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六
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「僕の妻……?」
ファンゼが意味が分からないと言いたげに、首を傾げる。
しかし王子の鋭い視線が真実しか告げていないと理解したのか、すぐに顔色を絶望に染めた。
「え……まさか、いや、そんな……」
パメラも彼の顔色を見て、すぐに額に汗を浮かべた。
そして助けを求めるような目を私に向けてくる。
もちろん助けてやる義理など微塵もない。
レイ王子は二人を暫し見つめていたが、小さく息をはいて、くるりと身を反転させた。
会場に集まった貴族達に向かって声を張り上げる。
「本日はお集まりいただき誠にありがとうございます!大変遅くなりましたが、皆様に一つだけご報告がございます!」
王子の声に皆が耳を傾けていた。
彼は私をチラッと見て、小さく頷いた。
私も頷きを返す。
「僕はかねてより、ここにいるノエルを慕っていました!そして彼女は先日、夫のファンゼと離婚を致しました!だから僕は彼女に告白をしたのです!彼女は僕の気持ちに応えてくれました!」
おお!と貴族から歓声があがる。
レイ王子は私の手を取ると、隣に引き寄せる。
「僕は彼女を……ノエルを妻としたことをここに宣言致します!!!」
レイ王子の言葉に、さらに会場のボルテージが上がった。
皆が口々にお祝いの言葉を叫び、果てには涙するものまでいた。
そのざわめきの中で、壇上にいたファンゼとパメラは私たちの元まで降りてくる。
「あ、あのレイ王子……」
ファンゼの声は今にも消えそうなほどに弱々しかった。
「じょ、冗談なのです……えっと、その知らなくて……ノエルが、いや、ノエル様が王子とご結婚されたなんて……ははっ」
無理やりに苦笑しているが、今にも卒倒しそうなほどにぎこちない。
パメラも同じように苦笑して口を開く。
「お姉ちゃん、私たち家族だよね?だから別に許してくれるよね?えっと……実はこの傷もね自分で作ったの……箪笥にぶつけちゃって……ふふっ、私ってドジでしょう?」
「ノエル。どうする?」
レイ王子が私に顔を向けた。
どうやら彼は私の判断に従ってくれるらしい。
「そうですね……」
私は目の前で怯えた表情になった二人を吟味するように見つめた。
この人達には散々煮え湯を飲まされてきた。
王子の妻となった今、断罪することは造作もないことだろう。
私は考えるように顎に手を当てた。
そしてゆっくりと口を開く。
「正当な額の慰謝料を頂ければ問題ありません。恨みはあれど、もう過去のことですから。水に流しましょう」
私の言葉に、ファンゼとパメラはほっとしたように息をはいた。
レイ王子は「そうか」とどこか嬉しそうに頷く。
しかしすぐに厳しい顔つきに戻ると、安堵している二人に言った。
「今後僕のノエルを傷つけたらただじゃおかないからな。そのことをちゃんと理解しておくように」
「は、はい!」
「もちろんですわ!」
二人の顔が緊張に歪み、それがどこかおかしくてつい笑ってしまう。
そんな私に、レイ王子が顔を向ける。
「ノエル。これからは僕が守る。命にかえて」
「はい……私もレイ王子のお役に立てるように、精一杯頑張ります」
レイ王子が遅れたことによりパーティーは大分延長されたが、誰一人として文句は言わなかった。
ファンゼが意味が分からないと言いたげに、首を傾げる。
しかし王子の鋭い視線が真実しか告げていないと理解したのか、すぐに顔色を絶望に染めた。
「え……まさか、いや、そんな……」
パメラも彼の顔色を見て、すぐに額に汗を浮かべた。
そして助けを求めるような目を私に向けてくる。
もちろん助けてやる義理など微塵もない。
レイ王子は二人を暫し見つめていたが、小さく息をはいて、くるりと身を反転させた。
会場に集まった貴族達に向かって声を張り上げる。
「本日はお集まりいただき誠にありがとうございます!大変遅くなりましたが、皆様に一つだけご報告がございます!」
王子の声に皆が耳を傾けていた。
彼は私をチラッと見て、小さく頷いた。
私も頷きを返す。
「僕はかねてより、ここにいるノエルを慕っていました!そして彼女は先日、夫のファンゼと離婚を致しました!だから僕は彼女に告白をしたのです!彼女は僕の気持ちに応えてくれました!」
おお!と貴族から歓声があがる。
レイ王子は私の手を取ると、隣に引き寄せる。
「僕は彼女を……ノエルを妻としたことをここに宣言致します!!!」
レイ王子の言葉に、さらに会場のボルテージが上がった。
皆が口々にお祝いの言葉を叫び、果てには涙するものまでいた。
そのざわめきの中で、壇上にいたファンゼとパメラは私たちの元まで降りてくる。
「あ、あのレイ王子……」
ファンゼの声は今にも消えそうなほどに弱々しかった。
「じょ、冗談なのです……えっと、その知らなくて……ノエルが、いや、ノエル様が王子とご結婚されたなんて……ははっ」
無理やりに苦笑しているが、今にも卒倒しそうなほどにぎこちない。
パメラも同じように苦笑して口を開く。
「お姉ちゃん、私たち家族だよね?だから別に許してくれるよね?えっと……実はこの傷もね自分で作ったの……箪笥にぶつけちゃって……ふふっ、私ってドジでしょう?」
「ノエル。どうする?」
レイ王子が私に顔を向けた。
どうやら彼は私の判断に従ってくれるらしい。
「そうですね……」
私は目の前で怯えた表情になった二人を吟味するように見つめた。
この人達には散々煮え湯を飲まされてきた。
王子の妻となった今、断罪することは造作もないことだろう。
私は考えるように顎に手を当てた。
そしてゆっくりと口を開く。
「正当な額の慰謝料を頂ければ問題ありません。恨みはあれど、もう過去のことですから。水に流しましょう」
私の言葉に、ファンゼとパメラはほっとしたように息をはいた。
レイ王子は「そうか」とどこか嬉しそうに頷く。
しかしすぐに厳しい顔つきに戻ると、安堵している二人に言った。
「今後僕のノエルを傷つけたらただじゃおかないからな。そのことをちゃんと理解しておくように」
「は、はい!」
「もちろんですわ!」
二人の顔が緊張に歪み、それがどこかおかしくてつい笑ってしまう。
そんな私に、レイ王子が顔を向ける。
「ノエル。これからは僕が守る。命にかえて」
「はい……私もレイ王子のお役に立てるように、精一杯頑張ります」
レイ王子が遅れたことによりパーティーは大分延長されたが、誰一人として文句は言わなかった。
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