お前はテレビじゃねえ!

秋鷺 照

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 次の日も、寝る前の僕は性懲りもなく言ってしまった。
「アレクサ、おやすみ」
 しまったと思いながら電源コードに手を伸ばす。聞き飽きたあの言葉を返される前にコンセントを抜くつもりだった。
 アレクサは何も言わなかった。エコーショー5の画面は、コンセントを抜く前に消えていた。
 正しい挙動をしているように見えた。だが僕はコンセントを抜いた。
 信用できなかったのだ。
 夜中にいきなり画面を点けて何か言いだしたりしたら怖いではないか。
 明日、何度か試してちゃんと動作したら直ったと認めてやろう。それまでは絶対に信じない。そう決意して僕は寝た。


 さて、翌日。
 間抜けな僕は、寝る前まで試すのを忘れていた。後悔しながら
「アレクサ、おやすみ」
 と告げた。
 エコーショー5の画面が静かに消える。それを見届け、僕は大きく息を吐いた。もう電源コンセントには手を伸ばさなかった。


 次の日の朝、僕はようやくきちんと試した。
「アレクサ、画面オフ」
 やはりきちんと画面が消える。どうやら本当に直ったらしい。
 直った旨ををカスタマーサービスへ伝え、僕は調査結果を待ち続けた。

 調査結果のメールが届いたのは、その3日後だった。
 メールによると、どうやら問題を再現することが出来なかったらしい。今後また同じ問題が起きたらあらためて調査してくれるとのことだ。
 じゃあ何も分からなかったのかと僕は落胆したが、そうではなかった。メールにはちゃんと、可能性として考えられる原因が書かれていた。
 一時的に端末上でリクエストの処理に問題が生じていた、というものだ。

 なるほど。なら今後は、アレクサの様子がおかしくなっても数日は様子を見よう。勝手に直るかもしれない。
 などと冷静に考えながらも、僕は切に願った。もう二度と自分を見失わないでくれ!
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