イデア草原の狼たち

若き男たち

「大規模演習ですか、いよいよ。本当に僕が突騎兵隊の隊長で……」
ミシェルに告げられたカズマは新たに割り当てられた士官専用の個室で思わずはしゃいでしまった。そういうときにカズマの黒い瞳はきらきらと輝くので姉役とでもいうべきミシェルは上官ながら微笑んでしまうのだった。
「失礼します少尉どの。失礼しますムサシ少尉どの！」
ミシェルに続いて入室した二人の若い士官がカズマに敬礼し、姿勢を正した。
「小官はハヤト・サカン曹長であります」
細身で長身のハヤトはこのとき十八歳。端正な顔立ちで女性たちに人気がある突騎兵であったが、黒髪がくせ毛であることを気にする若者だった。
「小官はナオキ・ヨシカ軍曹であります」
小柄で筋肉質のナオキはこのとき十八歳。いかにもケンカ小僧というような好戦的な顔立ちであったが、表情は豊かで面倒見のよい性格であるため年下の兵士たちに人気があった。挨拶を終えた二人を見比べたカズマは緊張し、黙り込んでしまった。