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「……おーい、木崎!」
「ちっ、あいつ、どこで寝てんだ?」
「まさか、死んでねーよな。
ゾンビになんて、なってないよな。
くそっ木崎!
どこにいる?」
木崎は遠くから自分を呼ぶ声が聞こえた。
そのおかげか、意識がだんだんともどってきた。
(あー、俺、もしかして意識不明になっていた?)
あの試料を飲んで、すぐにめまいと気持ち悪さに襲われて、床へ倒れるように横になったところまで覚えている。
時計を見たら、飲んでから結構な時間が経っていた。
しかし、体が重い。
起きあがるには、まるで体を床から引き剥がすような重労働であった。
それでも何とか起き上がれた。
ただ、一度、起きあがってみれば、何となく、体が軽くなっている感じがする。
(あの試料の効果か?)と疑問に思いつつ、周囲を見回してみた。
キョロキョロと周りを確認したところ、当然ながら、そこはあの時に倒れた倉庫であった。
廊下からまだ木崎を呼ぶ声が聞こえるので、倉庫からでることにした。
「おーい、ごめん!
俺はここだよ。もう交代の時間だったな。」
「あ、木崎!……無事か?」
「おい?何だか顔色が悪いぞ?」
廊下で木崎を探していた関井と藤木に会った。
「わりぃ!ちょっと探し物していたら、そこで寝落ちしたみたいでさ」
「自殺か、ゾンビ化したかと思って心配していたんだが……」
「お、お前……」
へらりと笑ってごまかす木崎に、二人が突然、何か気づいたように顔を青褪めた。
「ん?どした?」
「おまっ、その右手、消えかけて……」
「もしやお前……幽霊なのか?」
木崎の手をさして、縁起でもないことを言う二人。
「え?」
木崎も指をさされた自分の右手をあらためて確認する
すると、なんと、木崎の右手の一部が消えかけていた。
慌てて、手が元に戻るように念じてみたら、すぐに戻ったのが……。
(こ、これはもしや!
あのステルス機能か!?)
しばらく、二人が見守る中、木崎は手をぐーぱーしながら、自分の意思で手が消えたり、現れたりするのを確認していた。
(おおー、すごいな!
自分の意思で消せるぞ!
マウスの時も、実はマウスの意思で半端なステルス機能だったのか?
それとも人間に投与したからか?
どちらにしろ、目的通りの能力だ!!)
木崎が感動と興奮をしていると、関井と藤木の二人がひそひそ話をしてから、やっと木崎に話しかけてきた。
「お前、俺らの中で一番メンタル弱かったしな……」
「はやまったことしたな……」
「おいおい!なんでそんな残念なものを見るようにしている!?」
「だってな……」
「もしかして自覚ないのか?」
「これはな、実は俺が透明になる成分を偶然発見して、それを服用したおけげで身に付いた能力なんだ。
いわばステルス機能みたいなものだよ」
「は?透明になる成分?」
「ステルス機能ってなんだそれ?」
「ふふん、自分の意思で消えたり、現れたりできる能力、つまり透明人間さ」
「え?」
「透明人間?」
「そうだ、透明人間だよ!!ははっすごいだろう!」
そう言ってから笑って、木崎は自分の手を消したり、現わしたりしてみた。
「うおっ」
「なあ、それって自分の意思でコントロールできるものなのか?」
「ああ、そうみたいなんだ」
へー、ほー、なんでなんで、と二人がやたらと不思議がって質問してくる。
「なあ、じゃあ、透明化しているときは物とか持とうとしてもすりぬけるのか?
