エレメンツハンター

kashiwagura

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第3部 ルリタテハ王国の空人の本気

第1章ー7 ”ルリタテハの踊る巨大爆薬庫”本領発揮

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 威嚇を兼ねた宝船の4門の主砲による全力攻撃が、5階建てで高さより横に大きいターミナルⅢを、完膚までなきに破壊しつくした。あとには、ガレキとなった壁と融解した設備が残った。
 ターミナルⅢが消滅し、ターミナルⅡとモノノフ駐機場のテロリストたちが浮き足だった。そこにアキトたちが強襲をかける。
 アキトと風姫はターミナルⅡにカミカゼで乗り込んだ。テロリストをカミカゼで吹っ飛ばし、風刃という名の水流で手足の腱を切断し、管制ルームをあっという間に制圧した。しかし、ターミナルⅡにいたテロリストは運が良かった。8名という少数で、アキトが占拠に行ったからだ。
 モノノフ駐機場のテロリスト30数名は全員死亡したのだ。テロリストの人数が多かったこと、モノノフ駐機場ということで武器として使用できる工具があったこと、何よりジンという天災が制圧に向かったことが彼らにとっての不運だった。拘束されたフェアリーポートの職員たちが人質とする前に、ジンと彩香がテロリストを殲滅したのだ。
 モノノフに搭乗しているテロリストは覚悟が決まっていたのか、七福神ロボ4機と宝船に積極的に攻撃を仕掛けた。数の差で圧倒し、七福神ロボと宝船を無力化した後に風姫を追う予定だったのだろう。甘い見通しと言わざるを得ない。
 フェアリーポートの施設に被害を及ばない位置へと七福神ロボがモノノフを誘導する。間髪入れずに宝船が主砲を放ち、次々とモノノフを塵へと変えていく。
 モノノフ全機を宝船の主砲の餌食にした時、風姫から通常の回線で全員と通信が繋がった。ターミナルⅡから発せられていた強力な妨害電波が、アキトによって解除されたのだ。
 フェアリーポート内の全テロリスト拠点制圧が確認された。そして、フェアリーポート周囲の妨害電波を、史帆が突破し警察との通話のみのだが、回線確保に成功。テロリストに襲撃されている旨を連絡した。
 ただ、蔑称”破壊魔の拠点”であるフェアリーポートでの騒動は日常茶飯事であり、最初は誤報として全然取り扱ってもらえなかった。そこで史帆は、諦観と共に通信回線をジンに繋いだ。
 通話回線のみでも王族は認識できるようになっている。仕込みはロイヤルリングにされているらしい。
 ジンからの通信と分かった時の警察の慌てぶりは、音だけでも面白可笑しいものだった。それで少しだけ、史帆は留飲を下げたのだった。
 
「なあ、リアシートを限界まで倒した方が楽だぜ」
 風姫を横抱きにして、アキトはカミカゼを疾駆させている。
 風姫の両腕は肘から手の甲にかけ骨にヒビが入っていた。幽谷レーザービームを最大出力にして使用した結果だった。そして手の甲は、皮膚が爛れ骨が見える始末だ。
 宝船の救急キットで腕の固定と人工皮膚でカバーし、トレジャーハンター御用達の、ほぼ副作用のない強力な痛み止めを服用している。副作用がないのに一般に普及していないのは、この痛み止めが高額すぎるためだった。
 痛み止めの副作用に多いのが眠気を催すであり、ちょっとしたミスが命にかかわる現場以外では使用されない。
「それより、もっとしっかり抱きしめてくれないかしら?」
 お姫様だけにお姫様抱っこという訳でなく、風姫の強い要望だった。リアシートでも背もたれ出しているし、気密カプセルを展開すれば、落ちる心配はないのだが・・・。
「その方が痛みも和らぐわ」
 痛みはないはずだよな?と、頭に浮かんだ言葉を口に出さないぐらいに、アキトは女心を学んでいた。ここ2年の内に色々あって・・・。
「はいはい、お姫様。これでいかがでしょうか?」
 ハンドルから両手を放し、しっかりと風姫を抱きかかえた。
 アキトがハンドルを握っているのは、カミカゼでの姿勢安定のためで、普段から操縦はルーラーリング経由でしている。ハンドルを使わねばならないのは、ルーラーリングの適合率が規定値未満か、ルーラーリングを使用していない操縦者である。
「うん。いいわ」
 満足そうな表情を浮かべた風姫は、両手をアキトの巻き付けて抱きつく。
「痛くないか?」
 両腕に力を加え、外部から圧力があれば、当然神経を刺激する。なのでアキトは、痛みについては尋ねた。しかし、風姫が抱きついているのをアキトは当然と受け止め、照れてもいなかった。
「トレジャーハンター御用達の痛み止めって凄いわね。殆ど痛くないわ。それにロイヤルリングで痛みを緩和させてるから」
「そんなになるまで力を使わなくても良かったよな?」
「自分の命はね。出し惜しみして誰かが命を落としたら、私は自分を赦せなくなるわ。後悔しきれないわ」
「そうだな。だけど。ターミナルⅡを吹き飛ばして、モノノフを殲滅までしたのはやりすぎだぜ」
「やったのはお宝屋だけどね」
「許可したの・・・」
「ジンだわ。だけど、私に手を出すとどうなるか、理解させるには丁度良いんじゃないかしら? ・・・周囲を巻き込みたい訳じゃないけど・・・私が王位継承権を持っている限り敵がいる。極力周囲の人に迷惑をかけたくはないわ」
 他愛もない話をしながら、アキトは法定速度を遥かに超過した速度での安全運転で、カミカゼを走らせていた。アキトの駆るカミカゼにとって、たとえ最大速度で走行しても、高規格道路上なら安全運転となる。トレジャーハンティングで未知の惑星を走らせるのとでは、比較にもならないからだ。
 それに、今日だけでテロリストに2回も襲われている。
 アキトは風姫の早期治療と安全確保のため、王宮に急いでいるのだ。ジンからの連絡で、王宮ではメディカロイドでの治療準備が完了している頃だろう。
 アキトは王宮の建屋でもカミカゼを走らせ、メディカロイドの前まで風姫を連れて行くようにと、ジンから仰せつかっている。王宮の警護役や、ルリタテハ王家に仕える使用人たちも、ここ1年の内に慣れたものだった。
 まず王宮の敷地の外で、アキトのルーラーリングへと遠隔からオリハルコン通信によって、生体認証を完了させる。次に、屋敷内のメディカロイドまでの最短コースをカミカゼが走行できるよう、通路の隔壁を全開にするのだった。
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