悪辣令嬢、媚薬を盛る

宵の月

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悪辣令嬢、好奇心に散る 後編

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「ふぅっ……んっ……はぁ……グラードォ……」
「どうだ? 浮気者の我が妻よ。標準的な男はお前を満足させてくれそうか?」
「んぁ……これやだぁ……抜いてぇ、グラードォ、抜いてぇ……」
「ダメだ。ちゃんと味わえ。かわいく泣いて見せても、今日ばかりは許さない」

 にちにちと音を立て、胎内に埋め込まれた異物に嫌悪しか感じない。自分のソコがこれじゃないと、追い出そうと蠢いているのが分かった。
 膣壁が張子を吐き出しても、グラードはまた奥へと無造作に押し込んでくる。全然気持ちよくない。それどころか、何かが入っている感触が気持ち悪い。

「これじゃないのぉ……これいやなのぉ……気持ち悪いよぅ……抜いてぇ、お願いだから……抜いてよぉ……」

 シクシク泣き出したアシェラを、グラードが冷ややかに見下ろした。金色の瞳が徐々に輝きを増し、瞳孔がゆっくりと縦になっていく。

「そうだよな? これじゃないよな? じゃあ、何が欲しいんだ? アシェラが欲しいのはなんだ?」

 濃くなる龍の気配に、とろりと瞳を蕩けさせたアシェラが、胎の奥から突き上げてくるような衝動に喘いだ。

「あ……あぁ……グラードが欲しい。グラードじゃなきゃやだ……お願い、グラード……」
「かわいい俺のアシェラ。理解できたか? お前は龍の女で、俺専用の俺だけの女だ。俺以外で二度と満たされることはない」
「分かったからぁ……だから抜いて! 早く抜いて!」

 にゅじゅると引き抜かれた張子に、嫌悪感が薄れアシェラはホッと息を抜いた。力の抜けたアシェラの腰が引き寄せられ、予告なくドラゴンが突き入れられる。

「んああああーーーーー!!」

 全身を貫く快楽と歓喜に、アシェラが絹を裂くような悲鳴をあげた。ずりずりと魔物が隘路を擦りたてるたびに、鮮烈な快楽に砕けたように腰が抜け無意識に揺れ動く。張子の不快感からの愉悦への落差が、甘い快楽に幸福感をもたらした。

「ふぅぁ、ああ……気持ちいい……気持ちいいよぉ……」
「う……あぁ、アシェラ、欲しいのはこれだな? これが欲しかったんだろ?」
「はい……はい……これがいい! これだけが欲しい!」
「かわいいアシェラ。お前は誰の女だ?」
「グラードのぉ……グラードだけの女なのぉ……ああっ! いいっ! もっとしてもっと! あぁ……いい……いきそう……いきそう……!」

 穿たれる腰に夢中になって腰をくねらせ、快楽に蕩けた舌足らずの声で喘ぎをこぼした。子宮をずしずしと揺らされる快楽に溺れ、湧き立つような熱が弾けようとした瞬間、グラードがぴたりと動きを止めた。
 一瞬何が起きたか分からないように、ぼんやり瞳を開けたアシェラが、見下ろすグラードの表情にうるりと顔を歪ませた。

「やだぁ……グラードォ……やめないで……お願い……いきたい、グラードォ……!」
「考えたんだが、浮気する妻を悦ばせるのはおかしくないか?」
「考えないでぇ! 今考えないでぇ! 後で考えてよぉ……なんで今なのぉ……」
「俺は愛する美しい妻に、浮気をされそうになって深く傷ついている。それなのに浮気した妻を悦ばせるのはおかしいだろう?」
「おかしくないもん! 妻だもん! グラードォ、意地悪しないでよぉ……」
「アシェラ、あのバナナを呼んできてやろうか? バナナで楽しむつもりだったもんな?」
「……うぅっ……いらないぃ! ごめ、なさい……ごめんなさい……二度としないからやめないで……グラードがいいの……グラードじゃなきゃダメなの……ごめんなさい……許して……」

 ボロボロ泣き出したアシェラに、グラードは金色の瞳を蕩けるように細めた。汗で張り付いた蜂蜜色の髪をかき上げ、メソメソ泣くアシェラの額に頬に首筋に、何度も何度も口付けを落とした。

「もうしないか? アシェラ。二度と俺の女を他の男に触らせないと誓うか?」
「ふぅ、うぅ……誓う、わ……誓う、から……二度としないから、お願い許して……」
「約束だぞ、俺のアシェラ。お前は俺だけのものだ」
「はい……はい……」
「浮気したら二度と抱いてやらないからな」
「……っ!! 絶対しないわ!」
「いい子だ、俺のかわいいアシェラ。愛してるよ……」

 ゆるゆると始まった優しい抽送は、切実に潤む隘路を愛おしげに擦りたてた。ボコボコと隆起する妖物が、膣壁の至る所を刺激して、最奥に穂先が当たるたびにジワリと快楽が胎から広がる。
 身体の境界が曖昧になるような緩やかな快楽に、アシェラが甘い吐息を吐き出しながら、腰を揺らした。