そのかわり、壁とか通り抜けできるのか?」と関井が興味津々に聞いてくる。
「もしかして、空とかも飛べたりするのか?」と藤木まで、やや興奮したように聞いてくる。
「実体化しているときは、当然、今までどおり普通だぞ。
消えていても、視覚的に見えないだけで、体はそのままそこにあるから、幽霊じゃないんだから、通り抜けも空も飛べねーぞ」
「えっ!そうなのか?」
「へー、それなら……」
次々と質問攻めにあう木崎。
とりあえず、透明な状態でも、物を普通に持てることが確認できた。
透明な状態で持っている姿はまるで空中に物が浮かんでいるように見える。
しかし、透明な状態であろうとも当然、持っている物は透明にならない。
着ている洋服も。
つまり、木崎が全身消えるためには、全裸にならないといけない。
(色々と無理だ)
ゾンビから逃げるのに、全裸とか痛すぎるし、むしろ危険だろ。
たとえ服を持って逃げたとしても、全裸だと怪我とかの危険も高くなる。
やっぱり、夢のように、必要な時に服を含めて透明になるなんて無理な話だった。なかなかうまくいかないものだな~と残念がる木崎。
しかも、よく考えれば、あの試料は服用することで体を透明にするから、夢のせいで気づけなかったが、服は透明になることはない。
そのことに、飲む前に気づけよ自分!、と木崎は自分の浅慮さに、あらためてがっかりしていた。
透明人間化はある意味成功だが、目的からは外れていることは否めない。
がっかりする木崎の心情もしらず、関井と藤木は、それからも色々と木崎に聞いてきて、二人から言われたことをやったりと、3人で木崎の能力の、その場でできる検証をしてみた。
そこへ、中辺がやってきた。
「おい!木崎、見つかったのか?」
「ああ、木崎なら見つかったぞ」
「あまり、無事ではないみたいだがな……」
関井と藤木が微妙な顏で木崎をみる。
「よ、中辺!心配かけたなー!!」と木崎は明るく中辺に手を振った。
「はあ?
……おいおい、何だそれ!?」と中辺が木崎の姿をみて固まった。
(あ、手がまだ消えていたか)
急いで手を出現させて、ひらひらと振った。
「これは……。
おい、一体、どういうことだ?」
「あー、これはな……」と関井が中辺へ説明してくれようとして。
なぜか二人してひそひそと木崎に聞こえないように話し合っている。
「……」
「……」
「…何だと!?透明人間だって?……」
「そう、透明人間っていうか……」
「ばかなっ、そんなことが可能なのか?」
「でもな……」
「そうなんだ。でも、問題は……」
「ああ、そうしないと……」
「……」
「……」
二人で内緒の打ち合わせは何を話しているのか、聞こえなかった。
関井、中辺は普段から、今みたいによくひそひそ話をしていた。
一方、好奇心旺盛な藤木は、木崎に透明人間になった経緯やその成分について根ほり葉ほり聞いてきた。
「その実験にはマウスをつかったのか?
何匹くらい?」
「毒性試験はどうだったんだ?試験結果は報告書をあげていないのか?」
「そこの倉庫でこっそり飲んでいたのか?
まだその試料の残りはあるのか?」
一旦、研究者モードになった藤木は、ある意味、研究熱心というか、しつこいというか、スイッチが入ると話が長くて面倒になる。
苦笑しながら木崎が藤木の質問攻撃に答えていたところに、階下まで行っていた管山が戻ってきた。
「おい!!何をのんきにだべっていやがる。
木崎のクソやろーは見つかったのか?」
みんなでのんきに話し合っているようにみえたらしく、管山は、イライラ度マックスで聞いてきた。
(開口一番がそれか。心配してねーなーこいつは……)
木崎は呆れながらも、管山の細く陰湿な目で睨みつけられて、思わず、藤木の後ろに隠れて、全身を透明にしてみた。洋服だけ残っても、藤木の背後で何とか見えないように隠れた。
「あ、おい!木崎?」
「うおっ、本当に消えるんだな」
「あー、服以外、ホントみえねーな」
藤木、
「はあ?お前ら何いってんだ?」と事情を知らない管山が、更に苛立つ。
「あー、何と言うか。木崎が特殊能力に目覚めてな」
「木崎な、ちょっと透明人間になれるようになっちまってな」と関井と藤木が困って説明しようとする。
「おいおい、それじゃあよくわからんだろう。
とりあえず、俺が詳しく説明しておくよ。
あと、俺らはもう体力的に限界だから仮眠をとらせてもらうな。
今度はお前らで見張りを頼む。
ほら管山、話すから、こっちこいよ!」
中辺が管山を休憩室へ連れて行ってくれた。
(そっか、俺を探していたせいで、休めなかったのか)
ちょっと反省した木崎は、また全身を現わした。
「おうっと!いきなり現れるな。ビックリするだろ」
「すげー能力だよな!」と言う関井、藤木は、木崎と一緒に、屋上へ見張りに行くことになった。
屋上で関井、藤木、木崎の3人で見張りをして数時間は経過した時だった。
ガッシャン、ガッシャン!
