怖いからと婚約破棄されました。後悔してももう遅い!

秋鷺 照

文字の大きさ
上 下
2 / 4

2 フレッドの思い

しおりを挟む
 フレッドは14歳の時から5年間ずっと、ローゼとの婚約を破棄する機会をうかがっていた。
 ローゼとは幼馴染だった。物心つく前に婚約が決められていたため、一緒に過ごすことが多かったのだ。
 幼い頃は、可愛いローゼとの婚約に乗り気であった。しかし、成長するにつれ、そのような思いは霧散した。
 怖くなったのだ。
 共に剣術の稽古をしていたが、ローゼの方がずっと強かった。共に魔法の稽古をしていたが、ローゼの方がずっと強かった。
 いつかこの強さが自分に牙をむくような気がして、恐ろしくなった。結婚すればこの恐怖がずっとつきまとう。それが我慢ならなかった。
 こうしてフレッドは、いつか婚約破棄を切り出そうと思いながらも、恐ろしくてなかなか実行に移せないでいた。
 転機は19歳になった直後に訪れた。運命の人と出会ったのである。
 勇気が湧いた。彼女と婚約するためならば、恐ろしいローゼに婚約破棄を切り出すことが出来る——そんな勇気が。

「きゃっ」

 レンガの隙間に足を取られた彼女を、フレッドは慌てて支える。
「大丈夫か?」
「ええ、ありがとう」
 そう言ってふわりと微笑む彼女は、ローゼと違って儚げだ。
 あのパーティーから2週間が経過していた。ローゼとの婚約は正式に解消され、このか弱い令嬢との婚約が認められた。
 フレッドは上機嫌で彼女と街を出歩いていた。

「ねえ、フレッド様。私、あっちに行ってみたいわ」

 彼女が指さす方を見て、フレッドは首を傾げる。
「あっちには何もないぞ」
「行ってみなくちゃ分からないじゃない」
「でもなぁ……」
 フレッドは難しそうな顔をした。彼女の望む方へ行けば、王都を出ることになる。
「僕は勝手に王都から出てはいけないらしいんだ」
「誰に言われたの?」
「……まあ良いか。行こう」
 王都を出るなとは両親に言われたのだが、何だか恥ずかしかったので誤魔化した。すぐに戻れば問題無いだろう。
 2人はそのまま王都を出て行く。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

お飾りの聖女は王太子に婚約破棄されて都を出ることにしました。

高山奥地
ファンタジー
大聖女の子孫、カミリヤは神聖力のないお飾りの聖女と呼ばれていた。ある日婚約者の王太子に婚約破棄を告げられて……。

【完結】数十分後に婚約破棄&冤罪を食らうっぽいので、野次馬と手を組んでみた

月白ヤトヒコ
ファンタジー
「レシウス伯爵令嬢ディアンヌ! 今ここで、貴様との婚約を破棄するっ!?」  高らかに宣言する声が、辺りに響き渡った。  この婚約破棄は数十分前に知ったこと。  きっと、『衆人環視の前で婚約破棄する俺、かっこいい!』とでも思っているんでしょうね。キモっ! 「婚約破棄、了承致しました。つきましては、理由をお伺いしても?」  だからわたくしは、すぐそこで知り合った野次馬と手を組むことにした。 「ふっ、知れたこと! 貴様は、わたしの愛するこの可憐な」 「よっ、まさかの自分からの不貞の告白!」 「憎いねこの色男!」  ドヤ顔して、なんぞ花畑なことを言い掛けた言葉が、飛んで来た核心的な野次に遮られる。 「婚約者を蔑ろにして育てた不誠実な真実の愛!」 「女泣かせたぁこのことだね!」 「そして、婚約者がいる男に擦り寄るか弱い女!」 「か弱いだぁ? 図太ぇ神経した厚顔女の間違いじゃぁねぇのかい!」  さあ、存分に野次ってもらうから覚悟して頂きますわ。 設定はふわっと。 『腐ったお姉様。伏してお願い奉りやがるから、是非とも助けろくださいっ!?』と、ちょっと繋りあり。『腐ったお姉様~』を読んでなくても大丈夫です。

私、パーティー追放されちゃいました

菜花
ファンタジー
異世界にふとしたはずみで来てしまった少女。幸いにもチート能力があったのでそれを頼りに拾ってもらった人達と働いていたら……。「調子に乗りやがって。お前といるの苦痛なんだよ」 カクヨムにも同じ話があります。

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~

銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。 少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。 ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。 陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。 その結果――?

金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~

アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」  突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!  魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。 「これから大災厄が来るのにね~」 「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」  妖精の声が聞こえる私は、知っています。  この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。  もう国のことなんて知りません。  追放したのはそっちです!  故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね! ※ 他の小説サイト様にも投稿しています

処理中です...