「はぁ……あっあっ……グラード……グラード……」
「アシェラ……アシェラ……俺の愛しいアシェラ……愛してる……愛してる……」
「グラード……いい……いい……あぁ……もう……グラード……!!」

 緩やかに確実に押し上げられていく快楽の頂から、ふわりと浮き上がるようにアシェラは静かに絶頂した。噛み殺した呻きを上げ、グラードも最奥にどぷどぷと煮えたぎった白濁を吐き出す。灼熱の熱が胎にいっぱいに広がるのを感じて、アシェラは幸福感に包まれながら、ゆっくりと目を閉じた。揺蕩うような快楽と恍惚に、アシェラは泣きたくなった。

(……私はもう、グラードだけのもの……)

 所有するのではなく、所有されている。それが嫌ではなかった。胸に抱いた幸福感と共に、眠りに落ちようとしたアシェラの下腹部が、ゴリっと深く抉られた。
 ギョッと目を開けたアシェラは、金色の瞳がギラギラと欲望に輝いているのを見つけた。あわあわと這いずった身体を強く引き寄せられる。

「……グ、グラード……私はもう……」
「さて、愛しい我が妻? まさかもう許されたとは思っていないな?」
「だ、だって……今日はもう……」
「最高に悪い子だった妻に、手加減は必要ないな?」
 
 引き寄せられた腰を抑えられたまま、グリッと魔物が向きを変える。四つん這いにされたアシェラの最奥に、もうアルティメットした魔物が、遠慮なく突き入れられた。

「ひぁあっ!! やぁ! グラード! もうだめ! もういらない!」
「いるかいらないかは俺が決める」

 言うなりずんずんと始まった律動に、余韻が落ち着きかけていた身体に、貫くような快楽が迸った。

「やぁ! だめぇ! グラードォ……もうだめ……おかしくなる、気持ち良すぎておかしくなっちゃうのぉ……」
「おかしくなるといい、アシェラ。どんなお前でも隅々まで愛してやろう……」

 泣き出した美しい妻の細腰を掴まえて、グラードは自分だけの専用になった媚肉に、妖物を突き立てる。龍を悦ばせるための身体は甘く蕩ける快楽で、グラードに恍惚とした快楽を与えてくる。

「あぁ……アシェラ……私の美しい妻……お前が唯一の俺の宝だ……」

 日頃のちょっとした悪さをしでかす気力も残らないお仕置き。それが実は本当は手加減されていたことを、アシェラはこの日、身をもって教えらることになった。

※※※※※

「……ねぇ、アシェラ様のあの首飾り……」
「そんな……違うわよね? ……グラード様がそんな……」

 使節団を見送る夜会。最高にご機嫌のグラードの横で、アシェラは最高にむすくれていた。華奢な白い首元を、王家の紋様ととりどりの宝石で彩られた宝飾品が飾っている。
 一見するとアシェラが好みそうな宝飾品は、中央は宝石ではなく金のプレートになっていた。近づいた者は、そのプレートに文字が書かれているのが確認できた。

『反省中。龍専用のためバナナお断り』

 何かしでかしたらしい。察した人々は、いたずらのお仕置きを受けている、猫のような王太子妃に口を噤んだ。
 むっつりと不機嫌でも、輝くように美しいアシェラに、グラードは甘く囁きかける。

「かわいい俺のアシェラ、今日はいい子にしているな?」
「…………」

 プイッと顔を背けたアシェラに、グラードは喉奥でくつくつと笑った。
 
 その昔、たくさんの財宝を愛でる龍がいた。さらなる宝を探しに出た先で、ドラゴンはドラクル王国の王女の美しさに心を奪われた。
 どんな宝物より美しい宝を見つけたドラゴンは、全ての宝物を差し出して王女に愛を乞うた。
 そして己に呪いをかけた。よき王として生きること。唯一の宝を愛し続けること。その誓いに背けば、ドラゴンの力を失うようにと。
 その呪いは子々孫々に受け継がれ、よき王として文武に励み、唯一の宝を定めたものだけが覚醒を許されるものとなった。優れた頭脳と強靭な身体。確実に子孫を残せるアルティメットなドラゴン。
 その全ては己の唯一を守り抜くために、祖先から与えられる龍の恩恵。
 妃教育もおざなりのままプリプリしている、美しいアシェラはいつ気づくだろうか。
 唯一を得て覚醒したグラードには、ことを。
 何度でもしでかすといい。何度でも思い知らせるから。美しいアシェラが、ボロボロと涙をこぼす姿は眩暈がするほど愛らしい。何度見ても飽きることはない。
 グラードがそっと、アシェラを引き寄せた。

「我が妻、アシェラ……お前はとても美しい……」
 
 特製の反省プレートに不機嫌丸出しのアシェラは、甘く囁き愛しげに口付けを落とすグラードにむすくれている。
 グラードのアシェラを見つめる愛しげな眼差しに、会場が息を呑んでざわりと揺れた。


※※※※※


 お付き合いありがとうございました。メインサイトにてリクエストをいただいているので、後日追加予定です。追加分もお楽しみ頂けたら幸いです。
 
 
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