遠くで何者かが、金属音を響かせているのが聞こえた。
グルッと360度見回して、音の出どころを探すと、どうやら会社の敷地を囲う門の入口の方で聞こえた。
階下でみつけた双眼鏡でみてみると、思った通りゾンビ1体、会社の敷地内に入ろうと、閉めた金属の門を押したり、ゆらしたりして開けようとしているようであった。
関井が急いで、休憩室で仮眠をとっている中辺と管山に知らせにいった。
木崎は、そのゾンビの近くに他のゾンビがいないかの確認のため、双眼鏡でよくゾンビをみてみると、ふと気づいた。
(今、会社の門を開けようとしているゾンビ、見覚えがある……)
そのゾンビは血だらけの姿であったが、見覚えのあるスーツを着ていて、喰われたせいか首は傾き、ややもげそうな感じで、でもあの禿げかけた髪型や、背格好は……。
「ああ、石沢課長だ」
木崎がつぶやいた言葉に藤木もはっとする。
藤木と二人で思わず顔を見合わせた。
ゾンビとして復活した石沢課長が会社まで来たのだ。
それはゾンビになっても残っていた習性か、木崎たちがここにいるからか……。
一度目は木崎たちを助けるため。
二度目は木崎たちを襲うために来た石沢課長。
これから自分たちが見捨てた石沢課長と戦わないといけないのか……。
そんな感傷にひたりながら、無言で藤木と木崎は武器を準備したり、逃げる際の荷物などをまとめたりした。
最悪、他のゾンビ達までもが会社敷地内に入りこみ、この建物まで襲いにくる可能性もあり、その際の戦う対抗策も含めて、避難経路の準備とともに動き始めた。
「ちっ、あいつ、どこで寝てんだ?」
「まさか、死んでねーよな。
ゾンビになんて、なってないよな。
くそっ木崎!
どこにいる?」
木崎は遠くから自分を呼ぶ声が聞こえた。
そのおかげか、意識がだんだんともどってきた。
(あー、俺、もしかして意識不明になっていた?)
あの試料を飲んで、すぐにめまいと気持ち悪さに襲われて、床へ倒れるように横になったところまで覚えている。
時計を見たら、飲んでから結構な時間が経っていた。
しかし、体が重い。
起きあがるには、まるで体を床から引き剥がすような重労働であった。
それでも何とか起き上がれた。
ただ、一度、起きあがってみれば、何となく、体が軽くなっている感じがする。
(あの試料の効果か?)と疑問に思いつつ、周囲を見回してみた。
キョロキョロと周りを確認したところ、当然ながら、そこはあの時に倒れた倉庫であった。
廊下からまだ木崎を呼ぶ声が聞こえるので、倉庫からでることにした。
「おーい、ごめん!
俺はここだよ。もう交代の時間だったな。」
「あ、木崎!……無事か?」
「おい?何だか顔色が悪いぞ?」
廊下で木崎を探していた関井と藤木に会った。
「わりぃ!ちょっと探し物していたら、そこで寝落ちしたみたいでさ」
「自殺か、ゾンビ化したかと思って心配していたんだが……」
「お、お前……」
へらりと笑ってごまかす木崎に、二人が突然、何か気づいたように顔を青褪めた。
「ん?どした?」
「おまっ、その右手、消えかけて……」
「もしやお前……幽霊なのか?」
木崎の手をさして、縁起でもないことを言う二人。
「え?」
木崎も指をさされた自分の右手をあらためて確認する
すると、なんと、木崎の右手の一部が消えかけていた。
慌てて、手が元に戻るように念じてみたら、すぐに戻ったのが……。
(こ、これはもしや!
あのステルス機能か!?)
