12 / 57
一章 四人の配信者
12話 配信者の王
しおりを挟む
「うーん……」
目覚ましが鳴り響く中俺は目を覚まし時計を止める。
「えっ……もうこんな時間かよ!?」
時刻は予想よりずっと先を行っており、もうこの時点でバイトに間に合わないことは確定だ。俺は飛び起きて急いで霧子の弁当の準備をしようとする。
「おはよう霧子! 今すぐ弁当の準備をするから……」
「兄さん。今日は祝日で学校はないよ」
「あっそうか……いやでもスーパーのバイトあるから急いで……」
「スーパーならこの前ガス爆発が起きて今はやってないんじゃ?」
「あっ……そ、そうだったな」
再び体を急がせようとしたが、ついこの前のことを思い出してまた停止させる。
世間一般的にはこの前の事件はガス爆発として処理されて魔物の一件は隠蔽された。後から敷島さんに聞いたのだが混乱を避けるためだそうだ。
俺もあのことは霧子には黙っている。花華もあの事件以来はあまり会ってはいないが、配信を頻繁に行い修行配信と称して魔物と戦っていたので心身共に元気なのだろう。
それから特に急ぐ必要もなくなったので、ゆっくりと味噌汁と卵焼きにほうれん草を付けた朝食を出す。
「いただきます」
俺達は手を合わしそれらを食べ始める。我ながら味付けは完璧で霧子も満足のようだ。
「そういえば兄さん。スーパーのガス爆発の件……本当は何があったの?」
俺は飲んでいた味噌汁が気道に入り何回かむせてしまう。
本当に霧子は感が良い。俺の些細なことでも見逃さなかったのだろう。
「別に何もなかったよ」
霧子から冷たい視線が送られる。それが胸に突き刺さりとてもじゃないが彼女の目を見て話せない。
「危険なことはしないでね。兄さんは……たった一人の家族なんだから」
「あぁ……」
俺はその言葉に強く、芯を持たせて返す。嘘こそ吐いてしまったが霧子を想うこの気持ちだけは絶対に揺るがないし嘘偽りもない。
あの日助けられた唯一の家族だから。俺が絶対に守り抜かないといけない。
朝食を食べ終わり霧子は自室で勉強し俺は配信関連の情報を集めようとする。
「それにしてもフォロワー中々増えたな」
スマホで自分が運営する配信用のSNSを開くとまたフォロワーがかなりの数増えている。この短期間の間に数倍になった。これも花華のおかげだろう。
配信も順調で入ってくるお金も増えるだろうが、とはいえバイトを探さないわけにもいかない。
昨日の件もあるしいつ配信ができなくなってもおかしくない。もしかしたら今日からゲートに関する調査とかで配信に制限がかかる可能性だってある。だから安定した職も得ないといけない。
「ん? 配信者からメッセージが来てる」
SNSのダイレクトメッセージを見ているとそのうちの一人が公式認可のマークが付いていることに気がつく。どうやら配信者のようで俺とコラボしたいとのことだ。
「えっーと、こいつ誰だ……って、ランキング一位のフォルティーじゃないか!?」
コラボ依頼を出してきたのは長いこと一位の座に居座っている、ダンジョン配信に触れたことがある人なら誰でも知っているであろう人物だった。
俺の最近の活躍に興味を持ったので近いうちに手合わせをしたいという旨のメッセージだ。
「うーん……でも今日の午後は新しいバイトの面接だし……明日でいいか」
俺はとりあえず明日の午前から夕方にかけて空いていることを伝える。それからは何事もなく昼を迎えて、霧子と一緒に昼食をとってから俺は新しいバイト先である近所の薬局まで向かう。
「お願いです……やめてください!!」
薬局までの道中。路地裏の方から女性の悲鳴めいた声が聞こえてくる。
気になりその道を覗いてみると大柄の男性二人が小柄の可愛らしい女性に迫っている。女性の片腕は男にがっちりと掴まれており逃げられない様子だ。
「まぁまぁいいじゃんかよ~ちょっーーとお兄さん達と遊ぼうよ?」
柄の悪い二人は明確に拒絶されても引き下がろうとはせず、二人組の内一方の男がポケットに手を入れて何かを取り出す。そこから取り出されたものは注射。その鋭利な針が女性の手首に迫る。
「まずいっ……!!」
リスクなど考える暇もなく体が勝手に動くのだった。
目覚ましが鳴り響く中俺は目を覚まし時計を止める。
「えっ……もうこんな時間かよ!?」
時刻は予想よりずっと先を行っており、もうこの時点でバイトに間に合わないことは確定だ。俺は飛び起きて急いで霧子の弁当の準備をしようとする。
「おはよう霧子! 今すぐ弁当の準備をするから……」
「兄さん。今日は祝日で学校はないよ」
「あっそうか……いやでもスーパーのバイトあるから急いで……」
