拾われ執事は王太子に執着される

王太子×元娼館雑用係の男爵家使用人のお話。

 表沙汰にできない仕事を任せている偏屈な昔馴染みミハエル・バイパー男爵が、ようやく使用人を雇ったと報告してきたのだから、ひと目見たいと思うのは当然だろう。

 彼の屋敷へと乗り込むと、小柄な執事が女主人であるアリスに、一方的に木刀で叩かれそうになっていた。
 素早い動きに対応できるはずがないだろうと眺めていたら、執事はギリギリの間でかわした。

 なるほど、普段人間に興味がないはずのアリスが拾ってきただけのことはある。

 菫色のポニーテールが揺れる様から、目が離せない。

 身につけているものは男性のものだが、白い肌や大きな目、小さな体躯はまるで女性で、少し頭が混乱する。

 つい、それを本人の前で言葉にしてしまったら、「ひと目で性別がわからないなんて、王太子殿下は人を見る目が無いのですか?」と返され、しまったと思った。

 失言だ。

 だが、王太子と知っても尚、嫌味を返してきた彼はとても魅力的に感じた。

 訪れた静寂から、自らの言葉の意味にようやく気づいたのか、彼の顔から血の気が引いていく。
 今まで何度も女性に間違われ、つい反射で返答してしまったということが、察せられた。

 先ほどまで威嚇する猫のように睨みつけてきていたのに、怯え始める。
 コロコロと変わる表情が新鮮で愛らしい。

 わかりやすい子だ。
 あぁ、私の手で振り回してもっとたくさんの表情を引き出してやりたい…。

 歪む口元を手のひらで隠した。

***

完結まで書けていないので、のんびり更新お許しください。
その為、途中色々変更する箇所があるかもしれません。ご了承ください。

主人夫妻のお話『裏稼業男爵に飼われるは元殺し屋の黒メイド』も書いています。
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