しばらく、二人が見守る中、木崎は手をぐーぱーしながら、自分の意思で手が消えたり、現れたりするのを確認していた。
(おおー、すごいな!
自分の意思で消せるぞ!
マウスの時も、実はマウスの意思で半端なステルス機能だったのか?
それとも人間に投与したからか?
どちらにしろ、目的通りの能力だ!!)
木崎が感動と興奮をしていると、関井と藤木の二人がひそひそ話をしてから、やっと木崎に話しかけてきた。
「お前、俺らの中で一番メンタル弱かったしな……」
「はやまったことしたな……」
「おいおい!なんでそんな残念なものを見るようにしている!?」
「だってな……」
「もしかして自覚ないのか?」
「これはな、実は俺が透明になる成分を偶然発見して、それを服用したおけげで身に付いた能力なんだ。
いわばステルス機能みたいなものだよ」
「は?透明になる成分?」
「ステルス機能ってなんだそれ?」
「ふふん、自分の意思で消えたり、現れたりできる能力、つまり透明人間さ」
「え?」
「透明人間?」
「そうだ、透明人間だよ!!ははっすごいだろう!」
そう言ってから笑って、木崎は自分の手を消したり、現わしたりしてみた。
「うおっ」
「なあ、それって自分の意思でコントロールできるものなのか?」
「ああ、そうみたいなんだ」
へー、ほー、なんでなんで、と二人がやたらと不思議がって質問してくる。
「なあ、じゃあ、透明化しているときは物とか持とうとしてもすりぬけるのか?
そのかわり、壁とか通り抜けできるのか?」と関井が興味津々に聞いてくる。
「もしかして、空とかも飛べたりするのか?」と藤木まで、やや興奮したように聞いてくる。
「実体化しているときは、当然、今までどおり普通だぞ。
消えていても、視覚的に見えないだけで、体はそのままそこにあるから、幽霊じゃないんだから、通り抜けも空も飛べねーぞ」
「えっ!そうなのか?」
「へー、それなら……」
次々と質問攻めにあう木崎。
とりあえず、透明な状態でも、物を普通に持てることが確認できた。
透明な状態で持っている姿はまるで空中に物が浮かんでいるように見える。
しかし、透明な状態であろうとも当然、持っている物は透明にならない。
着ている洋服も。
つまり、木崎が全身消えるためには、全裸にならないといけない。
(色々と無理だ)
ゾンビから逃げるのに、全裸とか痛すぎるし、むしろ危険だろ。
たとえ服を持って逃げたとしても、全裸だと怪我とかの危険も高くなる。
やっぱり、夢のように、必要な時に服を含めて透明になるなんて無理な話だった。なかなかうまくいかないものだな~と残念がる木崎。
しかも、よく考えれば、あの試料は服用することで体を透明にするから、夢のせいで気づけなかったが、服は透明になることはない。
そのことに、飲む前に気づけよ自分!、と木崎は自分の浅慮さに、あらためてがっかりしていた。
透明人間化はある意味成功だが、目的からは外れていることは否めない。
がっかりする木崎の心情もしらず、関井と藤木は、それからも色々と木崎に聞いてきて、二人から言われたことをやったりと、3人で木崎の能力の、その場でできる検証をしてみた。
そこへ、中辺がやってきた。
「おい!木崎、見つかったのか?」
「ああ、木崎なら見つかったぞ」
「あまり、無事ではないみたいだがな……」
関井と藤木が微妙な顏で木崎をみる。
「よ、中辺!心配かけたなー!!」と木崎は明るく中辺に手を振った。
「はあ?
……おいおい、何だそれ!?」と中辺が木崎の姿をみて固まった。
(あ、手がまだ消えていたか)
急いで手を出現させて、ひらひらと振った。
「これは……。
おい、一体、どういうことだ?」
「あー、これはな……」と関井が中辺へ説明してくれようとして。
なぜか二人してひそひそと木崎に聞こえないように話し合っている。
「……」
「……」
「…何だと!?透明人間だって?……」
「そう、透明人間っていうか……」
「ばかなっ、そんなことが可能なのか?」
「でもな……」
「そうなんだ。でも、問題は……」
「ああ、そうしないと……」
「……」
「……」
二人で内緒の打ち合わせは何を話しているのか、聞こえなかった。
関井、中辺は普段から、今みたいによくひそひそ話をしていた。
一方、好奇心旺盛な藤木は、木崎に透明人間になった経緯やその成分について根ほり葉ほり聞いてきた。
「その実験にはマウスをつかったのか?