「スーパーならこの前ガス爆発が起きて今はやってないんじゃ?」
「あっ……そ、そうだったな」
再び体を急がせようとしたが、ついこの前のことを思い出してまた停止させる。
世間一般的にはこの前の事件はガス爆発として処理されて魔物の一件は隠蔽された。後から敷島さんに聞いたのだが混乱を避けるためだそうだ。
俺もあのことは霧子には黙っている。花華もあの事件以来はあまり会ってはいないが、配信を頻繁に行い修行配信と称して魔物と戦っていたので心身共に元気なのだろう。
それから特に急ぐ必要もなくなったので、ゆっくりと味噌汁と卵焼きにほうれん草を付けた朝食を出す。
「いただきます」
俺達は手を合わしそれらを食べ始める。我ながら味付けは完璧で霧子も満足のようだ。
「そういえば兄さん。スーパーのガス爆発の件……本当は何があったの?」
俺は飲んでいた味噌汁が気道に入り何回かむせてしまう。
本当に霧子は感が良い。俺の些細なことでも見逃さなかったのだろう。
「別に何もなかったよ」
霧子から冷たい視線が送られる。それが胸に突き刺さりとてもじゃないが彼女の目を見て話せない。
「危険なことはしないでね。兄さんは……たった一人の家族なんだから」
「あぁ……」
俺はその言葉に強く、芯を持たせて返す。嘘こそ吐いてしまったが霧子を想うこの気持ちだけは絶対に揺るがないし嘘偽りもない。
あの日助けられた唯一の家族だから。俺が絶対に守り抜かないといけない。
朝食を食べ終わり霧子は自室で勉強し俺は配信関連の情報を集めようとする。
「それにしてもフォロワー中々増えたな」
スマホで自分が運営する配信用のSNSを開くとまたフォロワーがかなりの数増えている。この短期間の間に数倍になった。これも花華のおかげだろう。
配信も順調で入ってくるお金も増えるだろうが、とはいえバイトを探さないわけにもいかない。
昨日の件もあるしいつ配信ができなくなってもおかしくない。もしかしたら今日からゲートに関する調査とかで配信に制限がかかる可能性だってある。だから安定した職も得ないといけない。
「ん? 配信者からメッセージが来てる」
SNSのダイレクトメッセージを見ているとそのうちの一人が公式認可のマークが付いていることに気がつく。どうやら配信者のようで俺とコラボしたいとのことだ。
「えっーと、こいつ誰だ……って、ランキング一位のフォルティーじゃないか!?」
コラボ依頼を出してきたのは長いこと一位の座に居座っている、ダンジョン配信に触れたことがある人なら誰でも知っているであろう人物だった。
俺の最近の活躍に興味を持ったので近いうちに手合わせをしたいという旨のメッセージだ。
「うーん……でも今日の午後は新しいバイトの面接だし……明日でいいか」
俺はとりあえず明日の午前から夕方にかけて空いていることを伝える。それからは何事もなく昼を迎えて、霧子と一緒に昼食をとってから俺は新しいバイト先である近所の薬局まで向かう。
「お願いです……やめてください!!」
薬局までの道中。路地裏の方から女性の悲鳴めいた声が聞こえてくる。
気になりその道を覗いてみると大柄の男性二人が小柄の可愛らしい女性に迫っている。女性の片腕は男にがっちりと掴まれており逃げられない様子だ。
「まぁまぁいいじゃんかよ~ちょっーーとお兄さん達と遊ぼうよ?」
柄の悪い二人は明確に拒絶されても引き下がろうとはせず、二人組の内一方の男がポケットに手を入れて何かを取り出す。そこから取り出されたものは注射。その鋭利な針が女性の手首に迫る。
「まずいっ……!!」
リスクなど考える暇もなく体が勝手に動くのだった。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~
さとう
ファンタジー
町の電気工事士であり、なんでも屋でもある織田玄徳は、仕事をそこそこやりつつ自由な暮らしをしていた。
結婚は人生の墓場……父親が嫁さんで苦労しているのを見て育ったため、結婚して子供を作り幸せな家庭を作るという『呪いの言葉』を嫌悪し、生涯独身、自分だけのために稼いだ金を使うと決め、独身生活を満喫。趣味の釣り、バイク、キャンプなどを楽しみつつ、人生を謳歌していた。
そんなある日。電気工事の仕事で感電死……まだまだやりたいことがあったのにと嘆くと、なんと異世界転生していた!!
これは、異世界で工務店の仕事をしながら、異世界で独身生活を満喫するおじさんの物語。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~
