもっと部活や恋や、別の事に熱中していた事だっただろう。
この終末世界の事を誰よりも受け入れているのかもしれない。
「ねえ、手を繋いでもいい?」
花凛ちゃんは布団の中から手を、俺に向けて控えめに差し出してくる。
俺はその手をそっと握りしめた。
「君は俺が守るよ」
口にしたこの言葉は、俺ににとっての誓いでもあった。
「へへへ、嬉しい。遥架君はヒーローだね」
―――――――――――――――――――――――――
7月の第2週目の金曜日午前3時。
朝日がまだ昇らない漆黒の深夜に
眩しい光線が地上から空へ向かって放たれ雲を照らし
闇夜を眩しく照らした。
新宿虚層塔 終末大転移
この日、俺の世界は異世界に侵された
だが今日は、観咲家へ泊まる事にしていた。
着替えも歯ブラシも自宅から持ってきていたが二人の方でも俺の分を用意してくれていた。
多目のお泊まりセットが並んでしまったのを見て全員で笑った。
突然の提案だったが喜んでくれている様子を見て俺も嬉しい。
お風呂を借りた時は、彼女達の素肌が触れていた浴槽に少し緊張してしまった。
・・・だが今はそれ所じゃない。
寝間着に着替えた年頃の女性二人が俺の布団を敷いてくれている。
しかも二人の布団の間にだ。
「はい、遥君は真ん中だからね!今日はお泊り会みたいだね!」
「そうね、夜も賑やかになってくれるわね」
心臓が激しく胸を叩きつけてくる程に激しい鼓動が続く。
倒れてしまいそうだ。
いや、このままじゃ緊張して絶対寝れないだろうからむしろ失神してしまった方がいい!
「遥架君、ありがと。いつも二人きりだから寂しいって花凛がよく言ってたの」
「いつもそそくさと帰っちゃうからね。今日は泊まってくれてとっても嬉しいよ!」
「いえ、こちらこそ。
あの・・・・すいません、ではお邪魔しますね」
そう言って二人の間に横になった。
なんだろう、とっても幸福すぎて顔が緩みきってしまう。
「ねえ、いつもは家で何してるの?」
「えっと、本読んだりしてそのまま寝落ちしてます」
「えー、目悪くならないの?お姉ちゃんは寝ながら読んじゃダメっていつも注意してくるんだよ?」
「うん、悪くなるのはその通りだろうね。だから結奈さんの言う事は聞いた方がいいよ」
「でも遥架君はいいんだ?
ふ~ん、じゃあ次からは本も持ってくると良いね」
電気を消しておしゃべりをしていると次第に静けさが漂い、声も次第に小さくなっていった。
初夏の季節にスズムシの音が微かに聞こえてくる。
『次からは』・・・・次が訪れる事を、
この時間が繰り返される事を強く望む程に
幸せな気持ちの中に悲しさと寂しさが込み上がってくる。
「明日は早いからそろそろ寝ましょうね」
「うん、もう少しお話してから寝るね」
明日は荷物を整えてこの家を出ていく事になっている。
もう帰って来ることのないこの家の荷作りを手伝う。
俺の予測する大災害がこの新宿で起きた時、きっとこの家は無事では済まない。
モスクワの惨状を映した写真が脳裏に思い浮ぶ。
この家が・・・・この二人がその光景と重なる景色を想像しては、
それを必死に打ち消そうと繰り返した。
「遥架君、まだ起きてる?」
小声で花凛が話かけてきた。
天井を見続けていた俺はそちらに顔を向ける。
「花凛ちゃんも、眠れないの?」
「ううん、そうじゃないの。あのね、私ね・・・・なんだかとっても嬉しいの」
横向きにこちらに顔を向けている表情はとても楽し気に見えた。
これから大変になる事などを忘れてしまう程に。
「私にもわかるの、世界は終わっていく気がするって。ううん、私の世界が閉じていくような」
「・・・・怖い?」
「怖くないよ。だって遥架君がいるもん。昨日もピンチの時に助けに来てくれて、まるで映画のヒーローみたいだったよ」
クスクスと笑っていた。
「こんな世界になっても、私の事をこうして想ってくれる人がいる事、そんな風にだれかの事を思いやってあげられる人がまだいる事、それが嬉しいの」
とても穏やかな口調で、彼女は彼女の見るこの世界を語った。
「こんな時だからこそ人って繋がっていくんだなって。
平和かどうかよりも、それは私にとってとても大事な事。
みんなこの街を愛して、たとえ離れる事になっても皆と心が繋がっていて・・・」
彼女からはこれから起きる事への恐怖は何も感じられなかった。
平時であればとても当たり前な平穏、10代であったならばもっと部活や恋や、別の事に熱中していた事だっただろう。
この終末世界の事を誰よりも受け入れているのかもしれない。
「ねえ、手を繋いでもいい?」
花凛ちゃんは布団の中から手を、俺に向けて控えめに差し出してくる。
俺はその手をそっと握りしめた。
「君は俺が守るよ」
口にしたこの言葉は、俺ににとっての誓いでもあった。
「へへへ、嬉しい。遥架君はヒーローだね」
―――――――――――――――――――――――――
7月の第2週目の金曜日午前3時。
朝日がまだ昇らない漆黒の深夜に
眩しい光線が地上から空へ向かって放たれ雲を照らし
闇夜を眩しく照らした。
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