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22 ジェム隊長の提案

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「それはともかくとして、見たところ君達はどうやら何も持たずに、島の一番外れにあるこの浜にいるようだ」

ジェム隊長が僕らを見て言った。
彼の言う通り、今の僕らは身に付けているモノ以外には何も持っていない。
僕も龍雄も気が付いたら、いつの間にか体一つで砂浜のど真ん中にいた。
僕が家を出る時に持っていたリュックサックや、龍雄の荷物は、恐らくまだ町の駅の待合室のベンチに置かれたままになっている筈だ。

「この辺りは三日月の形をした小月島の北の端にあたる場所だ。
小月島は満月の形をした目の前の大月島に比べれば、とても小さな島だが、それでも此処から一番近くの村迄は君達の足で歩いて行くにはかなりの距離がある」

ジェム隊長の口振りからすれば、この島は僕らが思っていた程には小さくは無い様だった。
恐らく僕らが今いる浜は見通しの効かない場所なのだろう。

「いずれ太陽が西に沈んでしまえば、夜がやって来る。
君達もずっと此処に居続ける訳にも行かないだろう。
一先ず我々の砦に来てはどうか?」

ジェム隊長は言った。
予期しなかった展開に僕と龍雄は戸惑ってお互い顔を見合わせたけど結局、僕らは彼に共に(岬の砦)に向かう事になった。
僕と龍雄はジェム隊長の後ろを他の3人の兵士に囲まれる様にして、彼等が現れた方角、浜の東の端に見える丘の麓の茂みに向かって歩き出した。
僕も龍雄も彼等が気になってお互い何も言い出せず黙ったまま並んで歩いた。
未だに此処が一体世界のどの辺りなのかも、今いるこの島が僕らにとっての元の世界と果たして同じ時系列なのかどうかもわからない。
何より一体何故、僕らは違う言語を持つ彼等と会話による意志疎通が可能なのだろう。
僕らは何もわからまま、いつの間にか島の住人のテリトリーに入って行く事になってしまった。
無意識に腕時計に目をやると14:48の表示が目に入る。
恐らく龍雄に起こされた僕が浜で目を覚ましてから、まだ一時間も経っていない気がする。
僕の左隣を謎の動物に騎乗して進んでいた若い兵士が僕が目にしている腕時計を不思議そうに目を丸くして覗き込んでいた。
僕は腕時計の他にはジーパンの右ポケットに二つ折りの財布を持っていたけれど、それがこの場所で何かの役に立つとは思えなかった。
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