何匹くらい?」
「毒性試験はどうだったんだ?試験結果は報告書をあげていないのか?」
「そこの倉庫でこっそり飲んでいたのか?
まだその試料の残りはあるのか?」
一旦、研究者モードになった藤木は、ある意味、研究熱心というか、しつこいというか、スイッチが入ると話が長くて面倒になる。
苦笑しながら木崎が藤木の質問攻撃に答えていたところに、階下まで行っていた管山が戻ってきた。
「おい!!何をのんきにだべっていやがる。
木崎のクソやろーは見つかったのか?」
みんなでのんきに話し合っているようにみえたらしく、管山は、イライラ度マックスで聞いてきた。
(開口一番がそれか。心配してねーなーこいつは……)
木崎は呆れながらも、管山の細く陰湿な目で睨みつけられて、思わず、藤木の後ろに隠れて、全身を透明にしてみた。洋服だけ残っても、藤木の背後で何とか見えないように隠れた。
「あ、おい!木崎?」
「うおっ、本当に消えるんだな」
「あー、服以外、ホントみえねーな」
藤木、
「はあ?お前ら何いってんだ?」と事情を知らない管山が、更に苛立つ。
「あー、何と言うか。木崎が特殊能力に目覚めてな」
「木崎な、ちょっと透明人間になれるようになっちまってな」と関井と藤木が困って説明しようとする。
「おいおい、それじゃあよくわからんだろう。
とりあえず、俺が詳しく説明しておくよ。
あと、俺らはもう体力的に限界だから仮眠をとらせてもらうな。
今度はお前らで見張りを頼む。
ほら管山、話すから、こっちこいよ!」
中辺が管山を休憩室へ連れて行ってくれた。
(そっか、俺を探していたせいで、休めなかったのか)
ちょっと反省した木崎は、また全身を現わした。
「おうっと!いきなり現れるな。ビックリするだろ」
「すげー能力だよな!」と言う関井、藤木は、木崎と一緒に、屋上へ見張りに行くことになった。
屋上で関井、藤木、木崎の3人で見張りをして数時間は経過した時だった。
ガッシャン、ガッシャン!
遠くで何者かが、金属音を響かせているのが聞こえた。
グルッと360度見回して、音の出どころを探すと、どうやら会社の敷地を囲う門の入口の方で聞こえた。
階下でみつけた双眼鏡でみてみると、思った通りゾンビ1体、会社の敷地内に入ろうと、閉めた金属の門を押したり、ゆらしたりして開けようとしているようであった。
関井が急いで、休憩室で仮眠をとっている中辺と管山に知らせにいった。
木崎は、そのゾンビの近くに他のゾンビがいないかの確認のため、双眼鏡でよくゾンビをみてみると、ふと気づいた。
(今、会社の門を開けようとしているゾンビ、見覚えがある……)
そのゾンビは血だらけの姿であったが、見覚えのあるスーツを着ていて、喰われたせいか首は傾き、ややもげそうな感じで、でもあの禿げかけた髪型や、背格好は……。
「ああ、石沢課長だ」
木崎がつぶやいた言葉に藤木もはっとする。
藤木と二人で思わず顔を見合わせた。
ゾンビとして復活した石沢課長が会社まで来たのだ。
それはゾンビになっても残っていた習性か、木崎たちがここにいるからか……。
一度目は木崎たちを助けるため。
二度目は木崎たちを襲うために来た石沢課長。
これから自分たちが見捨てた石沢課長と戦わないといけないのか……。
そんな感傷にひたりながら、無言で藤木と木崎は武器を準備したり、逃げる際の荷物などをまとめたりした。
最悪、他のゾンビ達までもが会社敷地内に入りこみ、この建物まで襲いにくる可能性もあり、その際の戦う対抗策も含めて、避難経路の準備とともに動き始めた。
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