月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。
「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。
そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。
『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。
その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。
スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。
※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。)
※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。
異世界物語 ~転生チート王子と愉快なスローライフ?~
星鹿カナン
ファンタジー
目が覚めるとそこは、ファンタジーのような異世界で、僕はよくあるように、赤ちゃんだった。前世の記憶は、朧気であるものの神様との話は、よく覚えていた・・・・・・
転生王子の異世界チートスローライフ?
スローライフ要素は3章~4章まで殆ど無いかもしれません。
人名のスペルは、英検4級すら受からない作者が、それっぽい音になりそうな綴りを書いているだけなので、鵜呑みにして、参考にする様なことはしないでください。特に深い意味がある訳でもありません。
地図等、自作していますが、絵はかなり苦手なので、大まかなイメージを掴むための参考程度にしてください。
その他、物語の解説などには、地球上の仕組みの中に、実在するものと実在しないものが、混ざっています。これらは、異世界感を演出するためのものなので、ご注意ください。
R指定は特に出していませんが、怪しい部分が多いので、気になる方は、自主規制をお願いします。
現在最新話まで、本編のための前日譚のような外伝ストーリーです。
本編の時間軸に辿り着くまでの長い前日譚もお付き合いいただけると幸いです。
最終更新日:4月15日
更新話:3-027
次回更新予定日: 4月20日
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
勇者に大切な人達を寝取られた結果、邪神が目覚めて人類が滅亡しました。
レオナール D
ファンタジー
大切な姉と妹、幼なじみが勇者の従者に選ばれた。その時から悪い予感はしていたのだ。
田舎の村に生まれ育った主人公には大切な女性達がいた。いつまでも一緒に暮らしていくのだと思っていた彼女らは、神託によって勇者の従者に選ばれて魔王討伐のために旅立っていった。
旅立っていった彼女達の無事を祈り続ける主人公だったが……魔王を倒して帰ってきた彼女達はすっかり変わっており、勇者に抱きついて媚びた笑みを浮かべていた。
青年が大切な人を勇者に奪われたとき、世界の破滅が幕を開く。
恐怖と狂気の怪物は絶望の底から生まれ落ちたのだった……!?
※カクヨムにも投稿しています。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!
――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。
「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」
すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。
最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2022/02/14 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2022/02/13 小説家になろう ハイファンタジー日間59位
※2022/02/12 完結
※2021/10/18 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2021/10/19 アルファポリス、HOT 4位
※2021/10/21 小説家になろう ハイファンタジー日間 17位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる