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海が見える喫茶店と銀行強盗の話

その3 海の見える喫茶店と銀行強盗の話 3

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渡辺センセイの後ろに付いて寒い外からカラカラ鳴るドアを開けて喫茶店の中に入ると暖房の効いた店内の温かみのある照明と雰囲気に少しホッとした気分になった。

僕と渡辺センセイは海と石油コンビナートが見渡せる窓際のテーブルに向かい合って座った。

渡辺センセイが上着を脱いだ時、スリムな体型にピッタリとしたセーターを着たセンセイの胸の型がはっきりしているのを見て僕は少しドキッとした。

ウェイトレスが盆に載せた熱いオシボリと水を持って注文を取りに来て、渡辺センセイと僕はブレンドコーヒーを注文した。

「吉岡クン、何か食べる?」

センセイにそう聞かれた時、テーブルの端のメニューにハムサンドとかミックスサンドとか書かれているのが目に入ったけど結局、遠慮した。

少し経ってからコーヒーが2つ運ばれて来た。

「吉岡クンは砂糖幾つ入れる?」

角砂糖の容器を手にした渡辺センセイから聞かれた時、僕は何と無く今日はブラックで飲もうかとか少し思ったけれど、結局1つ入れて貰った。

僕はいつもなら角砂糖なら2つ、スプーンで入れる時は入れられるだけ、ミルクもあれば出来るだけたくさん入れて飲んでいる。

センセイは自分のコーヒーに角砂糖を1つ入れ、小さい容器に入ったミルクも入れてからカップをスプーンでかき回した。

「そんでじゃけどなあ」

センセイがコーヒーを一口飲んだ後で言った。

「吉岡クンは学校でいつも一人だけでおるんじゃなあ」

そう言って僕の顔を見た。

「...」

僕はどう答えれば良いのかわからなかったので黙っていた。

「ウチのクラスに一緒に遊んだり話をしたりする友達はおらんのん?」

「ええ、まあ」

僕は何だかバツが悪く、曖昧に返事をした。

センセイは小さくため息をついた。

「あんなあ、吉岡クン、いつまでもそんなじゃったらいけんよ」

センセイは言った。

「もっとクラスのみんなと色んな話とかをしてみたりせんと。ずっと一人だけでおったら、いつまで経っても他人との付き合い方とかがわかる様にはなれんのよ」

センセイはそう言って、またコーヒーを一口飲んだ。

僕はどう答えれば良いのか少し考え、それから口を開いた。

「自分の目でいろんな物を見てみたり、実際に体験してみない事には世の中の事が本当にはわかる事が出来ないみたいにですか?」

僕がそう答えるとセンセイは少し目を見開いて、それから手に持ったコーヒーカップを置いた。

窓の外は相変わらず寒々しい厚い雲に覆われていて雨か雪が降り出しでもおかしく無い位だった。


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