七虹精神隔離病院～闇は誰もが持っている！！～

蠢く闇

黒い蝶は空を舞う―Ⅸ―

「お前ら！何やってんだ！」

恋歌を取り囲んでいる男に声をかけると慌てたように男たちは身だしなみを整えながら立ち去って行った。
おそらくこの辺に居着いているホームレスだろう。
男が去れば慌てて恋歌に駆け寄った。
俺の声に恋歌も虚ろな瞳でこちらを見つめていた。

「大丈夫か？」

恋歌の体は近くで見ると、より痛々しく暴行の痕が顕になった。
恋歌の体に自身の来ていた黒のロングカーディガンを被せる。

「先生……ごめ、なさっ……」

ぎゅ、と顔をカーディガンに埋め、しきりに”ごめんなさい”と呟いている。
一体何があったというのか、聞こうとした時、暁が警察に連絡が終わったのかこちらへ駆け寄った。

「秋良先生！！勝手に行ったら危ないやろが！」

こちらに近づくなりバシ、と肩を叩かれた。
恋歌の姿を見れば恋歌に近づいてしゃがみこみ、良かったわ、と言って微笑みかける。
今触れても余計に刺激するだけ、とわかっている当たりやはりプロだなと隣で感心する。
救急車も無事に到着し、秋良は声をかけた時の様子などを伝え、自分達が医者である事を告げると、同行を許してくれた。
そのため恋歌の身体を支えながら救急車に乗り込めば恋歌は秋良にしがみついたまま眠ってしまった。
顔色の悪さや体に残る痣、目の隈などからほとんど寝かせて貰えなかったのだろうと察し、今はゆっくりと眠りについていいんだよと言わんばかりに恋歌の頭を撫でた。

病院に着けば空き部屋へと恋歌を抱き運んだ。
恋歌は起きることは無い。それほど自身を信用してくれているのかと思えば人として悪い気はしない。
ただ、恋歌が見つかり病院で保護できた以上次に優先するべきは雪成の行方だ。
雪成の事も明原に相談しているものの、依然として進展はない。
若しかすると恋歌が知っているのではないか、などと淡い期待を胸に抱えながら恋歌の体を綺麗にし、病院服を着せれば布団をかけて寝かせると病室を後にした。
暁はまだ病室に残るようで、おやすみ、と声をかけられ、そんなにのんびりしていて良いのかという焦りから返事もせずに扉を閉めた。