魔法熟女三姉妹の物語

北条丈太郎

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秘伝習得! 覚醒するシーナ!

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「さてシーナや。昔話はこのくらいにしてロック家武術の秘伝を一つ教えよう」
僧侶は修行場の奥に行くと門徒の一人を手招きし、シーナと立ち合わせた。
「おいラガンよ。その娘はワシの孫じゃが札付きの悪でのう。ロック家の武術でそやつを徹底的に懲らしめてくれ。なんなら殺しても構わん。手加減は無用じゃ」
僧侶が言うと門徒はうなずき、息を吐き出して構えた。
「シーナよ。お前は自分から攻撃してはならん。攻撃したらお前は永遠に破門じゃ」
「えっ? でもこのラガンとかいうやつめちゃくちゃ強そうだぜ。アタイにはわかるよ」
シーナはラガンの構えを見つめて言い、自分も構えをとった。
「では参りますぞ! 死んでもらいます悪いお孫さん! はっ! 正拳! 食らえ!」
ラガンの正拳突きは早く正確にシーナの腹部を狙い、シーナは辛うじて交わした。
「次! 肘槍! はあっ! 頭岩! まだまだ!」
次々と繰り出されるラガンの早く重い攻撃をシーナは飛び跳ねて交わし、間をとった。
「爺ちゃん! 防戦一方じゃアタイは勝てない! 反撃はしてもいいんだろ?」
シーナが叫ぶと僧侶は笑い、ラガンに目配せして攻撃を続けるよう指示した。
「確かに師匠のお孫さんだけのことはある。こちらも本気を出しましょう!」
ラガンは笑うと体中に闘気をあふれさせた。するとラガンの体が魔力の光に包まれた。
「魔力? こいつも魔力格闘術を使えるのか? しかもすげえ魔力だ!」
シーナはラガンの放つ強い魔力に驚き、自分も全身に魔力を込めて防御姿勢をとった。
「なかなかの魔力ですね、お孫さん。それで悪事を働くとなると放ってはおけません。気の毒ですが本当に死んでもらいます! 無影拳! 波濤打ち!」
見えない拳の連打がシーナを襲ったとき、シーナは自分の死を悟った。
「……刃、離、拳!」
目をつぶって放ったシーナの拳がラガンの体に吸い込まれ、ラガンは静かに倒れた。
「見事じゃシーナ! それこそロック家秘伝刃離拳! しかと伝授したぞ。よいな」
「なんだ今のは? アタイは殺気が怖かっただけなのに。これが秘伝か爺ちゃん?」
「シーナ・ロックよ。寺を去って再び旅に出よ。ここからが本当の修行じゃ」
シーナは無言でうなずき、ロック寺院から出て行った。
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