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9 駅の待合室で起こった異変

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「それにしても今日はホンマに暑いのう」

龍雄が駅舎の外に照り付ける陽射しを恨めしそうに眺めながら言った。

良く見ると龍雄は相当汗だくになっていた。

「ホンマにのう」

僕はそう答えながら、その時ついさっき外からこの日陰の待合室に入って来た自分が、汗が引くどころか更にTシャツがびっしょりになる程、汗だくになっている事に気付いた。

僕は周囲に響く蝉の鳴き声を聞くとも無く、聞きながら今日は何故こんなに暑いのだろうと考えている内に、どうも違和感を覚え始めた。

今、この駅舎の中はいくら何でも暑すぎる様な気がする。

しかも何と無く、この場所の気温は今も少しずつ、でもはっきりと上がり続けている様な気がする。

異常な感じがした。

龍雄の方を見ると、最近では周りからバケモノ呼ばわりされているタフな大男が今では苦しそうな表情を浮かべて、ベンチでぐったりしゃがみ込んでいる。

僕もついに彼の向こう側の壁の時計に視線を向けた時に強い眩暈を感じた。

頭がぼんやりしてきて、急に突然体が目に見えない不思議な力で右から押されている様になって僕はベンチから左側に押し倒されそうになった。

僕はベンチに座ったまま、体を踏ん張らせてその力に逆らっていたけど、激しく目が回る感覚に耐えきれず、しゃがみ込んで目を瞑った。

次第に意識が遠退いて来て、駅舎の外の蝉の鳴き声が遠去かっていくのを感じた。
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