2 / 4
2
しおりを挟む
という訳で、レッグは一人で魔王の前まで来た。
「あーあ、戦いたくねぇなぁ」
「第一声がそれか、勇者よ」
魔王が呆れた声を出す。レッグは肩を竦めた。
「だって俺、一人なんだぜ?」
「そういえば……勇者パーティーが来ると思っていたのだが……何故一人なのだ。仲間はどうした」
「魔王を恐れて逃げた」
レッグは吐き捨てるようにそう答えてから、改めて言う。
「で、俺は今、全く戦う気が起きねぇ。どうすれば良い?」
「余に聞かれても……」
「そういや、魔族領って良い茶葉があるらしいな?」
「あ、ああ……」
「飲んでみたいなぁ」
「……では、お茶にするか」
「ぃよっしゃ!」
「……」
押し切られた形になった魔王は渋面を浮かべたが、勇者があまりに嬉しそうなので、とりあえずお茶を楽しむことにした。
魔王城で働く魔族が、淹れたての茶を運んでくる。レッグと魔王の前にカップが置かれ、コポコポと心地良い音を立てながら茶が注がれた。
「うーん、良い匂いだ!」
レッグは早速カップに口を付けようとする。それを魔王が慌てて止めた。
「待て、交換だ」
「え?」
「どうにも無粋な部下がカップに毒を塗ったようだ」
「俺に毒なんて効かないぜ?」
「茶の味が変わってしまう。折角だから、本来の美味さを味わってもらいたい」
その言葉に、レッグはしばし呆気に取られ、それから大きな笑い声を上げた。
「はははっ、そう来たか……っ、くくっ……あんた変わってるな!」
「変わっているのはお前だろう、勇者。魔王とお茶して喜ぶ勇者なんて聞いたことも無いぞ」
「違いねぇ」
レッグは笑いながら、交換されたカップから茶をすする。そして、ふぅと息を吐き、満足そうに一言。
「美味い」
「だろう。他にも良い茶葉は色々あるが、余はこれを一番気に入っている」
「あー、ますます戦いたくなくなってきた。ずっとここにいたい」
「本当におかしな奴だな。茶を飲みたいがために人類を見捨てるつもりか?」
「いや、それだとあのクズどもと一緒だ。俺は勇者として、魔族の侵攻を止める責務がある」
「なら」
戦うしかないだろう、と言いかけた魔王を遮り、レッグは告げる。
「休戦しようぜ」
「あーあ、戦いたくねぇなぁ」
「第一声がそれか、勇者よ」
魔王が呆れた声を出す。レッグは肩を竦めた。
「だって俺、一人なんだぜ?」
「そういえば……勇者パーティーが来ると思っていたのだが……何故一人なのだ。仲間はどうした」
「魔王を恐れて逃げた」
レッグは吐き捨てるようにそう答えてから、改めて言う。
「で、俺は今、全く戦う気が起きねぇ。どうすれば良い?」
「余に聞かれても……」
「そういや、魔族領って良い茶葉があるらしいな?」
「あ、ああ……」
「飲んでみたいなぁ」
「……では、お茶にするか」
「ぃよっしゃ!」
「……」
押し切られた形になった魔王は渋面を浮かべたが、勇者があまりに嬉しそうなので、とりあえずお茶を楽しむことにした。
魔王城で働く魔族が、淹れたての茶を運んでくる。レッグと魔王の前にカップが置かれ、コポコポと心地良い音を立てながら茶が注がれた。
「うーん、良い匂いだ!」
レッグは早速カップに口を付けようとする。それを魔王が慌てて止めた。
「待て、交換だ」
「え?」
「どうにも無粋な部下がカップに毒を塗ったようだ」
「俺に毒なんて効かないぜ?」
「茶の味が変わってしまう。折角だから、本来の美味さを味わってもらいたい」
その言葉に、レッグはしばし呆気に取られ、それから大きな笑い声を上げた。
「はははっ、そう来たか……っ、くくっ……あんた変わってるな!」
「変わっているのはお前だろう、勇者。魔王とお茶して喜ぶ勇者なんて聞いたことも無いぞ」
「違いねぇ」
レッグは笑いながら、交換されたカップから茶をすする。そして、ふぅと息を吐き、満足そうに一言。
「美味い」
「だろう。他にも良い茶葉は色々あるが、余はこれを一番気に入っている」
「あー、ますます戦いたくなくなってきた。ずっとここにいたい」
「本当におかしな奴だな。茶を飲みたいがために人類を見捨てるつもりか?」
「いや、それだとあのクズどもと一緒だ。俺は勇者として、魔族の侵攻を止める責務がある」
「なら」
戦うしかないだろう、と言いかけた魔王を遮り、レッグは告げる。
「休戦しようぜ」
10
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します
かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。
追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。
恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。
それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。
やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。
鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。
※小説家になろうにも投稿しています。
パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる
日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」
冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。
一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。
「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」
そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。
これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。
7/25男性向けHOTランキング1位
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
勇者の国~行き過ぎた主義の結果~【短編】
キョウキョウ
ファンタジー
ある時代に、勇者至上主義にしている王国があった。
そんな国で冒険者として働いていた男が居た。
彼のもとに、勇者の補佐という仕事を依頼しに4名の騎士が来る。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~
日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。
田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。
成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。
「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」
彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で……
一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。
国王や王女は気づいていない。
自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。
小説家になろうでも短編として投稿してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる