魔法熟女三姉妹の物語

北条丈太郎

文字の大きさ
上 下
114 / 122

魔王子の母

しおりを挟む
「母さん! その声は母さんですね! どこからしゃべってるんですか?」
魔王城内部に轟いた大声に向かってダイヤが叫んだ。すると魔王城の動きが止まった。
「そうだよダイヤ。今頃になって私の声に気付くなんてできの悪い子供だねオホホ……」
「母さん! ボクはもう母さんの姿を覚えていません。でもその怖い声は覚えています」
ダイヤが城に響く声に答えると、魔王ドロンが泣くのをやめてダイヤに怒鳴った。
「こらダイヤ! ワシの愛しいルーミに向かってなんてことを! すぐに謝りなさい!」
「あら、あんた。珍しく嬉しいこと言うじゃないのさ。ほら謝りな坊やオホホ……」
そのとき城の内壁がひび割れ、割れて落ちた壁の一部がダイヤに向かって飛んだ。
「母さん! やめてください。ボクは最後の魔法少女ミクを倒したいだけなんです!」
「うるさいよダイヤ! その娘は魔王が召喚したんだ。勝手に倒すなんて許さないよ!」
城の内壁はバリバリと割れ続け、ナイフのようにとがった武器となってダイヤを襲った。
「ダイヤ! 母さんに謝らないと殺されてしまうぞ。父さんにはどうにもできんのじゃ」
魔王ドロンが言う間にも、ダイヤは襲い来る壁の破片を魔力防御で必死に防いだ。
「王子さま! 大丈夫ですか? 私の魔法で王子さまを守ります! 敵はどこですか?」
ダイヤを見ていたマリーは思わずダイヤの前に飛び出し、杖から防御魔法を出した。
「マリーさん! ボクなら大丈夫。今のうちに魔法少女ミクを倒してください!」
その言葉を聞いたミクは魔王ドロンの後ろに隠れた。それを見たメリーが立ち上がった。
「マリー! ミリー! もう面倒くさい! 役立たずの魔王ごと燃やすよ!」
メリーが杖を構えるとミリーも立ち上がって杖を構えた。そしてマリーも構えた。
「トライロッド! ファイナルバスター! ゴー! ファイア!」
赤青黄色の魔力光線が三本の杖から発射され、うねりを伴って魔王ドロンを襲った。
「勝手なことをするなと言っている! 魔女ごときが魔王を倒すなど一万年早い!」
三色の魔力光線は魔王ドロンの寸前でかき消された。そしてそこに人影が現れた。
「ダイヤ! 魔女ども! 私が直接相手をしてやる! 私が王女ダイヤだよオホホ!」
メリーたちの目の前に現れたのはダイヤにそっくりな金髪の少女だった。
「……はあ? 王女だって? これはどうなってるんだい王子。アタシはたまげたよ」
少女を見たメリーは大きなため息をついた。その様子を見た金髪の少女は微笑んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

よどら文鳥
恋愛
 フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。  フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。  だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。  侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。  金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。  父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。  だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。  いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。  さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。  お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

処理中です...