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先生、好きです。
第6話
しおりを挟む「ぁ……、ぁの……」
口を開いてから間を置いて、やっと声が言葉として出た。
「コレってもしかして……?」
私はおそるおそる徹先生の顔を見上げた。
すると徹先生は目尻にシワを寄せて優しく微笑んだまま、じっと私のことを見つめていた。
これって夢、なのかな──?
「柚乃、良く聞け」
そう言って徹先生は立ち上がり、私の方に歩み寄る。
今、名前呼んだ──!!
しかも、なんか近い……!!
するといきなり笑顔が消えて真剣な顔をし、口を開く。
その徹先生の口から出たセリフに、私は言葉を失った。
「俺は柚乃のが好きだ」
────!!
突然の告白にわけが分からなくなって、パチパチと何度も瞬きをした。
ゆっくり時間をかけて言われた言葉を理解すると、顔が真っ赤になっているのが火照る身体の感覚で分かった。
なに、それ……。
ずるいよ、先生。
「ッ──」
ポロポロと涙がこぼれて、それを手で拭おうと何度も擦る。
けれど涙は止まらず、どんどん溢れてきて切りがなかった。
「こんなに一途に想われたのは初めてで最初は戸惑ったけどな。
お前はずっと好きでいてくれたから疑いようがなかったわ」
眩しいくらいにはにかんだ笑顔に、ふと入学式で見た時を思い出す。
私が一目惚れした徹先生の笑顔……。
やっぱり何も変わってない。
あの時から大好きだった徹先生がここにいる。
今、目の前で告白をしてくれたのは徹先生なんだ。
ねぇ、これが夢でしたなんて言わないよね。
言ったら神様なんて嫌いになるんだから。
私がずっと願い続けて追い求めてきた理想が、今ここに現実になって起こってる。
「先生……、ありがとう!」
笑顔で言いたかったのに、止まらない涙で上手く笑えなくて。
そんな私に徹先生は少し呆れたように話しをしはじめた。
「二年生の時にお前は言ってたよな。
俺を惚れさせてやるって」
話しながらテーブルに置いてあったティッシュを手に取り戻って来る。
「そう言われる前からとっくに柚乃を好きになってたよ」
「……え」
呟くと徹先生は「驚くか」と笑いながら持ってきたティッシュをくれた。
涙を拭いて鼻をかむ。
「ずっとそんな素振りなかった……」
「素振りがあったらヤバイだろう……。
俺は養護教諭でいられなくなるのも、他の学校にとばされるのもやなんだよ」
素直に答えてくれる徹先生に、私はなんだか嬉しくなていく。
「とおる先生……、めちゃくちゃ私のこと好きじゃないですか」
「だろ?」
だろじゃないよぉー!
こっちはずっと全敗してきて、ずっと好きになってもらうのに考えてたのに……!!
「柚乃、俺と付き合うよな」
「ッ……!!」
徹先生の方から言ってくれるなんて思ってもなかった。
「返事は?」
思った形と違うけど、思った以上に幸せな展開で、言われたかった言葉を聞けて満足する。
「……うん、付き合う」
緊張と恥ずかしさでうつ向いたまま頷くと、体温が一気に上がった気がした。
すると徹先生が手の伸ばして頬に触れてくる。
好きな先生が私に触れてる。
夢じゃないんだ。
ちゃんと現実なんだ──。
「あのね、徹先生。
私、先生のことが好きだよ。大好きだったんだよ」
「知ってるわ」
すると徹先生が私の名前を呼んだ。
「柚乃」
「なに、んンッ……!?」
───!?!?
突然、徹先生の顔が近づいて来たと思ったら、瞬きをした瞬間に先生の唇で口を塞がれていた。
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