県立青海高校争乱始末

１ 胎動

広島カープＢクラス転落のショックから、日本がようやく立ち直ろうとしていた
令和初頭の混乱の時代、瀬戸内地方の小都市、青海市にある県立青海高校に
於いても生徒同士による校内抗争が勃発。

ここにも全校生徒をも巻き込んだ全面抗争への萌芽が芽生え様としていた。

その発端は、青海高校生徒会長、本橋龍太郎が生徒会内において下級生の女子生徒
に対し、セクハラ行為、パワハラ発言等を繰り返していた問題に（騒乱女王）
（青高の最終兵器）の異名を取る報道部部長、甘草静子が食い付いた事だった。

甘草はこの問題を現生徒会、本橋体制の打倒と、報道部勢力拡大の好機と見た。

（日常的に繰り返されるハレンチ行為、暴言の数々）（退陣求める生徒達の声）
（あの噂の真相）（やはりあの男が・・・）

多少の盛り付けと憶測をも交えて連日大見出しで報じ、本橋の周辺に多数の記者を
張り付かせ、追い回させる一方で、密かにネット攻撃隊の編成、ハニートラップ計画
等の準備を急がせた。

「派手にやっちゃらにゃ、いけんのじゃけえな。頑張ってもっとネタを拾うて
来んさいよ」

甘草静子は眼鏡に手を当てながら喜々として気勢を挙げた。

一方、甘草静子の猛烈な糾弾キャンペーンが続く中、生徒会長、本橋龍太郎は生徒会長室に籠り一人苦悩の日々を送っていた。

「ママ。ママさえこの学校にいてくれたら、あんな女なんかちっとも怖くないのに。
やっぱりママがに側に居てくれないと、ボクは怖いし寂しいでちゅ」

本橋龍太郎は机の上で親指をおしゃぶりしながら、苦境を耐え忍んだ。

その後、本橋は報道部を（指定暴力部）に認定し、生徒会室の入口には（報道部
壊滅作戦本部）の看板が掲げられる事になったが、（乙女の祈り作戦）と名付け
られた報道部の熾烈な大攻勢の前には手も足も出なかった。

本橋は親指をしゃぶり倒しながら思案を巡らせ、やがて一つの結論に達した。

「やはり、あの男の力を使うより他に方法はあるまい」

本橋は決断した。