県立青海高校争乱始末

６ 動き出す

翌日、青海侠学連合会本部に於いて緊急幹部会が召集された。

「お疲れ様です！」
「お疲れ様です！」
「お疲れ様です！」

本部前の両側にズラリと整列して、詰め掛けて来る幹部達に向かって、挨拶する組員達の最前列に陣取って、我々文芸部員も幹部の皆さんに深々と頭を下げ、クーラーボックスの中から注文の飲料を取り出し、代金を受け取った。

首領（ドン）襲撃の報を受けた直後で、幹部会に列席した幹部達の表情は張り詰めていた。

「この件でセンセイ（生徒会長）や光頭のキョウダイ（校長）には迷惑掛けれんけえの」

会議の席上で、会長、三好巌は言った。

「青海の本流、筋目はワシ等の方にあるんじゃ。ええか、ウチの代紋がかかっとるんじゃけんの。あの仁義をわきまえん外道等に筋言うもん教えちゃれ！」

「オオッス！」

三好の激に幹部達が応えた。

「ほったら、ヒットマン選びの方はワシの方でやらしてつかあさいや！」

「ワシの所で報道部にブチ込んでやりますけん！」

幹部達は気勢を挙げた。

．．．

（♪我は官軍、我が敵は天地入れざる朝敵ぞ♪）

侠学連合本部で緊急幹部会が開かれている頃、グラウンドでは吹奏楽部が演奏する（陸軍分列行進曲）が響き渡る中、新生徒会による、軍事パレードが挙行されていた。

「かしらー右！」

グラウンドを２列縦隊で行進する柔道部員の頭が一斉に観閲台の方に向けられる。

観閲台では、新生徒会の会長に就任した甘草静子報道部長の他、軍事委員長の石田岩介柔道部長、風紀保安委員長、花咲龍子茶道部長等、新生徒会執行部のメンバーがズラリと立ち並び、目の前を通り過ぎて行く部隊に答礼を返す。

観閲台の周囲にひしめいた新生徒会派の生徒や、見物の生徒達も部隊が通過して行く度に歓声を挙げた。

（続いて行進して参りますのは、新設されたばかりの報道部傭兵部隊、報道部特別行動隊）

アナウンスの後、青ヘルメットを被り竹竿で武装した２０人程の兵士が行進して行った。

式典が続いている中、グラウンドと校舎を隔てた階段の真ん中辺りにポツンと２人で立ち尽くした光頭校長と教頭の姿があった。

「勝手に集会を開くのは止めなさい！
グラウンドにいる生徒達は直ちに集会を中止して解散しなさい！
階段下にいる生徒達も焼きそばを焼くのを止めなさい！」

スピーカーを手にした校長がグラウンドに向かって必死に呼び掛けるが、その声は響き渡るマーチに空しくかき消されて行った。